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第43話 ダンジョン飯


「うん、サーペントは見た目に合わず真っ白な身をしていて、しなやかな弾力がありつつ、淡白で上品な味わいだな。カイザーサーモンは鮮やかなオレンジ色の身をしていて、脂がのって舌の上でとろけていくようだ。クラーケンは引き締まった身の弾力を楽しめつつ、噛めば噛むほどじんわりとクラーケンの旨みが口の中へ広がっていくぞ!」


"ぐわああああ! 飯テロやめてえええ! @ルートビア"

"あのモンスターの外見からこんなにうまそうになるなんて思えないよな。特にウミヘビのサーペントがこんな刺身になるとかw @XYZ"

"スーパーで売っているパックの刺身とはレベルが違いすぎて草w 一切れ何十万円とかの世界になるんだろうなw @たんたんタヌキの金"

"食レポも昔よりうまくなっているのがなんか腹立つw @ケチャラー"


 リスナーのみんなの反応も上々のようだな。いつかお世話になったリスナーさんたちにも食べてもらいたいものだ。


「さて、次はホイル焼きの方だな」


 焚き火の横に置いてあった銀色のアルミホイルの包みを取り出す。包みを開けると真っ白な蒸気と共においしそうなバターの香りが鼻をくすぐる。中には刺身よりも白さが増したオレンジ色のカイザーサーモンの切り身とたくさんのキノコが入っているので、そこにこの高級な醤油をひと回しして完成だ。


 ちなみにこのダンジョンの中には外の世界の野菜やキノコなんかも自生している。もちろんダンジョンの外には存在しない野菜やキノコなんかも多くある。しかし、強い毒性を持つキノコなんかも多いから注意しなければならない。


 外にある毒キノコとは比べ物にならないレベルの毒キノコもあるからな……俺の毒耐性はそれらの毒キノコで少しずつ鍛えていった。


「うん、アルミホイルに包んで焼いているから、旨みがギュッと詰まっていてとても柔らかく仕上がっているぞ。キノコの旨みと脂ののったカイザーサーモンの旨みがバターの香りと醤油と合わさって最高にうまいな!」


"ぎゃあ! 被弾してしまった、衛生兵を頼む! @XYZ"

"こんなにうまそうなホイル焼き初めて見た! @ルートビア"

"ホイル焼きは手軽にできる蒸し焼き料理だ。食材本来の旨みを封じ込めることができる調理法なんだよな。くそっ、マジでうまそうだ! @†通りすがりのキャンパー†"


 キャンパーさんの言う通り、ホイル焼きは切った食材と調味料をアルミホイルで包んで火のそばに置いておくだけのお手軽料理だ。食材の旨みがギュッと詰まっていて本当にうまい。


 よし、今度2人にご馳走する料理はこのあたりにするとしよう。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「うわあ、とってもおいしい!」


「今まで食べたどんなお刺身よりもおいしいです!」


 次の2人との配信日、いつものように2人のダンジョンの探索に付き合ったあと、セーフゾーンで食事をしている。


 マジックポーチがあれば事前に作り置きしておいた料理をすぐに準備することもできるのだが、さすがにそれでは味気がないので、仕込みに時間が掛かる料理以外はその場で作るようにしている。


「お代わりもたくさんあるからな。好きなだけ食べてくれ」


「うう……また太っちゃいそうだよ……」


「でもおいしくて止まらないです……」


 複雑な表情をしながら俺が作った料理を食べてくれる瑠奈と華奈。2人ともいっぱい食べているが、ダンジョンでモンスターと戦っていれば嫌でも運動することになるから大丈夫だろう。


「それで透明腕輪の方は渡してくれたか?」


「はい、ちゃんとヒゲダルマさんから預かった6個をお渡ししました」


「やっぱりあれは使用禁止マジックアイテムに指定されちゃったね。いろいろと悪用できちゃうから仕方がないかあ」


「ありがとうな。まあ、さすがにあのマジックアイテムはいろいろと危険だから仕方がない」


"くそ、透明人間になれるという男のロマンが…… @たんたんタヌキの金"

"おっさんの気持ちは分からなくもない…… @ケチャラー"

"これでまたひとつ、男の浪漫(ロマン)が潰えたか…… @†通りすがりのキャンパー†"

"大袈裟だよ。これだから男の人はねえ~ @WAKABA"


 まあ、ダンジョンにこもる前の俺だったら気持ちは分かるけどな。


「他にはダンジョン協会からは何か言われなかったか?」


「あとはヒゲさんと同じで、警告を受けたくらいかな。今回は良かったけれど、勝手に危険な現場に入ったら、次はダンジョン探索資格の停止処分か最悪の場合は剥奪まであるってさ」


"華奈ちゃんも瑠奈ちゃんもあの時は本当にありがとう! あとごめん! @たんたんタヌキの金"


「実質的には処分なしだったから、全然大丈夫ですよ。それに前にも言いましたが、私たちの方こそ皆さんに何度も助けてもらいましたから!」


「そうだな。警告だけだったから問題ない。それに俺や2人のこともニュースでは名前も出ていないみたいで安心したぞ」


 とりあえず、あそこにいた店長さんや従業員、お客さんは俺が頼んだ通り、他の人には広めないでくれたみたいだな。


"そういや一部の掲示板とかではヒゲダルマと今回の件を結び付けていたやつもいたぞ。 @ルートビア"

"なかなか鋭いやつもいるんだな。立てこもり犯たちが病院に運ばれたことは書いてあったぞ。犯人たちの症状がニュースに出た時、ひとりが全身に大火傷は分かるんだが、数名が睾丸破裂ってのにはさすがに吹いたw @月面騎士"

"それなw 俺たちはあとで3人に聞いたから知っているけれど、知らない人が見たら、何が起きたと思うに違いない。 @ケチャラー"

"さすがに警察やダンジョン防衛隊はそんな拘束の仕方をしないから、誰かが介入したと思われて、最近話題になっていたヒゲダルマが候補にあがったんだろう。 @†通りすがりのキャンパー†"

"すでに謎のヒーローに『ゴールデンブレイカー』、『股間クラッシャー』、『玉狩り職人』なんて二つ名が広がっているらしいw @月面騎士"

"玉を潰すヒーローか。犯罪者たちには恐れられること間違いなしだぞw @ケチャラー"

"どこの仕事人だよwww @ルートビア"

"そんなヒーローは嫌だw @たんたんタヌキの金"


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― 新着の感想 ―
[気になる点] キングサーモンは現実に有る品種の呼び名なのでダンジョン品種として使うのは避けた方が良いかも…安直な代替案としてはカイザー・エンペラー・タイクーン辺りかな?
[良い点] 更新お疲れ様です。 また変な異名が増えとるwwww玉狩り職人はタマ狩りにした方がより恐怖(?)を助長できるかもですね(笑) [一言] ご飯食べた後に読んで良かった…お腹が減った夜中に読ん…
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