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第23話 強さの秘密


「匿名キボンヌさん、大変失礼なのですが、何かそれを証明できるようなものはありますか?」


 ものすごく申し訳なさそうに華奈が言う。これについては聞かれるのも当然だ。言えるだけならなんとでも言えるからな。


「ああ。その辺りの階層で出てくるモンスターの素材を渡すから、そちらで調べてくれ。それと40階層以上で出てくる危険なモンスターの情報も伝えておこう」


「えっ、そんな貴重な情報をいいの!?」


 瑠奈が驚く。ダンジョンの情報というものは、情報自体がかなりの価値を持つ。貴重な情報は高値で取引されたり、限定配信により有料で配信されたりするらしい。


「ああ。それで証明にもなるだろ。その情報はあとでまとめて渡すから、このチャンネルで他の人に教えてやってくれ。これも遅れた償いのひとつだ」


 だが、さすがに俺もこれまでの情報をすべて渡すようなお人好しではないぞ。うまいモンスターが出現する場所などは教える気はない。とはいえ、その辺りの階層から、初見殺しの危険なモンスターが発生することも事実なのである。


 首を落としても動きながら襲ってくるモンスターや特殊な攻撃をしてくるモンスターなどは初見で対応するのが難しい場合も多い。


 俺はダンジョンに入るのはその生死も含めて完全に自己責任だと思っているが、探索者や配信者に死んでほしいと思っているわけではない。


 自らの命をかけてまでその命を救う気はないが、危険を避けられる情報を伝えるくらいは構わない。


「匿名キボンヌさん、ありがとう! みんなとっても喜ぶと思うよ!」


「ああ。それなら良かった」


「ありがとうございます。私もしっかりと見ておきますね! それでは次の質問です。匿名キボンヌさんはどうしてそんなに強くなれたのですか?」


 これも間違いなく来ると思っていた質問だ。そのため自分なりにその回答は用意してきた。


「多分ダンジョンを知っている人なら当然知っていることだと思うが、一応説明しておく。ダンジョンの中で発生するモンスターを倒せば倒すほど、ダンジョン内限定で、基本的な身体能力が上がっていくことは知っているよな?」


「うん。それはダンジョンで最初に教わることだよ。一般的には経験値って呼ばれていて、それは男女関係なくもらえるから、僕たちみたいな女性でも、ダンジョン内では男の人よりもすごい力を出せるんだよね」


 このダンジョン内ではモンスターを倒せば倒すほど、なぜかその肉体が強化される。ゲームのように一定の経験値を得ると一気にレベルアップするというわけではなく、倒せば倒すほど少しずつ強化されていく。


「ああ、瑠奈の言う通り、経験値と呼ばれるものだな。そしてその経験値はモンスターを大勢で倒せば倒すほど、減っていく」


「そうですね。なので、ダンジョン探索を行う際は多くても4人でダンジョンを探索することが推奨されています。私たちも基本的には2人で探索を行っているので、比較的早く上の階層まで来れたのだと思います」


 そう、モンスターを倒した経験値は倒した人数が少ないほど多くもらえる仕組みになっている。最近ではそのあたりの研究も進んでおり、戦闘に貢献した者ほどより経験値を多くもらえるという研究結果も出ているらしい。


「俺が他の人よりも階層が進んでいるのはソロで探索を続けていたことが理由のひとつだろうな。もうひとつは単純にダンジョンで探索している時間が他の人よりも長かったことだ。いろいろとあって、ダンジョンに潜り始めた頃はひたすら探索を続けてモンスターを倒していたからな」


 というより、最初のころは自暴自棄になっていたし、帰る家もなかったので、ダンジョンで暮らしながらがむしゃらに探索を続けていた。


 今は探索を止めてのんびりとうまい飯を食べて生活をしているだけだが、当時はかなり無理をしたものだ。


「なるほど……ですがソロで行動することは……」


「うん。ソロでダンジョンを探索するのは……」


「ああ、その通りだ。ソロでダンジョンに入るのは絶対に止めておけ。ただの自殺だ」


 そう、ダンジョン内において、ソロで探索するのは完全に自殺と同義だ。初めの階層の方はまだソロでもなんとかなるかもしれない。


 しかし階層を進むにつれて、モンスターの脅威は上がり、複数で徒党を組んで襲ってきたり、特殊な状態異常を伴う攻撃をしてくるようになる。


 その際にどうしてもソロでは対応できなくなってくる。俺の場合は毒や麻痺などの耐性を少しずつ無理やりつけていったが、不測の事態に備えて仲間と一緒に行動した方が良いに決まっている。


「俺の場合は今まで奇跡的に生き残ってきただけにすぎない。実際のところ、覚えているだけでも10回以上は死にかけているぞ。ここでこうして生きているのは本当に運が良かっただけだ。ダンジョンに入る時にソロだけは止めろ、十中八九……いや、99パーセント死ぬぞ」


 俺がこうして今生きているのは、リスナーさんからのアドバイス、そして強運に助けられてきた結果だろう。


 実際にガチでダンジョン攻略をしている探索者やダンジョン配信者の中で有名なソロの人がいない理由はそういうわけだ。


 あの虹野なんちゃらも普段ダンジョンを探索する時は優秀なダンジョンアシスタント3人と一緒だしな。ソロで無茶をした人はとっくに命を落としている。


 俺の言葉を聞いてソロでダンジョンに潜る人が増えても困るから、ここはしっかりと忠告しておかないとな。さすがにそれ以上は完全に自己責任で俺の知ったところではない。


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