11/21コミカライズ第1巻発売記念SS
「よし、これくらいでいいだろう」
収穫したばかりの瑞々しく艶やかな野菜をマジックポーチの中へ入れ終わる。
マジックポーチの中に入れた物はその時点で時間が止まるので、採れたての野菜のままで保存をすることが可能だ。このマジックポーチがダンジョンから発見された当時は流通に革命が起こると大きなニュースになったものだ。
まあ、実際には輸送に運べるほど容量の大きなマジックポーチはダンジョンの相当深くに潜らなければ出てこないから、それほど現実社会には大きな影響を及ぼさなかったわけだが。
ルートビア:
随分と切れ味のいい鎌だけど、それも手作りなん?
「ああ、ダンジョン産の鉱物を加工して作った鎌だぞ。ダンジョン内だからいいが、外では切れ味が良すぎてちょっと危ないからな」
月面騎士:
誤ったらスパッといろいろと斬れてしまいそうだな。
ケチャラー:
ヒェッ……。
「さて、今日の分の水もあげたし、家に戻るとするか」
たんたんタヌキの金:
今更だけど、ダンジョンのセーフエリアに畑を作って野菜を育ててるってヤバいよな。
†通りすがりのキャンパー†:
確かに今更だな。なんなら家まで建てて暮らしているもんな。
「も、もちろん誰かがここまで到達してきたら撤去するつもりだぞ」
俺の目の前には伸び伸びと育った立派な畑がある。セーフエリアにはモンスターが入ってくることができないし、天候も一定なので、野菜を育てるのに適している。
ダンジョン法には記載がないとはいえ、不法占拠をするつもりはないので、誰かがこの階層まで到達してきたら撤去するつもりだ。毎日畑の世話をしてきたから愛着があるので、できるだけ他の探索者にはゆっくりと攻略してきてほしいものである。
「彩りがとても綺麗ですね」
「うわあ~どれもおいしそうだね」
「ああ、今日は採れたての野菜を使った料理がメインだ」
いつものように華奈と瑠奈とセーフエリアで落ちあい、食事の準備をする。
テーブルの上には色とりどりの料理が並んでいた。ダンジョン産のモンスターの肉や魚もとてもうまいのだが、毎日そればかり食べていると飽きてしまう。たまには野菜をメインにしようという話になって、今日は俺の収穫したものや2人に頼んで購入してきてもらった野菜を料理した。
「シャキシャキとした歯ごたえがあって、すごくおいしいです!」
「うん、マヨネーズやドレッシングの酸味とよく合っているよ!」
特に葉物の野菜は収穫したばかりの物と市販の物では味がまったく異なるので、生の野菜にマヨネーズやドレッシングを少しかけただけでも十分なご馳走になる。
「華奈が作ってくれたこのバーニャカウダとやらもうまいな。温かいソースを付けて食べるというのも悪くない」
「ありがとうございます」
†通りすがりのキャンパー†:
まさか、バーニャカウダを知らなかったとは……。
WAKABA:
結構前にイタリア料理が流行った時に話題になったらしいね~。今だとイタリア料理店ならどこにでもあるイメージかな。
XYZ:
まあ、ヒゲダルマがそんなお洒落な料理を知っているわけがないと言えばそれまでだな。
ルートビア:
華奈ちゃんの盛り付けもすごく綺麗だ。ヒゲダルマにもこういうセンスがあればなあ。
「……確かに今まで知らなかったな。それに綺麗なのも認める」
どうやらバーニャカウダとやらはイタリア料理らしい。ニンニク、オリーブオイル、アンチョビを混ぜながら温めたソースに生の野菜や焼いた野菜を付けて食べるらしい。香りと塩気のあるソースが新鮮な野菜の味を引き立てている。
そして野菜は等間隔に切られて綺麗に並べられていた。確かにこの辺りのセンスは俺にはないかいもしれない。
「こっちの素揚げという料理もシンプルですがおいしいですね」
「うん。味付けが塩だけだから、野菜本来のおいしさがすごく伝わってくるよ」
素揚げとは食材に衣や下味を付けずに素の状態で揚げる料理方法だ。高温で一気に揚げるため外側がカラリとした食感になり、野菜の中の水分が逃げにくくなる。
揚げる油も米油を使っているので、クセやしつこさもなく薄い塩味が野菜の味を最大限に引き出してくれている。
†通りすがりのキャンパー†:
天ぷらやカツもいいんだけれど、素揚げもいいよなあ。野菜だけじゃなくてエビや小魚なんかも揚げて塩をぱらりで最高だ。
XYZ:
わかる~! 年を取ると天ぷらやカツでも重く感じるもんなあ。
たんたんタヌキの金:
相変わらずこのスレのおっさん率は高いのう。
ケチャラー:
タヌ金も含めてな(笑)
そんな話をしながら様々な料理を楽しんだ。
「ふう~おいしかったあ!」
「ああ、たまには野菜尽くしもいいものだな。2人が作ってくれた煮物もうまかったぞ」
「ありがとうございます。やっぱり野菜が市販の物よりもおいしかったですね」
しっかりと味の染みこんだ野菜の煮物はどこかほっとするような味だった。男一人だと煮物料理なんかは作らないからな。
ルートビア:
二人の手作り料理なんて羨ましい! 爆ぜろ、ヒゲダルマ!
WAKABA:
みんな楽しそうでいいね~。ダンジョンの外だと寒くなったから、温かい料理がおいしそうだったなあ~
「外ではもうそんな季節か」
「今年の夏はすごく暑かったけれど、一気に涼しくなっちゃったよ……」
「秋を飛ばしてしまった感じがしますね」
ダンジョンの中にいると気温は階層によって一定だから、今がどんな季節か忘れそうになってしまう。
月面騎士:一気に冷え込んだよね。やっぱり某牛丼屋の牛すき鍋膳を見ると冬が来たって感じがするんだよなあ。
XYZ:わかる! あとはグラコロバーガーとか豆腐キムチチゲとかを見て冬って感じる。
「みんなも食べ物のことばかりだな。すき焼きは久しく食べてないし、なんだか食べたくなってきたぞ」
「いいね! あとは鍋なんかもおいしいよね!」
「鍋物だとしゃぶしゃぶもありますね」
「そうだな。よし、今度はすき焼きと鍋としゃぶしゃぶの豪華な三本立てといこう!」
もちろん野菜もおいしかったのだが、やはり肉や魚もほしいところだ。鍋物ならいろんな食材を同時に楽しむことができる。
そうと決まれば食材を調達してくるとしよう。
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いつも拙作をお読みいただき、誠にありがとうございます(*ᴗˬᴗ)⁾⁾
タイトルの通り、こちらの作品のコミカライズ1巻が11/21に発売されます!
やまだごまち先生の素晴らしい漫画をよろしくお願い致しますm(_ _)m
漫画の表紙や無料で読めるお試しはこちらからどうぞ↓
https://www.kadokawa.co.jp/product/322507000732/
そして本編ですが、ずっと更新が止まっておりまして誠に申し訳ございません!
現在書籍版2巻の発売が厳しそうなこともありまして、更新を止めております……。
打ち切りでも他の商業作品と同様に完結まで書くつもりなのですが、コミカライズの売上によってはこの先も出せるかもしれない状況とのことで、どこまで続けるか検討中です。
長い間お待たせしてしまい、大変申し訳ございませんm(_ _)m
そしてもうひとつ宣伝となりますが、明日の11/15よりGA文庫様より下記作品の第1巻が発売されます。
こちらの作品もどうぞよろしくお願いいたします。
『異世界転生した元教師、【臨時教師】として崩壊した魔術学園を救う。』
https://ga.sbcr.jp/special/rinjikyoshi/




