第182話 提案
「こんにちは百武さん。先ほどはご連絡ありがとうございます」
「こちらこそご連絡ありがとうございます」
先ほどきたメールは百武からで、例のグリーンドラッグの件について時間のある時に報告がしたいという内容だった。
「まずはお礼をお伝えさせてください。先日ヒゲダルマ様からお預かりしました。グリーンドラッグのもととなったマジックアイテムと天使の涙のおかげで、グリーンドラッグの治療薬が作れそうです。特に原料となったマジックアイテムの成分を分析できたのは大きかったようです。時間はもう少しかかりそうなのですが、ここまでくればほぼ間違いなく製造が可能とのことです」
「おお、それは本当によかったです」
以前に百武経由で渡したグリーンパウダーと天使の涙という2つのマジックアイテムを研究してグリーンドラッグの治療薬を作るという話を聞いていたが、もう目途が立ったのか。
ダンジョンができ、マジックアイテムという存在が発見されてから、技術的な面でもだいぶ進められているからな。とはいえ、万能ポーションである天使の涙などのマジックアイテムはまだ謎が多すぎるから、おそらくは原因となったグリーンパウダーの解析が進められたのだろう。
なんにせよ、これですずさんの母親のような人が治療できるのはすばらしいことだ。
「そちらのマジックアイテムも禁止マジックアイテムとして登録される予定です。これもヒゲダルマ様のおかげです。ご協力本当にありがとうございました」
「人の命が関わっていますので、本当にお気になさらず。それに以前も百武さんからはたくさんの情報をいただいていますから」
こういったことに関する協力なら喜んでしよう。それに天使の涙の件や夜桜の件では様々な情報をもらったからな。
そしてやはり俺たちがグリーンパウダーとよんでいるマジックアイテムは禁止マジックアイテムとなるようだ。まあ、あのマジックアイテムは当然そうなると思っていたがな。
「つきましては提供いただきましたマジックアイテムの謝礼をお渡ししたいと思います」
「ありがとうございます。ですが本当に謝礼の方は結構ですので」
現金に関してはこれまでにかなりもらっているし、ダンジョン内で生活している俺にはほとんど使い道がない。それよりも百武から得られる情報の方が俺にとって価値がある。
「それで、そのグリーンドラッグを扱っていた犯罪者集団についてはなにかわかりましたか?」
「そちらにつきましてはこちらで秘密裏に情報を集めることができました。ヒゲダルマさんのおかげでグリーンドラッグの原料がマジックアイテムであるということが判明したので、ダンジョン協会やダンジョン防衛隊も動けることになりましたからね。すでに元締めである犯罪者集団の構成員や拠点にしている場所なども多少調べております」
「それはすごいですね」
すずさんの母親の件については無事に解決したが、そのグリーンドラッグを販売した犯罪者集団は今も活動を続けている。
治療薬が広まればグリーンドラッグの販売はしなくなるかもしれないが、そういった連中はすぐに代わりの物を探し出す。そしてキャンパーさんから聞いた話では一度そういった連中に関わってしまった被害者がまた狙われることも多いそうだ。いわゆる闇名簿やリストと呼ばれるものだな。
「そちらの情報を教えてもらうことは可能ですか?」
別に俺は正義の味方でもない。冷たいようだが、ダンジョンの外でなにか事件が起こったとしても、危険な真似をしてまで積極的に関わるつもりはない。
だが、今回はタヌ金さんの親友の家族が被害に遭い、医療関係者であるWAKABAさんにも実害が出ている。一歩間違えばリスナーさんや俺の知り合いに直接危害が及ぶ可能性もあったし、これからそいつらが俺の知り合いに害を及ぼす可能性がないとも言いきれない。
そうなると、そういった危険な連中は排除しておきたいところだ。もちろんそいつらの情報を聞いてからの判断になるが。
「……それについてですが、ヒゲダルマさんにひとつご提案がございます」
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