26 カフェ/峠
「「どうぞこちらへ」」
未右と来左によって大広間への扉が開かれ、一歩一歩
足を踏み入れて行く。
足を踏み入れた先には、黄道十二宮の四名と閻魔大王以外にもう一人、妖怪の中に紛れて俺と同じ人の姿があった。
地獄に来る前まで一緒にいた少女の、愛おしい存在が嫌でも目に入る。
「お! 凪、こんなとこで会うなんて奇遇だな」
♢♢♢♢
小悪魔を引きずりながら寒名山を降りると、白はすぐ近くのカフェのテラス席でお茶していた。
「手紙を頼んだぞ」
ちょうど伝書鳩(鷹だけど)に文を渡すところであった。
ピェェ!! と勢いよく鳴いて、地獄特有の黒い空へと羽ばたいていった。
「こんな町中で鷹を使うなんて珍しいな」
いきなり現れた俺に対して嵐はこう返してきた。
「んぁぁ、なんだ、嵐か、おかえり」
「ただいま……ておい、なんだ? おかえりって」
なんかいきなり、おかえりって言うものだからノリツッコミをしてしまった。
「すまん、青空とのノリでやってしまった」
白はコーヒーを飲みながらそう返答する。
もう、その光景がカフェでお茶するカッコいいお兄さんよ。 マジデ
「で、その紐で括り付けた悪魔はなんだ?」
白は俺によって引きずられてきた小悪魔を軽く見て問いを飛ばしてきた。
「あぁ、小悪魔か?お前らと逸れさせた張本人だよ」
はぁ、とため息を吐き捨てながら、逸れた後に起こったことを説明する。
「それでな、戦闘が終わるとエネルギーが切れたおもちゃのように動かなくなってな。……あ、ちゃんとピクピクって手先とかは動いてるからな」
「エネルギーが切れたように、ね〜」
白は飲んでいたコーヒーをテーブルの上にある受け皿に置き、こちらに歩みよってくる。
「はぁ〜、おい悪魔、口を開けろ」
歩み寄るなり舌圧子(医者が口開けてくださいって言う時に使うぺったんとした平べったい棒)を小悪魔に向ける。
「止めろ、おれに触るな!汚らしい」
「お、おい、白?どうしたんだよ、舌圧子なんか持って」
俺がこんな質問をすると「察しろよ」とか言わんばかりの睨みを噛ませられ、あることにピンときた。
今、地獄にて問題視されている現象。
ある時は巨大化したり、またある時は暴走したりと。
……ん? 暴走?? まさかな〜。
「そのまさかだよ、巷で噂の巨大化したり暴走したりの現象」
いきなり心の中で思ってたことを雪兎以外の奴に言われたものだからギクっとなってしまった。
白の野郎、俺の心を読みやがって、ビックリしちまったじゃねぇかよ。
「この悪魔も巷の現象の被害者ってことなのか?」
「そんな訳ねぇーだろ」
「おい、うひほははほひはほ!」
(訳 おい、口の中を見るな!)
白は小悪魔がガンに口を開けないので、無理やり口をこじ開ける。それを横目に、俺は椅子に腰を掛ける。
つうか、その舌圧子をどこから出した! それに目を離した隙にライトまで!
「小悪魔は被害者じゃなくて、加害者、だとしたら?」
加害者、ねぇ〜。まぁ、確かに紅魔刀を狙って来て、かつ功績を求めて俺に襲って来た。……確かに改めて考えると加害者側だな〜、うん。
少し考えこんでる俺をよそに話を進める。
「恐らく、巨大化する現象や暴走する現象を起こしてるのは」
白はそう言いながら小悪魔から離れて最初にいた席に戻る。
小悪魔の方は白によって気絶させられているようで静かにしている。
「……今、イギリス地獄で分裂したルシファーが闇の分身であるサタンと内戦中だろ?」
「あぁ、内戦中だな? EU地獄。それにそこには夏々知さんもいるんだっけ?」
イギリス地獄、それは名前の通りヨーロッパのイギリスにある地獄だ。
因みにここは(八大・八寒)日本の地獄。
そのままかい! って誰もが思うだろう。(俺も、最初そう思った)
「その内戦に加わってる夏々知さんから、閻魔大王に連絡が来た。内容はこうだ」
白からメモを渡され目を通す。
戦場で巨大化、並びに暴走していた者たちの共通点
その一・口のなかの肉が溶けている。
そのニ・薬を吸って効果が切れたかのように突然ぶっ倒れる。
その三・体内からは毒素が発見されない
その四・巨大化の場合は一は当てはまらない
「へぇ〜、こんなのあったのか」
現象の存在は知ってたもののちゃんとは知らなかった。
「あぁ、あったよ」
「ふぅ〜ん、そういえばさ、奏は?」
周りを改めて見渡すが彼女の姿を見ていない。
いるのならなにかしら茶化して来るであろう。
「雪兎のとこ行った」
「へ?」
突然の嬉しいようななんなのかわからない言葉に、俺はアホみたいな声を出してしまった。
♢♢♢
寒名山 北上峠
南北に長い寒名山、嵐達がいる秋原から北へと進んだ白銀の世界が広がる峠で戦いが行われていた。
「氷の舞 銃式 壱の型」
雪がほのかに舞い散る峠の空中、そこに一人、銀髪の頭に白・黒・青をベースとした機械的な服装を纏う一人の青年が佇んでいた。
「我に勝負を挑むとは命知らずなものだ」
軍人のように淡々とした喋り方でそう言った。
「なんなんだアイツ、強すぎる」
青年が構えている銃、その銃口の先に血にて赤く染まったであろう氷を体の至る所に付られた悪魔はそう言い放った。
「強すぎる、か……倒す前に言っておこう、我は紅葉組、技の英雄、一星 流……いや、今の姿は白銀の零と名乗っておく方が正しいか」
青いゴーグルの下、白縹色の瞳をギラつかせそう名乗った。
「一星 流だと、ふざけるな!」
悪魔は怯えながら強くいい放った。
「その名は風の噂で聞いた事があるが、その話しでは真っ赤に燃えるような髪に祭り祭りとうるさいヒーローチックな戦士だと言う話しではないか!」
悪魔の目は青年、零を一点に見つめ言い切った。
「そうか、もう一人の我のことを知っていたか」
ふっと笑い、零の口角が軽くもち上がる。零はチャージングされていく銃の照準を再度合わせていた。
「一星だか白銀だか灼熱だかしらねーが俺はお前潰す!」
悪魔はそう言い切ると真っ直ぐ突っ込んでくる。
恐らく打撃系の攻撃だろう。
「さらばだ」
そう言うと零は引き金を引く。
「氷花」
淡々とした声と共に、冷気を纏ったエネルギー弾が悪魔目掛けて放たれる。
「ぐぁぁぁぁ、メドゥーサ様ー!」
その言葉を最後に悪魔は氷に包まれていき、空中に氷の花が可憐に咲き誇る。
「白く凍てつけ一等星」
凍てついた敵に背を向けて勝利した時に言う決め台詞を綴る。
「轟け勝利の咆哮」
SFTCGアニメの主人公さながら、決めポーズをとると可憐な氷の花は中の悪魔ごと粉々に散っていった。
名前 凛蓏
誕生日 9月23日(秋分の日)
年齢 不明
性別 女
所属 閻魔拾弐星
階級 十二宮
属性 大地 (重力)
好物 りんご・りんごパイ
嫌いなもの 無重力・錆・カビ




