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ありすとてれす  作者: 春乃
39/259

39話 てれすを起こそう

「ふぅ、ちょっと休憩しよ」


 シャーペンを置いて、両手を上に伸ばす。

 てれすが寝ちゃったから、わたしは一人でテストの直しをして復習したり、予習をしたりした。

 てれすがわたしのベッドで寝ていることを除けば、もはやいつもと同じである。


 ちらっとてれすを見ると、まだすやすやと眠っている。さすがにそろそろ起こさないと、だんだん辺りが暗くなってきてしまう。

 気持ちよく寝ているところ申し訳ないのだけど、起こさせていただくとしよう。


「おーい、てれす。起きてー」


 わたしがてれすの枕元に寄って声をかけるが、反応はない。

 熟睡、だね………。


 こうしているとてれすの顔が近くて、整った顔立ちや綺麗な髪、そして桜色の唇に目がいく。

 …………………。


「って、しっかりしろわたし!」


 思わず見入ってしまいそうになる気持ちを、首をぶんぶん横に振ってとどめる。

 ちゃんと起こさなきゃ。

 

 どうしようかと考えて、わたしはてれすのほっぺたをつんつんと突っつくことにした。

 あ、柔らかい………。


 突っついたわたしはそんな感想を抱いて、突っつかれたてれすは、ん……、と息を吐いて、顔を私に向けるように寝返りを打った。

 それから、もう一度突っつこうかとしていたわたしの手を握る。


「え…………」


 ど、どうしよう。

 思わぬことに、動揺してしまう。


 手を振りほどくのもなんだかなぁ。

 とりあえず手はこのままにして、てれすを起こそう。


「てれす、起きて。てれすー」


 名前を呼びながら、空いている左手でてれすをゆっさゆっさすると、ようやくてれすに動きがあった。

 わたしの手から手を離し、目を擦りながらゆっくりと起き上がる。


「…………あれ、ここは?」


 まだ寝ぼけているのか、てれすは状況がわかっていないらしい。


「てれす、おはよう。覚えてる? わたしの家だよ? 」

 

「ええ、おはよ………。…………え、ありすの家?」


 てれすはきょろきょろと回りを見渡すと同時に、目をきっちりと開いて、ようやく思い出してくれたみたいだ。


「ご、ごめんなさい…………。寝るつもりはなかったのに………」


 いの一番にてれすが頭を下げる。


「いいよいいよ。それより、ぐっすり寝てたけど、そんなり疲れたの?」


 わたしが訊ねると、てれすは答えにくそうに言葉を濁す。


「いや、その………」


 それから一瞬、わたしを見てすぐに目を逸らすと、頬を染めて恥ずかしがるように口を開いた。


「今日のことを考えていたら、なんだか眠れなくて…………」


「あ、そういう………」


 まぁ、友達の家に来るのは初めてって言ってたもんね。

 てれすの気持ちはわからなくもない。

 わたしも遠足の前日の夜は、わくわくしてなかなか眠れなかったものだ。…………小学校の低学年のときの話だけど。


 でも、今日はチュートリアルみたいなものだろう。

 次がある…………かどうかはわからないけど、次はてれすもきっと大丈夫のはず。

 

「次来るときは、ちゃんと睡眠をとって来てね?」


「え、また来てもいいの………?」


 てれすが驚きと不安に満ちた目を向けてくる。


「もちろん。てれすなら、いつでもうぇるかむだよ」


「…………ありがとう」


 そう言って、てれすがやっと笑顔を見せたので、安心しつつも、なんだか嬉しくなった。



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