67.懺悔と嫉妬
「まだ話してないことがあるのではないかしら。」
マリアは病室に入るなり大海の横にある椅子にドガッと座ると彼女を睨みつけた。
「話していないこと?」
「あなたがわざわざここに来たその理由よ。」
「理由はそれが必要だから。」
「それだけ?」
「ええ。でもあなたにお願いがあるわ。」
大海はそういうと横に置かれていたテーブルの上に載っていた和紙をマリアに手渡した。
「これは?」
「封印が終わった後に花子ちゃんと聖に渡してほしいの。」
「どういう意味。自分で渡しなさい。」
まさか死ぬかもしれないとかそんなことがあるの。
マリアは青ざめた表情でその和紙を大海に返そうとした。
でも大海からは意外な言葉が紡がれた。
「そこには私が犯した過ちが書かれているから出来ればあなたから渡してほしいの。」
「過ちってなんのこと。」
「今回の原因は確かに皇家による襲撃が発端だけどそれだけじゃないわ。あの箱が消えた時にすぐに皇家に出向いて箱を封印しなおせば今回の事件は未然に阻止出来ていたわ。むしろあの強固な封印が破られた原因は私にあるわ。」
「何を根拠にそんなことを言っているの。」
「嫉妬したのよ。」
「嫉妬。」
「そう第一皇子の生母と聖との間に出来た子供の存在に嫉妬したの。それだけじゃない。一瞬その箱の呪いで二人とも消えればいいとも思った。」
「大海!」
「だから今まで一度も破られたことがない封印が私の代で外れたのよ。その真実がそこに書かれているからさすがに恥ずかしくって自分からは渡せないわ。」
「本当にそれだけなの。」
「何を心配しているの。まさか私が死ぬかもって心配しているの?」
「そ・・・そんなわけないでしょう。」
「ありがとう、心配してくれて。」
「だから違うって言ってるじゃない。」
マリアは和紙を手に立ち上がった。
「いいわ。これは一応預かってあげるけど”封印”が終わったら自分から渡すべきよ。反省しているならなおさら自分で渡すべきだわ。」
「ありがとう。」
「もう私は行くけどいいわね。ゆっくり休みなさい。当日しくじったなんて許されないわよ。」
マリアはそれだけいうと病室を出て行った。
「ありがとうマリア。それと嘘をついてごめんなさい。」
大海は閉まったドアに頭を下げた。




