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ビターチョコとストロベリー  作者: 須谷
番外編
38/40

久瑠実と遊園地に行った日

某遊園地の地図を眺めながら書いてみました。


 水族館の次に動物園に行くつもりだったけど、なんとなくで先に遊園地に行ってみることにした。

 最近毎月のように遠出しているわけで、お金が無くなりそうなものだが、あたしは働いているし、久瑠実はたまりにたまった小遣いがあるらしいので問題ないのである。

 だから随分リッチなデートを楽しむことも可能なわけだ。そんなしゃれたところに行くつもりはさらさらないが。

 遊園地に行きたいと強く言ったのは久瑠実の方だ。ネズミーランドのキャラクターに好きなのがいるらしい。

 もちろんあたしも楽しみだ。雑誌の企画でなぜか遊園地に連れて行かれたことはあるけど、全然楽しくなかったので久瑠実とこられるのはとてもうれしい。


 朝から久瑠実が家に、あたしを迎えにやってきた。今日つかう電車の駅は少し遠いところらしい。

 だからそこを知っている久瑠実についていくしかないわけだ。私は家から学校までの道のりしかわからないわけで…。

「おはようございます、映子ちゃん!」

 心なしか楽しそうな久瑠実。多分初遊園地が楽しみなのだろう。好きなキャラクターにも会えるし。

「おはよう。…駅までの案内よろしく…。」

「お任せください。」

 あたしはもう少し家の周りについて詳しくなった方がいいんだと思う。


 久瑠実についていくとすぐに駅に着いた。

「こんなところにも駅が…。」

「この辺3つ駅がありますからね…。違う路線で。」

 これだから都会は大変なのだ。田舎なら、そもそも駅まで行くのにすごい時間がかかるうえ、路線なんて一つに決まっている。(祖母の家が田舎にある。)

 あたしはたぶん方向音痴だ。だから駅3つとかすごく困る。

「そういやここからどれぐらいかかるんだ?ネズミーランドまで。」

「40分ぐらいじゃないですかね?去年同じクラスだった方がすぐ着くとおっしゃられていたので、そこまで遠くはないはずです。」

 正直何分以上で遠いと判断されるのかが分からないけれど、話していたら時間もすぐすぎるだろう。

「あたしたちが住んでるところって、結構いろんな施設行きやすいんだな。」

「そうですね…多分そうなんでしょうね。なんせ都会ですし。東京近いですし!」

 撮影は基本東京であるわけだけど、いまだにあたしは東京に何があるのかが分からない。


 30分少しで目的の駅に着いた。

「意外と近かったですね。」

「そうだな…。つか駅からアトラクション見えるぞ…!?」

 前に連れて行かれた遊園地はかなり小規模だったので、ネズミーランドを目にしてとても驚いた。

 規模が…大きい!広い!火山みたいなの見える!!

「遊園地ってすごいですね…。どうしてもアトラクションの作り方から考えてしまうのですけど…。」

 そういうところ久瑠実っぽいよな。


 駅から出て、遊園地の入り口に向かう。遊園地に向かう途中でも、ジェットコースターの音がしたり、アトラクションが動くのが見えたりした。

 そういうのを見聞きするたび、あたしの口からは感嘆の声が漏れた。

「すごいなぁ…。」

 驚いているのはもちろんあたしだけじゃない。遊園地に来たことがない久瑠実はもっと驚いている。

「工事現場見たかったです…。」

 久瑠実なりに感動しているみたいだ。


 受付で学生料金のチケットを買い、中に入る。

 もちろん中に広がっているのは、日本人なら誰でも知っている夢の国である。

「普通の日曜日の朝でも人多いなぁ…。」

「本当ですね。でも夏休みとかなんかに比べればきっと全然なんだと思います。」

 あたしにとっては結構多く感じるが、もっと多くなったら…。やばくね?

 改めて東京ネズミーランドの偉大さを感じた。

「そっか…すげぇなネズミー…。あ、久瑠実。どこから行く?」

 そういうと久瑠実はカバンの中から、いつ手に入れたのかわからないがパンフレットを取出し、地図の部分を開いた。

 この用意周到感あたしも欲しい。

「映子ちゃん、ジェットコースターは好きですか?」

「ジェットコースター…?乗ったことねぇから分かんねえな…。」

 苦手な人は苦手だけど、好きな人は好きだっていうよな。…一度乗ってみればわかるか。

「じゃああの山みたいなところにあるジェットコースターに乗りましょう!」

 すごい久瑠実が楽しそうだから、ついていこう。

「うん。案内よろしく~。」

 久瑠実もジェットコースター初めてのはずだから、まぁ…うん。きっと怖くない。

 

 アトラクションの前につき、列に並ぶ。待ち時間は10分とのこと。かなり短い方らしい。

「結構ならぶものなんだな。」

「そうですねぇ。意外と。私、すぐに乗り放題なんだと思っていましたよ、てっきり。」

 最初は誰だってそう思うものだろう。あたしもそう思っていた。

 …前行ったところ、マジで廃れていたんだなと、実感。

「久瑠実はジェットコースター怖くないのか?」

「分かりませんけど…絶叫系はなんか楽しそうです。」

 好奇心が旺盛なこと。そういや、初めて飛行機に乗るとき、飛行機ってどんな感じって聞いたらジェットコースターみたいな感じだよって言われた気がするな…。

 で、飛行機初回すごい怖かったんだよな…。

 あれ、やばくね?

「そうか…あたし怖いなぁ。」

「私の腕にしがみついてもいいんですよ?」

「しれっというなよ…みっともないだろ?」

 本当にしがみついてしまったらどうしよう。終わった後恥ずかしさで死にそうだ。

 

 順番が回ってきて、係員に誘導されてジェットコースターに乗り込む。もちろんジェットコースター本体も、建物(?)自体も、ネズミーランドの世界観に合わせて作ってあるので、ファンタジーの世界に迷い込んだような気分になる。

 お腹の前にガシャンとストッパーみたいなのを下ろされる。これがなかったら吹っ飛んで死ぬらしい。…こわ!あぶな!

「それではネズミ―の世界を楽しんでください!」

 係員がやさしい声色でそう言った瞬間、ジェットコースターが動き出した。

 ががががと音を立てながら…動く。

 やばくね?これ。

 そう思いながら横を見たら、これ以上ないほどにわくわくしたような顔をしている久瑠実がいる。

 久瑠実~~~…。

 少したつと坂を上り始めた。…これ、どうなんの?落ちる?落ちるのか?

 落ちた。

「きゃぁぁぁぁああああ~~~!!!!」

 あたしは我を忘れて絶叫。まさに絶叫系。

 一方の久瑠実はというと…。

「おお!いいですねぇこれ~♪」

 めちゃくちゃ楽しそうだ。

 一回落ちて安心していると、またゆっくりと坂を上り始めた。これ何回落ちるんだろう。

 ゆっくり上っていくせいで、落ちるタイミングが分からない。突然落ちるから嫌なんだ!!

「まだ…!?まだなのか?」

 そういった瞬間ズドーンっと落下。45度以上あるくだり坂は心臓に悪い。

「誰だよこんなの作ったやつ!!!!ひぃぃ~~!?」

 気づけばあたしはがっちり久瑠実にしがみついていた。案の定といった感じだが、もうみっともないとか正直どうでもいい!とにかく怖い!早く終われ!

 

 そのあと数回のぼり、落ち。やっとジェットコースターは止まってくれた。

「お疲れ様でした~!」

 のんきな係員の声。こういうときってちょっとむかつく。

 あたしは無我夢中に久瑠実の手をつかんでいたのをといて、ジェットコースターから降りた。 

「いやー楽しかったですねぇ。」

 ご満悦の久瑠実さん。

「怖かった…もうやだ…。」

「そうですか?」

「…うん。」

 たぶんこの後何回も乗らされるんだろうな。

 

「次は…船みたいなのとか乗りますか?」

 なんだか穏やかそうな予感。船なら大丈夫…

「うん、乗る。」


 普通に船だった。もちろんデザインはこっているけど…船だった。

 てっきり絶叫系にほり込まれると思っていたから、驚いた。

「絶叫系かとおもったのですか?」

「そりゃあな。」

 あんなに楽しそうな顔されちゃ、次も絶叫系選ぶと思うだろう。

「あんまり連続で乗ると心臓に悪そうですから。」

 連続じゃなければいいのか。

「…そうだな。うん。」

 待ち時間はほとんどなかったので、すぐに船に乗り込んだ。おおきな蒸気船だ。やはり中まで凝ったデザイン。

「探検しますか。動くまで。」

「そうだな!」

 探検という言葉に弱い、あたしである。

 

 船の中をぐるぐると“探検”していると船が動き始めた。

「外に出ましょう。きっと面白いですよ。」

 久瑠実に従って、外に出る。

 アトラクションやファンタジックな建物が右から左へ流れていく。

 きれいだ。本当に夢の国にいるような気分になれる。

「すげぇな…。」

「そうですね…。まさに夢の国。世界観が素敵です。」

 

 外を眺めていたらすぐに船は止まってしまった。実際結構乗っていたのかもしれないけれど、すごく短く感じられた。

「よかった!」

「もう一度乗りたいぐらいですが…、ほかにもたくさん魅力はありますからいろんなところに行きましょう。」

「ああ。そういや、そろそろ昼飯時だよな?」

 少し腹が減ってきてしまった。多分絶叫系で叫び過ぎたのも関係しているとおもう。

「そうですね。少し早目ですが、レストランに行きましょうか。」

 あたしたちはレストランに向かった。

 

 一概にレストランと言っても、このテーマパーク内にはたくさんのレストランがある。

どこで何が食べれるかなんて到底わかりやしないので、一番近くに合った店に入ることにした。

「ここでいいですか?あまり詳しくないですし、どこで何が食べられるのかとかわかりませんし。」

「いいよ。全部嫌いなもんってわけはないだろうし。」

 あたしたちはレストランの中に入る。ラッシュの時間帯ではないようで、すんなり入ることができた。

「何を食べますか?」

「うーん…こういうところで何食うか決めるのって苦手なんだよな…。だいたいおすすめとか聞いて決めちゃうし。」

 好き嫌いは少ないし、店の人が推すものが一番いいと思っているので自分で決めるのは本当に苦手である。

 好きな食べ物というのもあまりないのだ。

「じゃあ大きく写真が載っている、カレーにしましょう。」

「そうだな。それがいい。」

 あまり迷うのもどうかと思うし、ぱっと決められたらいいと思う。


 すぐに料理が目の前にやってきた。

「おいしそう!」

「ですね。」

 人前で食事をするということがあまり得意ではないが、あたしは頂きますを言った後すぐにカレーを口に運んだ。

「おいしい!」

 おいしいものは好きだ。誰だってそうだろうけ、やっぱり幸せな気持ちになるし。

「本当ですね!久しぶりの外食です…。」

「そうなんだ~。」

 あたしは仕事関係でよく外食とかさせられるけど、普通はそんなことはしないんだろうな。心底自分は異常な生活を送っているのだなと実感。


 昼食を終え、またアトラクションを探す。食後すぐに絶叫系はしんどいという結論に至ったので、お土産ショップに行くことにした。

 店に入った瞬間久瑠実は何かに取りつかれたように、あるキャラクターのところに駆け寄っていった。

「これですこれ!可愛い!」

 久瑠実が手に取ったのはクマの人形だった。そういえば少し前にはやっていたような気がする。

「それが好きなのか?」

「ネズミ―キャラクターの中で一番好きなんです…。もちろん映子ちゃんにはかないませんけど…。」

 余計なことは言わなくてよろしい。二つ目に行ったことは放っておく。

「買う?」

「はい!もちろん!」

 買ってあげたくなるのだが、そんなことをしたら久瑠実は怒るだろう。

 あたしはちょっと他のところを見てくると言って、ペアの物を探した。

 あたしは意外とペア大好き人間なのだ。お揃いとか大好きなのだ!

 みつけたのはおそらく恋人用のペアマグカップだった。

 …使うかな~?そういや久瑠実はこの前、カップ欲しいと言っていたはずだ。

 買ってしまえ!

 ノリでペアストラップも買ってレジへ向かう。久瑠実にばれないようにこっそり。

 久瑠実はクマにくぎ付けできづいていないようだ。大丈夫!

 あたしはそそくさと会計を済ませ、買ったものをカバンに入れた。その直後久瑠実があたしのもとにやってきた。

「何かいいものはありましたか?」

「うん、少し欲しいものあったよ。」

 個人的に欲しいお菓子もあったので嘘ではない。そう、五十嵐さんにお土産よろしくと言われているのだ。

 お揃いは後で明かすから!

「そうですか。私会計すませてきますね。」

 久瑠実は手に人形を2つ持っている。例のクマである。

 あたしも普通にお菓子を買おう。

「わかった。あたしもさっさと決めちゃうな。」

 さて、何を買おうか。五十嵐さんは何が好きなんだろう。…甘いものなら何でもいい気がする。


 五十嵐さんへのお土産を買って久瑠実のもとへ。

「ごめん、待たせた?」

「そんなにですよ。さ、次のアトラクションに行きましょう。」

 結構先が思いやられるんだけどな。


 久瑠実についていくと目の前にあったのは、やはり絶叫系。来たか。

「これ乗りましょう?」

 なんであたしが断れないような言い方するんだよ。もう少し心にゆとりを持てるような聞き方してくれよ…。

 多分久瑠実の中で計算済みだと思う。

「…はい。のります。」

 

 絶叫系に乗ってどうなるかなんてわかりきっている。

「怖い怖い怖い怖い…!ひぃややああああああ!!!」

 叫ぶ。

 そして久瑠実はご満悦。

一日、絶叫系とそれ以外を挟みながら久瑠実に遊ばれたあたしだった。


「夜のパレードとか見ていきますか?」

「そうだな…そんなに遅くならないのなら見よう。」

「時間は気にしなくても大丈夫ですよ。7時から30分程度ですし。」

 なら見ていけるな。パレードなんて見たことないけど、きっと面白いんだろうな…。

 …叫ばなくて済むのもいいな。


 パレードが始まった。花火も上がっている。

 ライトがたくさんついた…乗り物というかなんというか、でかいのが動いている。

 あれの名前分からない。

 でもすごくきれいだ。あとみんな楽しそう。

 久瑠実もパレードの様子にくぎ付けになっている。

「素敵ですね…なんか。」

「そうだな。」

 二人でより添ってパレードを見ているとはたから見ればカップルそのものである。やっぱり性別は同じだけど気にしない。

 そっと久瑠実の手を取ってみる。

「映子ちゃん?」

「なんとなく。」

 “なんとなく”で久瑠実の手を握り続けていた。


 パレードも終わり、久瑠実が帰ろうと言った時思い出す。

 わたそうか、あれ。なんか恥ずかしいけど。

「久瑠実。」

「なんですか?」

 あたしはカバンからさきほどこっそり買ったペアカップとストラップを取出し、久瑠実に見せた。

「やらない?」

「…やりますとも!いつの間に買ったんですか?」

「こっそり売店で…な。」

 包装を開けて、久瑠実が好きそうな色の方を渡す。

「ありがとうございます、映子ちゃん。」

 夜の遊園地の中でも、久瑠実の笑顔はキラキラと輝いていた。


 また、行きたいな。遊園地。久瑠実と以外は嫌だけど。


次は、きっと動物園に行くことでしょう。

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