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ビターチョコとストロベリー  作者: 須谷
森崎映子からの話
34/40

久瑠実に告白された日

 今まで生きてきて、一番うれしいって思える日だったな。


 今日は日曜日。今日もあたしの家に久瑠実が来ることになっている。近頃頻繁に遊んでいるから、いつも通り何を話すか考えていた。

 大好きな久瑠実。何も伝えられやしないけれど、とりあえず友達としてでも長く関係を続けていけたらいいなと思っている。

 もうすぐ久瑠実が来る時間だな。

 あたしはわくわくしながら久瑠実を待つ。

 

 予定の時間を一分すぎた。いつも時間ぴったりに来る久瑠実が。

 あたしは心配になって、玄関のドアを開けた。

「ひっ!!!!」

 外からものすごい声がした。空き巣している途中に、家主が入ってきたときみたいな?

 それにしても変な声だ。普段落ち着きすぎた久瑠実から出るはずのない声。

「よ!久瑠実。なにをそんなに驚いてるんだ?」

 久瑠実はいたって普通の顔をしていた。さっきの声は何…。

 だって緊張しているんですもん。今なら、石につまずいただけで叫べそうです。

「何でもありません。お邪魔しますね。」

 何も変わらない久瑠実。

「どうぞ。」

 おかしいなぁ。


 いつも通り久瑠実をあたしの部屋に通す。

 あたしは母が用意した紅茶をキッチンにもらいに行って、部屋に戻る。

「今日はハーブティーだって。はい。」

「有難うございます。いただきますね。」

 久瑠実はごくごく普通に紅茶を口にした。しかし先の出来事が気になる。

「映子ちゃん。」

 何を改まって、あたしの名前を呼んでいるんだ。

「なんだ?」

「大事な話があるのですがいいでしょうか?」

 あたしは首をかしげる。大事な話?絶交とか絶交とか…?…いやだなぁ。

「なんだ?」

 久瑠実は深呼吸。あたしは久瑠実が話し出すのを待つ。

 結構な間が開いて、久瑠実は話し出した。

 「突然で大変申し訳ないのですが、言いたいと思ったので言わせていただきますね。私ですね…、映子ちゃんのことが好きです。その…恋愛感情的な意味で。恋人になってほしいです的な意味で。」

「へ?」

 久瑠実が?あたしを?好き?

 ずいぶんいきなりだなぁ。びっくりするじゃねえか。あたしはどう反応したらいいんだ。好きなやつから告白されたらどう反応すればいいんだよ?

 久瑠実の顔は真っ赤。あの久瑠実の顔が真っ赤。

「ごめんなさい突然!いいんです、気にしないでください…。わ、忘れてください…!」

 あたしの顔も赤く染まっていく。忘れられるわけねぇだろ!!!

「…気にするわ!!!!!」

 叫んだ。

 あたしも久瑠実のこと好きなのに、忘れろとかひどい。つかいい逃げとかひどい。

 久瑠実に先に言わせてしまっている時点で残念で仕方がないんだ。あたしヘタレだなって思ってすごく残念なんだよ!!

「あたしも久瑠実のこと好きだから、気にする。…忘れたくない。」

「え?」

 何驚いた顔してんだよ。お前もさっき同じようなこと言ったじゃねぇか!

「好きだっつってんだよ!!!」

 あたしの顔は今まで生きてきた中で一番真っ赤だと思う。生まれたてのベビーより赤いと思う。

 そして久瑠実もあたしと同じぐらい、顔を真紅に染めてる。

「本当ですか…?いったら私の好きは、抱きしめたい!キスしたい!的な奴ですよ?わかってますか映子ちゃん。」

「わかってるよ…。キスとか考えたこともないけど、とにかく一緒にいたいなって思う。いつも遊んだあととか、家に帰ってほしくないとか、思う。」

「映子ちゃん、一回頭冷やしませんか?なんかこういうと喧嘩したみたいですけど。」

「ああ、そうしよう。」

 あたしと久瑠実は、紅茶を飲んでほっと一息。若干顔面の赤みが引く。

「さて、映子ちゃん。私は映子ちゃんのことが恋人にしたい感じで好きです。おっけー?」

 ずいぶん軽いなまぁいいや。

「おっけー。で、あたしも久瑠実のことが好き。」

「付き合いましょう。」

「喜んで。」

 何この流れのよさ。これで晴れて恋人同士。

 「映子ちゃんはなぜ私のことが好きなのですか?恋愛感情的に。」

 なんでその質問するかな。また赤くなるぞ、頭部。

「…一年生の時からだけど、なんか久瑠実の存在が新鮮で。ほかの人とは違うし。それになんか久瑠実といると落ち着くし、楽しいし。好きだなーって。こういうのどうなのって五十嵐さん…マネージャーに聞いたら恋だなって言われて、よくよく考えたら友達としてというよりは、なんか今後も一緒にいたいと思う感じの好きだなって思ったんだ。」

 恥ずかしいけど、一度でもとめたらやばいと思ってすらっと言葉を並べた。

「…ありがとうございます。」

 なんで純粋にお礼言ってんだよ!

「そんな返し方するなよ!!!よけい恥ずかしくなんだろ!?」

「すみません…!じゃあ私も言います…。せっかくですし。」

 え!言わなくていいのに。そんなこと言われたら二日間ぐらい引きずるって。顔赤いの。

でも、もちろん久瑠実の決意は固いので、久瑠実は話し出す。

「私はですね、知ってのとおりエコさんの大ファンでした。でも高校の入学式の日、初めて映子ちゃんを目の前にしてですね、この人も普通に過ごせる権利を持っているはずだなって思って、エコさんとしてみるのは絶対にやめようって思ったんですよ。で、普通に友達になれたらなって思ったんですけど、映子ちゃん学校にあまり来ないから、学校のこと一杯教えてあげたいなって思って、連絡カード書き始めて…もともとエコさんのことしか頭になかったのが、全部映子ちゃんになって。格好いいのに可愛い映子ちゃんが愛しくてたまらなくなってですね、だんだん友達というより恋人になりたいと思うようになりました。以上です。長文失礼いたしました。」

 長々と、そしてやっぱり止まらずに愛をささやいた久瑠実。

 この後自分たちがどうなるかなんて目に見えている。

 ぷしゅー。赤面。

 数分顔を真っ赤にしたままうつむいていた。あの久瑠実が冷静さの欠片もない状況になっていた。

 今お互いの顔を見たらまたヒートアップすることはわかっている。だからとりあえずうつむいておく。

 仕方がない。あたしたちは恋愛初心者なんだ。

 先に口を開いたのは久瑠実だった。

「映子ちゃん。」

 さすが久瑠実。先に告ったのも久瑠実。状況を変えるのも久瑠実。…男口調のくせにへたれなあたし。

「なんだ?」

「これからは一緒に登校しましょうね。メールしてくださいね。学校でドキドキしながら待つのもいいですけど、やっぱり一緒に学校行きたいです。」

 もう予定表渡してもいいよな?面倒臭い。

「うん。つかもう予定表渡していい?久瑠実なら漏えいとかしないだろ…?」

「はい。個人情報の取り扱いにつきましては個人情報保護法に基づき適切な対処を取らせていただきますのでご心配なく。…私は予定表をもらえたら楽なのでうれしいですね。」

 さすが久瑠実だ。いつものペースにほっとした。

「次会った時にでも、コピー渡すな。…手つなぎ登校?」 

 あたしが不意打ちのようにそういうと、久瑠実はすごくびっくりしていた。久瑠実の冷静対応は崩れる。

「…そうですね!そうです、そうしましょう。なんでもやってやりましょう。」

 もう最終的にはやけくそだ。二人とも、

「ああ、このさいな。前からあたしが赤くなるのは久瑠実といるときだけなんだ。おし、久瑠実。特権だ!あたしを赤くすることを許してやろう!!」

「やった!ありがとうございます~!」

 だんだんよくわからない方向にテンションが…。


「そう、映子ちゃん。こんな状況になった今だからこそ聞いてほしい話があります。」

 まだ大事な話があるのか?告白以外に。

「ん?何の話?」

「私が敬語を使う理由です。これは今の両親も知りませんね。」

「今の?」

 そういえば前聞いた時はぐらかされたやつだ。だからきっととても久瑠実にとって重要な話。それをあたしに。

「多少暗い話になるかもしれませんが、聞いてくれますでしょうか?今の雰囲気ぶち壊しになるかもしれませんが、今言いたいです。」

「恋人なんだろ、久瑠実。遠慮すんな。話したいなら話せ。聞くから。」

 暗い話ねぇ。別にいいよ。久瑠実のことが知れるなら。それを聞くことで久瑠実を支えることができるなら。

 今更久瑠実と離れることなんてできないからな。


あと二つです。

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