表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビターチョコとストロベリー  作者: 須谷
森崎映子からの話
21/40

久瑠実に会えない日

 今回は学校に行かない日の話でもしようか。

 できるならずっと久瑠実の話をしていたいけれど、たまにはあたしの話もしないとあたしのことがよくわからなくなるだろうから。

 久瑠実がだいたいあたしの情報を与えてくれたようだけど、たまには自分から話させてくれ。

 

 とりあえずあたしの仕事の話でもしようか。

 あたしの仕事はモデルだ。10代モデルの中ではかなり有名な方だと言われている。自分に自覚はないけれど。

 結構身長が高く足が長いので、モデルにはぴったりの体型なのだそうだ。

 顔は久瑠実のようなかわいらしい童顔とは正反対で、大人っぽいと言われる。結構濃いめのメイクも似合うらしくいろんなブランドから声がかかる。

 おかげで高校生ながらも大人向けのブランドのカタログとかに起用されたりするのだ。

そのせいでかなり忙しいのだけど。 

 でもまぁほぼ毎日仕事があるのは光栄なことだ。自分が必要とされていると感じないと人間は生きていくのがつらくなってしまう。

 それをひしひしと感じることができるあたしは幸せ者だし、やっぱり人から見られる職業を長く続けていけるのもすごいことだと思う。

 あたしは自分の仕事に誇りを持って、仕事をやっている。ファンにも感謝の気持ちでいっぱいである。

 

 性格についても話してみよう。

 あまり自分の性格を深く考えることは少ないけど、仕事においては社交的だと評判だ。仕事ではかなり日常生活と割り切っているせいで、態度が変わる。

 もちろん傲慢になるわけではない。

 言われたこと、自分のやるべきことはしっかりこなす。人を不快な気持ちにさせない。そのへんが、モデルとしての練習を始めた小学生の時からのモットーだ。

 しかし日常生活においてはそうはいかない。仕事で人に社交的にふるまっている反動なのか、仕事のスイッチが切れた瞬間ぱたりと人と話せなくなる。

 学校でも久瑠実に頼っているように、本当に駄目なのだ。マネージャーさんにだって話せやしないので、自分で自分に迷惑してしまうといった感じだ。

 まとめると仕事の時は目的は必ず果たしたい完璧主義で、社交的な完璧なモデルを演じている。そして日常生活においては、人見知りで恥ずかしがりで、一人では何もできやしないヘタレである。そして久瑠実に対してだけは一途だ。

 …いい加減、いつでもまともに話せるぐらいの力がほしい。


 仕事の日のことでも話そうか。

 仕事は大体月曜日~土曜日まで。日曜日は休みが多い。日曜日は予備日みたいな感じでいつでも出られるようにしとけとは言われているけれど、完璧に仕事をこなすようにしているあたしには準備の必要はあまりない。

 だから日曜日は基本休みということになる。 

 そして、たまに平日に休みをもらって学校に行くといった感じだ。

 仕事の日には、朝マネージャーの五十嵐さんが、家の前まで迎えに来てくれる。撮影は基本東京都内。東京に住むあたしには車移動がぴったりだ。

 だから毎日車に乗って移動する。

「エコ、おはよう。」

 五十嵐さんにそう言われると仕事に行くんだなーと思う。

 でも移動の車に乗っている間は、仕事ではないわけで。五十嵐さんには愛想よくできないのが現状だ。

「おはよ。」

 そっけなくそう返すことしかできない。でもこれでも進歩したほうだ。昔は何も返すことができなかったのだから。

 五十嵐さんはあたしが、五十嵐さんに対してあまり話しかけられないのをわかっているから何も話しかけてこない。

 そうやってあたしとマネージャーの関係は成り立っている。 

 でも最近はあたしの頭の中は久瑠実でいっぱいだから、たまに久瑠実のことを話したくなる。だから五十嵐さんに話しかけることも少し増えた。

「なぁ五十嵐さん。学校の話してもいい?」

 久瑠実の話がしたくなって、今まではじめてあたしがこういった時、五十嵐さんはにっこり笑った。

「珍しいわね、エコ。私はいくらでも聞くわよ。」

 五十嵐さんは本当にいろいろ迷惑かけてると思う。


 あたしの話は置いておこう。

 この前こっそり久瑠実が、あたしが学校にいない時どうしているのかを聞いたんだが、それに一言申したい次第だ。

 久瑠実はあたしがいない時、あたしの知らないクラスメイトとつるんでいるらしい。あたしとしてはあまりうれしくないのだか仕方がない。(嫉妬?)

 だけど私のためにかいてくれている連絡カードなるものにかなり時間をかけているらしい。

 連絡カードとは久瑠実が、学校に来たい来たい言ってるあたしのために毎日学校の状況を書いてくれているカードだ。

 カードと言ってもただのB5の紙だが、結構みっしりかいてあるので自然と紙が分厚く見えてきそうだ。

 授業内容はもちろん、軽い周囲の会話やクラス単位の出来事などを書いてくれている。あたしにとっては何もかもが新鮮で、眺めているだけでとても楽しい。

 久瑠実はそのカードを毎日あたしの家まで届けてくれる。久瑠実の家までの帰り道にあたしの家があるので、当然のように寄ってくる。

その時あたしはいないけれどお母さんが対応してくれているようだ。

 お母さんは毎日来る久瑠実のことをかなり気に入っているようで、お茶やお菓子を振舞っているらしい。

 そんな母にまで嫉妬まがいの感情を抱いてしまう自分が大変憎たらしい。

 めんどうくさいだろうその連絡カードを毎日書き、あたしの家に届けるという作業をやってくれている久瑠実に対して私の頭は上がらない。 

 全然いやじゃないし、むしろとてもうれしいからやめろとも言えない。何とも複雑な心境である。


 余談。

 この前久瑠実がめちゃくちゃ強いという噂を聞いた。噂によれば、男に背負い投げをかましたとか。真相がどうなのかは知らないけれど、本当ならとても格好いい。

 久瑠実には憧れを抱く…。

 

 久瑠実に会えない日はまぁ仕事に熱中しているだけだから、大したことはない。

最近は久瑠実のことを考えてばかりだけど。

 次は久瑠実があたしの家に来た時の話でもしよう。


番外編のアイデア募集中です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ