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ビターチョコとストロベリー  作者: 須谷
森崎映子からの話
20/40

久瑠実がいる学校に行く日

映子ちゃん視点。

 久瑠実と出会った時の話はもうしたから、次はあたしが学校に行く日の話をしよう。

久瑠実が話していた内容について、あたしからも話をすることにする。


 あたしの仕事は不定期で、量が多い。時間も雑誌によってさまざまだ。量が多いせいで休みも少ない。

 そのせいで学校に来ることはあまりできないのだ。一か月に1,2回。だいたいがそれぐらいの頻度でしか学校に行けない。

休みが土日に多いせいで平日が基本の学校にはあまり縁がないような気がする。

 でも、学校に行けばあたしのことをただの女子高生としてみてくれる…大好きな久瑠実がいるから、極力学校に足を運びたいとは思っている。

久瑠実のそばは落ち着くし、仕事とは違う安心感があるから、会いたい。できればたくさん。本当に恋してしまったんだなと思う。

 久瑠実が普段どんな学校生活を送っているのかを知れないのが残念で仕方がない今日この頃である。


 あたしにとって、学校に行った日は楽園そのものだ。

 学校について教室にはいったら必ず久瑠実に挨拶をする。そうすれば久瑠実はいつも通りのニッコリ笑顔で返してくれるから。

 仕事以外で人に挨拶をするのはとても気恥ずかしいけれど、その笑顔を見るためだけに恥ずかしさに耐え、学校に来た時の久瑠実へのあいさつは欠かさないようにしている。

 その笑顔を見て、学校に来たんだな、今日は久瑠実と一緒に入れるんだなと思うんだ。

 

 あたしが学校に来た日には久瑠実は心配したような顔であたしを見る。一度聞かれた。仕事がない日ぐらい家でゆっくり休んだ方がいいのではないか、心配で仕方がないのだと。

 でも、あたしにとっては家でゆっくりするよりも、久瑠実と一緒にいた方が落ち着くしリラックスできるから。もっともそれを久瑠実に言ったりはしないけれど。

 だからあたしは言う。自分が来たいと思っているから来ているんだ、仕事より落ち着くから来ているんだ、だから心配しないでくれと。

 久瑠実に不安げな顔はしてほしくない。ずっと笑顔でいてほしいんだ。

 

 あたしは学校に行くとき、久瑠実に連絡をしない。だから突然学校に現れる形になる。

あたしは久瑠実に連絡をしたいけれど、久瑠実はそれを嫌がる。楽しみが減るだとか言って。あたしが来るこないに楽しみもくそもあるのかないのかは置いておいて。突然来た方がうれしいんだと。


  これはあたしが学校に行ったらしょっちゅうある話だ。

あたしは人見知りである。だから初対面の人間なんぞに愉快に話しかけることなんてできやしない。

 仕事ではいろいろ割り切っているし、まぁ違う人格だと思ってやっているから、人と関わることは容易なことなのだけれど、学校みたいな場ではそうはいかない。

 小中学校にほぼ通っていないあたしは学校慣れしなさすぎている。

 だから自分から話し出せないあたしのサポートを久瑠実がしてくれるのである。

「久瑠実…、コンパス持ってないんだけど…。」

「2つありますから貸しますよ~。」

 一言忘れたというだけですべて察してくれる久瑠実。便利な道具だとは思っていない。

とても感謝している。心から。

 仕事が終わるのが夕方以降が多いから、疲れてすぐ寝てしまうあたしは明日の準備など眼中にない。そのせいで、しょっちゅう忘れ物をしてしまう。

 久瑠実はそれを全部わかっていて、たいていの物の管理をしてくれている。初めの方は久瑠実の物を借りていたのだけど、最近は自分の物を買ってきて預けて片づけておいてもらう形で安定している。

 人に自分の物の管理をさせるのはすごく申し訳ないのだけど。

 良い持ち物の確認方法を、あたしは知らないのだ。ごめん、久瑠実。


 これもまた、あたしが学校にいるときの話。

 あたしは人見知りだけど、仕事柄のせいかあまり人に弱みを見せたくない。久瑠実はなぜかそれをよくわかっているようで、いろいろ対応してくれる。

 たとえばあたしが知らない男子に話しかけられたとき。(といってもあたしが知らないだけでだいたいクラスメイトだと思う。)

「おい、森崎…。」

 こうやって話しかけられたとき、あたしはどう対応すればいいのかが分からない。仕事ではどんなパターンにでも対応できるのに、なんで普段はできないのかあたしも不思議だ。

 一度ごもるあたしを見た久瑠実はあたしに言い聞かせた。対人に困ったときは私に振って下さいと。

 だからあたしはその久瑠実の言葉に甘えさせてもらって人に対応をする。(成長しない)

「ああ、あたしに何か用があるなら、そいつに言って。」

 こうやってお決まりの台詞を久瑠実に振れば、必ず久瑠実は対応してくれるのである。こんなに有能な友人を持つと、自分で何かをするのもばかばかしく思えてくる。

「はい、何かご用でしょうか。あ、告白は認めません。私が。」

「すみませんでした。」

この繰り返しだ。


そしてたとえば、あたしが誰かに話しかけたいとき。

「久瑠実…先生にこの資料のこと聞きたいんだけど…。」

 まずあたしは、久瑠実にだれに何を言いたいのかを言う。

 「はい!どこでしょうか?」

 次に久瑠実が、あたしに詳しい内容を聞く。

「ここ。よくわからないんだ。」

 あたしが久瑠実の質問に答える。

「わかりました。私もよくわからなかったので、好都合です。行きましょう。」

 最後に久瑠実が、質問に行く。こんな感じの段取りだ。

 たいていの質問には久瑠実が答えてくれるけれど、個人的なことだとかどうにもならないときはこの手段をとらざるを得ない。

 必ず久瑠実を通して話しかける。

 これもいろいろ話して考えた上で出た結論なのだ。学校で久瑠実以外に話しかけるのはなんかしんどい。

 まぁ学校に来る目的が久瑠実に会うためだから仕方がない。


 あたしが学校に来たときはだいたいこんな感じだ。大したことはないけど、ただあたしが久瑠実をパシってるみたいな感じになる。

 別にパシりたいわけではない。久瑠実となるべく多く話すにはこうするしかないのだ。

 次はあたしが学校に行かない日の話をしようかな。


番外編のアイデア募集中です。

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