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ビターチョコとストロベリー  作者: 須谷
琴音久瑠実からのお話
10/40

映子ちゃんと2年生になった日

 今回は二年生になった時のお話でもしようかと思います。この日は大事な日になりましたね…。


私の高校では2年生に上がるときだけクラス替えがあります。一年生の時は学力も文系理系も関係なくクラス分けをするのですが、二年生からは学力と文系理系が関係するクラス分けになるのです。

 私と映子ちゃんは同じ理系。しかし、学力が同じわけではないのでクラスが同じになるとは限らないのです。もっとも同じだとしても同じクラスになれるとは限らないのですが。

 映子ちゃんは事情が事情なので出席日数が少なくても進級できるようにしてもらっています。ですから、クラスメイトを考える余地など先生方が持っていらっしゃるかどうかは定かではありません。

 たまたま始業式の日は映子ちゃんのお仕事が休みだったので、一緒に学校に行くことにしました。いつもは突然来る映子ちゃんですが、クラス替えがあるこんな日にはそうはいかないようです。

 森崎家に映子ちゃんを迎えに行くと、映子ちゃんは外に出て待っていました。どうも落ち着かない様子です。クラス替えですもんね…。

 私は冷静に見えるかもしれませんが、実際あんまり冷静ではありません。映子ちゃんと同じクラスになれなかったら気が気ではありませんから。

 しかし映子ちゃんの前では弱みを見せたくない生き物なのです。私という生き物は!!

「おはよう久瑠実…。おはよう。…。」

 様子がすごくおかしい映子ちゃん。相当緊張しているらしいです。

「おはようございます映子ちゃん。そんなに緊張しなくても大丈夫じゃないですか?」

「でも…でも…。あたし…。」

 本当に落ち着かないようです。仕方がないですから映子ちゃんの手を取って、握ってみました。

 余計に顔が赤くなりました。

「…落ち着きませんか?人肌のぬくもりと言いましょうか…。」

「恥ずかしい!!!」


 そんなこんなで無事学校に到着。クラスは昇降口前に貼りだされているはずです。

さすがの私も、ごくりとつばを飲み込みました。

「久瑠実ぃ…久瑠実ぃ…。」

 横で映子ちゃんも鳴いています。猫みたいに。

さて、理系クラスは何組からでしたっけ。

 名前からして、私の名前が上の方にあるはずです。

私はこうやってクラス分けを見ているけど、映子ちゃんは見るのが怖いのか私の背中にうずくまっています。なんて可愛いのでしょうか。

「あ、ありました。私の名前。」

 どっくん、どっくん。さあ、この列の下の方に森崎映子の名前があったら私の2年間は輝きます。

「映子ちゃん。私たち同じクラスみたいですよ。」

 嬉しすぎて言葉に感情がこもりませんでした。すごい棒読みになった気がします。仕方がないですよ。だって嬉しいんですもん。

「まじで?…あ、本当だ。……くるみぃ~…。」

 映子にゃん、再び。

「よろしくお願いしますね。映子ちゃん!」

 私が抱き着くと、映子ちゃんの顔から蒸気が吹き出ました。


 新しいメンバーが待つ教室へ向かうと、人数の多い高校ですから、知らない人がたくさんいました。

 これは映子ちゃんのスペシャル人見知りが発動しそうです。自己紹介に参加させるわけにはいきません。

 自己紹介はたぶん明日でしょうから、明日仕事がなかったとしても学校に来るのは阻止しなければ。

「映子ちゃん。知らない方がたくさんおられますね。大丈夫ですか?」

 そう尋ねられた映子ちゃんは、机に顔を突っ伏しています。この状況からして大丈夫なわけがないのですが。

「…大丈夫じゃない。やっぱり一日目はしんどい~…。」

 どうしましょうか。環境が変われば去年クラスにあった暗黙の了解、映子ちゃんの仕事に気付いても口を出さない、がなくなってしまいます…。

 睨みましょうか?…そんなことしたら私の立場がなくなってしまいます。

 

 始業式を終え、クラス写真をとったら今日は解散です。

さっさとクラス写真を撮り、私は映子ちゃんの手を引いてさっさと帰路につきます。

「久瑠実。なんでそんなに急いでるんだ?」

「対策を練らねばいけません。映子ちゃん、明日仕事有りますか?」

「あるけど。」

「ならいいんですけど。自己紹介は回避できそうですね!映子ちゃんは、バレるの嫌ですか?」

 映子ちゃんは日本ではかなりの有名人ですから、今まで学校内で2度しか声を掛けられていないのが奇跡なのです。

私がすごい目で周りを見ていたのもあるかもしれませんが。それに映子ちゃんも不良というレッテルを張っていたし。

しかし一年生の時の体育祭や文化祭の頑張りようで、すごい純粋な笑顔を不特定多数の人間に対して振りまいてしまった映子ちゃん。

 不良には見えません。ただの純粋無垢なスレンダー美女です。

「別にいいよ。久瑠実があたしをちゃんと見てくれるんだろ?」

「もちろんです。」

 映子ちゃんは相当私のことを信用してくれているようです。それなら…

「自由にやりましょうか。何も気にせずに。」

「あたしはそれでいい。」

 映子ちゃん、本日から学校では自由にいきます。もっとも、私以外とお話しできる気はしていないそうですが。


 とにかく同じクラスになれてよかったです。先生の配慮があったのか、それともただの運なのかはわかりませんがとにかく神様大好きです。

 あと2年間、ひっそり映子ちゃんに恋をし続けることができそうですね。


 進級の話はこれぐらいにしておきましょう。それにしても出席日数がほぼ関係ないってどんだけゆるい校則なんだって感じですが、校長がエコさんのファンだからです。ほかの人はだめです。

 次はきっと暴露話ですね。


もう少し続きます。

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