やっぱりこの人も駄目みたいですね……(知ってた)
(面倒くせーなぁ……どうしよ……)
出来ればあまり関わりたくないというのが本音だ。俺の勘がこの人はまずいとビンビンに告げてくる。
だけど邪険に扱うには舞白の立場が問題だった。
仮にも舞白は『ダメンズ』のリーダーだ。この場はよくてもすげない態度を取り続けると、今後のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性がある。
幼馴染たちに養って貰いたい俺としては、それは出来れば避けたいところだ。
『ダメンズ』にはもっともっと上を目指せるポテンシャルがあると思っているし、こんなところでつまずくようなことになって欲しくない。
それに……。
「ね、ねぇクズマくん。そのぅ、前も言ったけど、呼び方変えてもらってもいい……? ホラ、いつもみたいに、ハルカゼさんって呼んでもらいたいなって……駄目?」
そう、この人はアイドルであると同時に、俺のゲーム友達であるハルカゼさんでもあったのだ。
俺にとってはむしろこちらのほうが衝撃だったかもしれない。
身近な存在だと思っていた彼女が実は……というのはラブコメなんかではありがちだが、実際に自分の身に起きてみると未だに現実味がなかった。
でもハルカゼさんの方からグイグイ距離を近付けてこようとしてるのは分かる。
おそらく俺に好意に近いものを抱いているだろうことも……。だが……。
(そういうのも含めて面倒くさいんだよなぁ……ハァ……)
ぶっちゃけ俺としてはこの人と付き合いたいとかそういう気持ちは一ミリたりともなかった。
相談に乗っていたのも友人としての気持ちからだったし、別に恋人になりたいとかの下心はマジでなく、100%善意からの行動だ。
それは彼女の正体が分かった今でも変わりはない。
というか、相談に乗っていた過程で自分を自画自賛してしまっていた黒歴史が思い浮かんできてしまうので、どっちかというと顔を合わせたくないまである。
(まぁ告白されたわけじゃないからいいんだけどさ。このままじゃ時間の問題っぽいんだよなぁ)
朝っぱらから人んちの前に立ってストーカーやってるくらいだ。
そのうち俺に対する気持ちが爆発して、色々やらかしてくるだろうことは目に見えている。
そうなると当然幼馴染たちも勘づくだろうし、下手すれば俺が原因で『ダメンズ』に亀裂が入る恐れもある。それはまずい。
幼馴染たちにはもっともっと稼いで貰わないといけないのだ。
俺の働かずに遊んで暮らす理想の人生のためにも、ここで終わって貰っちゃ困る。
「クズマくん、あの、聞いてる?」
「え? あぁはい。聞いてます聞いてます」
生返事をしつつ、俺は頭の中でそろばんを弾いていく。
これからの舞白への対応はどうすべきか。やはりつかず離れずがベストか。
好感度を上げ過ぎるのはまずいが、かといって下がるのも駄目だろう。
となると……。
「それで、呼び方なんだけど……」
「えぇ、そうですね。じゃあハルカゼさんで。こっちの方が、確かに俺も馴染みがあって呼びやすいですからね」
「う……うん! そうだよね! 良かったぁありがとうクズマくん。私のワガママ聞いてくれて……」
「いえいえ。この程度どうってことないですよ、ハッハッハ」
ズバリ現状維持一択だ。
冷静に考えてみれば、俺なら好感度調整くらい余裕じゃん?
ハルカゼさんの性格は分かっているつもりだし、言うほど綱渡りにもならないだろう。
上手いことなんとかして、この危機を乗り越えようそうしよう!
「あ、そうだ。クズマくんが言うことを聞いてくれたんだから、お礼をしないとだよね」
決意を新たにしていると、舞白がなにやらごそごそとカバンを漁り始めていた。
夏場だし、日傘でも差すのかな? なんてことをのんびり思っていると、
「はいこれ! 私の気持ち! クズマくんのために、今日はたくさんお金持ってきたの!」
満面の笑みで、こちらにお金を差し出してくるのだった。




