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もっと主人公を信用してよっ!

「きゅう……」


 えーと……なんだこの状況……。

 突然叫んだかと思えばいきなりぶっ倒れた舞白に、俺は大いに困惑していた。


「てか、耳めっちゃキーンとしてるし……なんなんだよ……」


 未だ残響が残る耳を抑えながらため息をつく。

 舞白もそうだが、ハルカゼさんも今日は随分と様子が変だった。

 何度も電話を切ってはかけ直してきたかと思えば、いきなり大声出してくるし。

 ハルカゼさんって、あんな人だっけ? 俺の周りにいるやつらに比べれば、大分常識人寄りは人だと思っていたんだけどな……。


「っと、いけね。とりあえず舞白の介抱をしないとな」


 あんなデカい声を出したんだ。雪菜たちも気付いただろうし、すぐこっちに来るだろう。

 ハルカゼさんのことも気になるが、俺が舞白に変なことをしたんじゃないかと疑念を与えるようなことは避けたいし、アリバイ作りくらいはしておくか。


「あーあー、スマホもつけっぱなしじゃん。アイドルなのにセキュリティ意識ってもんがなってないぞ」


 倒れた際に廊下に転がった舞白のスマホに手を伸ばす。別に中身を見る気はないが、回収くらいはしておかないといけないだろう。

 だが、どうも通話中だったようだ。画面には電話相手の名前と番号が表示されて……。


「ん? クズマくんだと……?」


 クズマは俺がゲームで使用している名前だ。

 そしてその下にある番号には見覚えがある。俺が使用しているスマホの電話番号。

 これらを目にしたことで、俺の中にあった疑念が一本の線として繋がっていく。


(もしかして、舞白の相談相手って……)


 この考えが正しいか確かめるべく、俺は一度舞白のスマホを操作して通話を切ると、こちらからハルカゼさんへと電話をかける。

 するとやはりというべきか、舞白のスマホが震えてクズマの名前が表示された。


「……………………マジか」


 嘘だ、と思い込もうとしようにも、文字通り動かぬ証拠がそこにあってはそれも出来ない。


「認めるしかない、か」


 ハルカゼさんは、アイドルの春風舞白だ。

 そして、俺が警戒していた相談相手のやつは自動的に俺自身ということになる。


「なんてこった……なんで今まで気付かなかったんだよ、俺」


 思い出してみれば、色々ヒントはあったように思う。

 でも、まさか幼馴染たちと同じユニットを組んでいる人とゲーム友達だったとか思わないだろ。どんな確率……いや、それは俺が神に愛された勝ち組だからで全然説明つくな。

 単に常識に囚われすぎて、その可能性を無意識に排除してしまっていた俺自身の責任と言えるだろう。


「さて、そうなると……」


「和真、さっきの声は何!?」


「なにかあったの、カズくん!?」


 考えをまとめようとした時、階下からアリサたちの姿が見えた。

 ……仕方ない。一旦思考は中断だな。今はこちらの対応の方が優先だ。


「俺はなんともない。ただ、舞白さんが突然倒れてしまってな」


「舞白が……?」


「ちょっと待ってカズくん。なんで舞白ちゃんがここにいるの。舞白ちゃんはトイレに行ってたはずなんだよ」


 事情を説明しようとしたのだが、直後に雪菜からかかる待ったの声。


「ちゃんとトイレの場所も教えたし、なにか理由でもない限り、二階に来ないと思うんだよね」


「それは俺に言われてもな……誰かが一階のトイレを使ってたからとかじゃないのか?」


「アタシたちはずっとリビングに居たわ。舞白がトイレに行ってから誰も出て行ったりもしてない」


「それはルリが証明しますよぉ。つまり、マシロセンパイは自分の意志で二階に……というか、おにーさんに会いに来たことになりますねぇ」


 ジロリと、6つの瞳が俺を捉える。

 ……あれ? もしかして、俺。疑われている?


「お、おい待てよ! 俺は何もしてない! 廊下から気配を感じたから部屋から出たら、そこに舞白がいただけなんだって!」


「ホントぉ?」


「カズくんのことは信じたいけど、舞白ちゃんの性格を考えたらカズくんが粉をかけようとしたと言われたほうが信じられるんだよね」


「お前らがいるのにそんなことするはずないだろ!? 俺が身の危険を顧みずに舞白にちょっかい出す男に見えるってのか!?」


「「うん、すっごく見える」」


 同時に頷く幼馴染たちに、俺は戦慄する。

 こ、こいつら、俺を一切信用していねぇ……。


「だってそうじゃないと監禁なんてしないからね」


「和真のことは好きだけど、それとこれとは話が別よ。アンタは養ってもらうためなら、手段を選ばないところがあるんだから……」


 くそっ、ぐうの音も出ないことを言いやがって。

 流石幼馴染だけあって、俺のことをよく理解してやがる。


「で、どうなの? カズくんは舞白ちゃんになにかしちゃったのかな?」


「舞白は胸が大きいものね。和真も男の子だし、誘惑に負けちゃったのかもしれないけど、アタシたちも中々のものだと思うけど?」


 若干黒いオーラを出しながら、幼馴染たちが迫ってくる。

 そのあまりの迫力に一瞬ビビりそうになるも、すぐに俺は反論する。


「ま、待て! 俺が廊下に出た時、舞白は電話をしていたようなんだ」


「電話?」


「ああ。ホラ、そこにスマホが落ちてるだろ? 誰かに電話をかけたくて、わざわざ二階まで上がってきたんじゃないか?」


 舞白のスマホを指差すと、ふたりも釣られるように視線を向ける。


「……確かに。これは舞白ちゃんのスマホだね」


「でも、それはそれで変じゃない? 別に電話なら下でも出来るんだし。アタシたちにも聞かれたくない話だったってこと?」


 アリサの疑問ももっともだろう。

 俺だって事情を知らなければ首をひねっていたところだ。


(まぁだからって真実を伝えられるわけないんだがな。絶対ややこしいことになるだろうし)


 知らなかったとは舞白の電話相手が俺であったことは事実だし、そのことがバレたら俺が舞白を誘ったと考えるには十分すぎる証拠になるだろう。

 となれば、舞白には口裏を合わせてもらう必要があるな……。


「……あのー、皆さん。推理するのは結構ですが、そろそろマシロセンパイを運んであげませんかぁ。いつまでも廊下に倒れたままじゃ、ちょっと可哀想ですよぉ」


「「あっ」」


 ルリに指摘され、俺たちは慌てて舞白を抱き起すのだった。


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