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この後起こることは、もうお分かりですね?

「ふぅ……」


 廊下に出てひと息つく。

 ずっとしてみたかった友達との女子会だったけど、今の私はそれより想い人との会話を優先しようとしている。

 そのことに、少し罪悪感。なるべく早めにクズマくんとのお話を終わらせようと思いながら、音を立てないよう廊下を歩くけど、そこで私はすぐに気付く。


(……そういえば、どこで電話しよう)


 このまま廊下でっていうのは、良くないよね。リビングまで話し声が届いちゃうかもしれないし、雪菜ちゃんたちが様子を見にリビングから出てきたら、鉢合わたとき凄く気まずくまりそう。

 トイレは……なんかこう、気持ち的に嫌かも。好きな人と話す場所ではあまりないっていうか……。

 本当は外で電話するのが一番いいんだろうけど、トイレに行くと言ったのに家の外に出るのはどうなんだろう。それに恰好もパジャマだから、これで外に出るのはちょっと抵抗がある。

 となると……。


「二階、かなぁ」


 上に向かって伸びる階段の前で足を止める。

 二階には葛原くんの部屋があって、今そこに彼がいる。

 でも逆に言えば、彼以外はいない。ルリちゃんが見張っているから、雪菜ちゃんたちが上がってくることもないだろう。

 そう考えたら、電話をする場所としては最適なように思えてきた。


「少しだけ、少しだけ。五分だけお話するだけだから……」


 そう自分に言い聞かせ、音を立てないよう一歩づつ階段を上がっていく。

 やがて二階にたどり着くと、私は廊下の隅っこへと移動しスマホを素早く操作する。


「早く、早く……」


 画面に表示されているクズマくんの名前を見ながら、彼が電話に出てくれることをじっと待った。

 一回、二回、三回……機械的な電子音が、小さく廊下に響く。それを耳にするたびに、葛原くんに気付かれるんじゃないかと思ってしまい、心臓の鼓動も少し早まった気がした。

 でも、そんな些細な緊張感はすぐに霧散してしまう。


『はい、もしもし』


「! クズマくん!」


 彼の声を聞いた途端、一気に意識が持っていかれる。

 クズマくんのこと以外考えられなくなっていく。


『ハルカゼさん、ですよね。どうかしたんですか?』


「う、うん。あのね、ちょっとクズマくんの声が聞きたくなって……め、迷惑、かな」


『そういうわけではないんですが……』


 少し歯切れ悪くそう答えるクズマくん。

 ……なんだか珍しいな。やっぱり都合の悪いタイミングだったのかも。


「あの、なにかあったの? 駄目ならまた後でも……」


『大丈夫です。ただ、ちょっと知り合いが何人か泊まりに来てて、あまり大きな声を出せないっていうか……』


 知り合い? クズマくんの友達かな。

 考えてみれば今日は土曜日だし、クズマくんは高校生だ。

 休みの日に友達が泊まりで遊びに来ていても、不思議ではないよね。

 クズマくんの性格の良さを考えたら、友達はたくさんいるだろうし。


「そういうことだったら、やっぱり今日は辞めておくよ。クズマくんも友達と遊びたいだろうしね」


 少し、ううん、かなり残念だったけど、ここは素直に引くことを決める。

 クズマくんにはクズマくんの事情や生活があるんだし、私のワガママを押し付けて自分勝手な人だなんて印象を与えたくはなかったからだ。


『いえ、本当に大丈夫ではあるんですよ。俺は今二階にいるんですけど、知り合いたちは一階に寝る予定で一緒の部屋で過ごす予定はありませんから』


「そうなの?」


『ええ。まぁ、部屋に来るかもしれないのであまり気を抜けない感じではあるんですが……』


「…………?」


 なんだか少し引っかかる言い方だなぁ。

 もしかしてクズマくん的には、友達が部屋に入ることをあまり歓迎していないのかな?

 でも友達を部屋に入れたがらない理由なんて……あっ!


「そ、そっか! クズマくんも男の子だもんね! 見せたくなくて隠しておきたいものとか色々あるよね!」


『……? そりゃまぁないこともないですけど……』


「大丈夫! お姉さんは何も聞かないから! 私は理解のあるお姉さんなの! だから安心して! クズマくんのプライバシーはちゃんと守るからね!」


『はぁ……』


 そ、そうだよね。クズマくんだって思春期なんだから、そういうのは色々持ってるはずだよね。

 でも他の女の子でそういうことをするクズマくんはちょっと嫌かも……そうだ! 今度出る私のグラビア写真集をプレゼントしてあげれば好感度が上がるんじゃ!

 私のことも意識してもらえてまさに一石二鳥……って、駄目だよ! それは流石に恥ずかしすぎるし絶対無理! なに考えてるの私ー!


「あうあうあう……」


『あの、ハルカゼさん? さっきからなんだか様子がおかしい感じがするんですけど、どうかしましたか? もしかしてまた例のクズのことでなにか……』


「な、なんでもないの! と、とりあえず少しだけならお話出来るってことでいいんだよね!?」


 変な妄想をしてしまった恥ずかしさから、つい大きな声が出てしまう。


『ん……? なんか廊下から声がしたような……』


「クズマくん、返事は!?」


『あ、はい。出来ます大丈夫です……気のせいだよな、多分』


 クズマくんはまだ何か考え事があるみたいだけど、今はとにかくさっきまでの考えを忘れたくて仕方ない。とにかく話を続けることにした。


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