チョロい巨乳お姉さんが嫌いな人はいないよなぁっ!?
そんなことを考えていると、また王様ゲームが始まるようだ。
突き出されたクジを素直に引き抜き、番号を確認する。
(一番、か)
今回も王様ではなかったか。ま、運任せならこんなもんだろう。
周りのみんなも各々自分のクジを確認している。
「あ、私が王様だ……」
やがて呟くようにそう言ったのは、舞白だ。
どこかほっとしているようにも見えるのは、さっきのように自分が被害に遭わずに済むと思ったからだろうか。
となると、舞白の出す命令は必然……。
「えっと、それじゃあ命令出すね。一番が二番にハグする……とか?」
ま、そうなるわな。
王様以外のふたりに命令を出すだろうことは読めていたが、また俺が指名されてしまったか。
「俺が一番だな」
まぁこういうのは運だし、俺以外のメンバーは全員女子だ。それも文字通りアイドル級に可愛い子ばかりで更に水着姿となれば、普通の男子からすればここで行われていることは罰ゲームどころかご褒美だろう。
「アタシ二番……」
ただし、俺にとってはそうでもないが。
恥ずかしそうに手を挙げるアリサを見て、背筋に一筋の汗がタラリと流れる。
(来るとは思っていたが、ついに来たか……)
断っておくが、別にアリサと抱き合うのが嫌と言うわけじゃない。
好感度を上げ過ぎて、ヤンデレスイッチが入るのが嫌なのだ。
俺と抱き合うことで俺を好きという気持ちが止まらなくなり、強引に部屋へと連れ込まれる……そんなバッドエンドが、簡単に想像出来てしまうから困る。
「そうか。まぁ王様の命令だし、ハグするか」
「え、ええ。命令だもんね。逆らえないんだから、仕方ないことよね」
俺のそばに寄ってくるアリサだったが、その顔は真っ赤だ。
ただ、口元だけは微妙にニヤけており、喜びを隠し切れていない。
罰ゲームとはいえ、俺と抱き合えることは嬉しいということなんだろう。
幼馴染たちに一生養って欲しい身としては、俺のことを好きでいてくれることは大歓迎ではあるのだが、ご褒美は出来るだけこっちがコントロール出来るものにしておきたいんだよな。
「あ、その前に舞白さんにちょっと聞いておきたいことがあるんだけど、いいかな?」
「え? あ、うん。いいけど。なに?」
そんな打算もあって、俺は舞白に問いかける。
「ハグっていうけど、それって正面から抱き合うやつなんですか? 後ろからっていうのもハグではあると思うんですけど」
「え? えーと……」
「アリサも恥ずかしそうにしてるし、あまり正面からっていうのも良くないのかなって。ホラ、やっぱりアイドルですし、アリサも胸が大きいから色々密着しちゃって良くないことになりかねないかなーと」
最近あまり披露する機会がなかったが、こういった交渉は俺の得意分野だ。
相手を丸め込むのは好きだし、今回の相手はちょっとポンコツが入った舞白。
アイドルという方向でつつけば、俺の意見に同意させるのは簡単なことだ。
「言われてみるとそうだね……ただ、それを言うなら私の時も遠慮して欲しかったんだけど」
「ひざまくらは明確に場所の指定がしてありますから。さっきのは容赦してください。というか、ひざまくらであれだけ恥ずかしがっていたんですからハグはもっと恥ずかしい思いをするって分かるでしょう?」
「う、うん。それはまぁ」
「ですよね。舞白さんは『ダメンズ』のリーダーで一番のお姉さんでもありますし、後輩に恥ずかしい思いをさせることを良しとする人には見えません。俺が後ろから抱き締めるくらいで済ませることを許してくれるくらいには優しい人だとも思ってますよ」
「そ、そうかな……? わ、私って、後輩に優しいお姉さんに見える?」
「ええ。勿論」
同時に、とてもチョロそうにも見えるがな。
そんな本音は無論表には出さず、俺は頷く。
「や、優しいお姉さん……えへ、うへへへへへ」
若干気持ち悪い笑みを浮かべて笑う舞白に、俺は確信を得る。
(うん、やっぱチョロいわこの人)
以前話した時から感じてたことだが、やっぱりこの人は相当なお人好しかつ手玉に取りやすい人らしい。
あんなに敵愾心を燃やしていたのに、たかが数時間一緒にいたらあっさり俺の話に耳を傾けるようになったのがその証拠だ。
(で、優しいお姉さんがキーワードね。うん、分かりやすい)
あとは頼りになるっていうあたりもポイントか?
ユニットメンバーである『ダメンズ』の後輩たちからの扱いが結構雑なのが影響しているのかもしれないな。
(まとめると頼りにされたがっていて、さらに優しいお姉さんだと思われたがっているって感じか。そんでゲームが得意でおそらくゲーム仲間の誰かから俺に対するアドバイスを受けていると……んん?)
ついでだから舞白に関する分析を進めたのだが、何か引っかかるものを感じる。
なんだろう、この条件に当てはまる人を、俺は知っているような気がするんだが……。
むぎゅっ
「ん?」
もう少しで答えが出そうだった時、後ろから不意に柔らかい感触がして、俺は思考の海から強制的に戻される。
「和真は……そんなに、アタシと抱き合うのが嫌なの?」
「アリサ……?」
「アタシは……嫌じゃ、ない。抱き締めてもらえるなら抱き締めてもらいたいって思ってる」
「…………」
「だってアタシは、和真のこと……嫌いじゃない、から」




