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初のダメンズ集合回がこんなんでいいのか……?

 だが、それよりも今やるべきことは……。


「アリサ」


「……なに?」


「バニー、良く似合ってるぞ。やっぱりアリサはスタイルいいんだな」


「え、あ。そ、そう?」


「ああ。髪色と相まってまるで妖精みたいだ。見ていてグッとくるぜ」


 妖精のバニーガールなんているんだろうかと自分の発言にツッコミどころを覚えつつ、俺はアリサをベタ褒めする。

 少しへこんでいるのが見て取れたからな。監禁云々は置いといても、この幼馴染が落ち込んでいる姿はあまり見たくない。

 この場はとにかく褒めてやるのが正解だろう。


「嫌だ、ちょっとほめ過ぎよ。よ、喜んでくれてるならそれでいいけど……」


 そしたら案の定、アリサは顔を赤くして目を逸らす。

 よし、どうやら上手くいったようだな。密かに胸を撫で下ろす。


「おにーさんおにーさん。ルリはどうです? カワイイですかぁ?」


「あ、うん。カワイイカワイイ。ルリもよく似合ってるぞ」


「あー! ちょっと適当ですよおにーさん。ルリのこともちゃんと褒めてください! ルリは褒められるの好きなんですー!」


 ポカポカと叩いてくるルリをなだめつつ、俺は横目でアリサの様子を確認する。

 ルリを若干適当に扱うことで、お前の方が特別なんだぞいうアピールをする腹積もりだったのだが、


(ありゃ、こっち見てないじゃん)


 いつの間に近付いていたのか、雪菜と話し合っているようだ。


「やったねアリサちゃん。カズくんに褒められたよ。やっぱりバニーを着て正解だったね」


「え、ええ。そうね。うん、褒められちゃった……」


「ふふっ、これでカズくんの気分が良くなってくれたなら儲けものだよ。この前話したように、カズくんには監禁をいいことだって思わせなきゃいけないもの」


「上手く出来たら、そのまま私たちのモノになってくれるかもだしね。ルリたちがいるのはあれだけど、駄目で元々。やれることはやりましょうか」


「うん、頑張ろうねアリサちゃん!」


「きゃっ! ちょっと雪菜、こんな衣装で抱き着かないでってば!」


 嬉しそうにアリサに抱き着く雪菜。アリサは顔を赤くして恥ずかしがっているが、あまり力を込めてる様子はない。無理矢理引き剝がすほど嫌がってはいないのは、やはり仲のいい幼馴染だからということなのだろう。それはそれとして言ってることは恐ろしいから困るんだが。


(うーん、こうして見ている限りでは眼福ではあるんだがなぁ)


 とりあえず目の前の光景に気を緩めてはいけないのは確かだろう。ここは一度改めて気を引き締めなおして……ん?


「ルリ。ちょっといいか?」


「はい? なんですおにーさん」


「ひとつ聞きたいんだが、あれはなんだ?」


 未だにポコポコこちらを叩いてたルリを引き剥がしながら、俺は部屋の一角にあるソファーへ指を差す。

 そこには体育座りでうずくまっているひとりの美少女がいた。


「うぅ、どうしてこんなことに……み、皆で楽しく集まるはずだったのになんで私、バニーなんて着ちゃってるのぉ。コスプレなんでコスプレしてるの? こんなの絶対おかしいよ……でも皆ノリノリで着替えちゃってたからダメなんて言えない雰囲気だったしぃ……もう心折れそう……」


 そう、『ダメンズ』のリーダー。春風舞白である。

 雪菜たちのインパクトが強くて気付かなかったが、彼女の恰好もバニーガールだ。

 なので舞白も今日のリハーサルのために連れて来られたことは間違いない。間違いないのだが……。


「ていうか、監禁ってなに? お泊り会はどこ? 雪菜ちゃんたちはなにをしようとしているの? 葛原くんに貢いでいるってだけじゃなく、そこまで進んでいたの? と、止めないと。私が『ダメンズ』を救わないと。リーダーだしお姉さんだし、私が、私がなんとかしなくちゃ。でもこれってもしかして、もうスキャンダルの真っ最中なのかな? え、手遅れ? そんなぁ。説得するって決意したのに、こんなの無理だよぉ。いくらなんでも展開が斜め上すぎて、こんなのどうすればいいのぉ。助けてクズマくぅん……」


「うわ、こわ……」


 さっきからああしてずっとひとりでぶつぶつ言いっ放しだったりする。

 話しかけられる空気ではとてもなかった。


「なにって、マシロセンパイですが。バニー姿カワイイですよねー」


「それは否定しないが、なんで舞白がいるんだよ。明らかにあの人だけテンション違うぞ」


 バニーなのが逆にシュールさに拍車をかけてるし、なんなら負のオーラまで出している。

 容姿はともかく、ここにいるには空気があっていないというか、場違いな存在であるのは明らかだ。


「とっておきの人がいるって言いましたよね? それがマシロセンパイですよ。同じ『ダメンズ』のメンバーで、かつリーダー。誘うにあたって何の問題もない、まさにうってつけの人材ってやつです」


 言うほどうってつけか?

 明らかにこの場の流れについていけてないし、めっちゃ浮いてるぞあの人。ついでに膝抱えているからおっぱいも浮いてるし。


「何の問題もないって言うけど、あの姿を見たら問題しかないように思えてならないんだが」


「だってあの人友達あまりいないみたいで、休日は暇を持て余してるみたいですから呼べばすぐ来るんですよ。今日も『ダメンズ』の結束力を高めるためにメンバー全員でお泊り勉強会をしましょうって提案したら、ウッキウキで頷いてくれましたし」


「お、おおぅ……そうか……」


 すげぇ世知辛い事情を聞いてしまった気がして、俺は思わず目をそらす。

 俺より年下のやつがにこやかに先輩のことをぼっち扱いするとか、なんでこうも居たたまれない気持ちにならないといけないんだろうか。


「まぁここに来るまでの間に事情を説明したら、ドンドン青い顔になっていったんですけどね。おにーさんの家に来る頃には魂抜けてたので着替えさせるのも楽でしたよ。理解のあるセンパイに感謝です」


「青い顔になった時点で本人的には理解を通り越して絶望してるだろそれ」


「まぁ一応ユニットの一大事なわけですしね。リーダーとしての責任感があるみたいですし、自分がなんとかしないとって思ってるんじゃないですか?」


「すげぇ他人事のように言うのな」


「実際他人事ですし」


 しれっとそんなことをのたまうルリ。

 涼しい顔をしている辺り、ガチで自分には関係ないと思っているんだろう。

 少なくともルリからは舞白に寄り添おうという気配が一切感じられない。

 事情をついさっき知ったばかりなら気が動転するのも当然だと思うが、中々不憫な人である。


「……お前、将来大物になると思うぞ」


「? そんなの当然じゃないですか。そうなったらおにーさんにたくさん貢いであげますね」


 なんとも有り難いことを言ってくれるが、違うそうじゃない。今はユニット仲間との友情を優先して欲しいんだが。


(まぁルリに皮肉が通じるとは思ってなかったけどさ。となると後は……)


 俺はチラリと幼馴染たちの方に目を向ける。


「とりあえず今はバニーだけど、夕飯の時はどうしよっか? 裸エプロンの方がいいかな?」


「え、ちょっと、無理! そんなの絶対無理だから! そもそも料理はちゃんとした服を着ないと駄目よ、危ないし!」


「むー。アリサちゃんは真面目すぎだよぉ。それくらいしないとカズくんはきっと反応してくれないよ」


「真面目じゃなくて当然なの! それに、脱ぐのはその後って決めてたし……」


 ……うん、まるで舞白を気にしてないな。あの様子だと当面時間がかかるだろう。

 ふたりに期待するのは辞めておいた方が良さそうだ。


「やっぱ俺が動くしかないか……」


 俺は一度ため息をつくと、ルリから離れて舞白の方へと足を向ける。

 どうも嫌われているらしいことは分かっているので気は進まないのだが、他に話しかけられるやつがいないのだから仕方ない。


「あ、おにーさん行くんですか。頑張って励ましてあげてくださいねー」


 背後から呑気な声が聞こえたが、当然無視した。

 なんか最近スルースキル上がりっぱなしだな、俺。


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