連絡先を交換……?あっ(察し)
「あー、疲れたー」
ルリたちとの話し合いが終わり、帰宅した俺は自室のベッドに身体を投げ出していた。
「あの場では頷きはしたけど、やっぱ怖いもんは怖いな……」
半ば言いくるめられる形になったことはいいとしても、時間が経つにつれて不安が増してきているのは確かだ。
(気晴らしにゲームでもするかな)
こういう時は気分転換するに限る。
そう思い立ち、ベッドから起き上がろうとしたのだが、
「ん……なんだ、電話か」
ポケットに入れていたスマホが振動し、着信を伝えてくる。
迷惑電話だったら嫌だなと思いつつ、スマホを取り出し画面を覗くと、知っている人の名前が表示されていたため、すぐさま通話ボタンをタッチし耳に当てる。
「はい、もしもし」
『あ、クズマくん? 今、大丈夫かな?』
「勿論。大丈夫ですよ、ハルカゼさん」
聞こえてくるのは透き通るような綺麗な声。
いつ聞いても心地よいそれは、ゲーム友達のハルカゼさんの声だ。
『良かったぁ……あ、でもごめんね。いきなり。本当はボイチャの方が良かったんだろうけど、今はまだ外にいて、帰るのちょっと遅くなりそうだから……』
「いえいえ、構いませんよ。いつでも連絡していいって言ったのはこっちですしね」
ハルカゼさんとは以前相談に乗って以降、電話番号を交換していた。
彼女の後輩がタチの悪い幼馴染に絡まれているとのことで、なんとかしたかったハルカゼさんは本人に直接接触したりもしたようなのだが、やはり不安は大きかったらしい。
弱音を漏らすハルカゼさんを安心させたかったし、このまま相談に乗り続けるにしてもゲームを通してのチャットだけでは不都合も多い。
時間が合わなかったら話すことすら出来ないわけだしな。それでは良くないと考えた俺は、互いのリアルでの連絡先を教え合わないかと提案し、今に至ったというわけだ。
『そう言って貰えると、本当に助かるよ。こんなこと、クズマくん以外に相談出来ないから……』
「気にしないでくださいっていつも言ってるじゃないですか。ハルカゼさんは何も悪くないんですから」
安堵のため息を漏らすハルカゼさんを優しくなだめる。
実際、この人は何も悪くない。悪いのは後輩からお金を取っているというクズ男だ。
そいつはかなりタチの悪いやつであるようだし、ハルカゼさんが不安に思うのは良くわかる。
『ありがとう、クズマくん。そう言ってもらえると、本当に救われるよ……』
「いえいえ。で、今日はどうしたんですか? なにか進展でもありました?」
『あっ! そう、そうなの! あのねあのね! 実は今度、後輩の子たちとお泊り会することになったんだ!』
「え、そうなんですか?」
『相談してた子たちとは別の子なんだけど、その子が雪菜……ううん、後輩の子たちと私のことを誘ってくれたの。たまには親睦を深めませんか? って。皆と仲良くなれるチャンスだし、すぐに飛びついちゃったよ』
ハルカゼさんは本当に嬉しそうだ。これはどうやらお泊まり会に誘われたのが、よほど嬉しかったと見える。
「へぇ、そりゃ渡りに船って感じですね」
『えへへ……その、普段はね、仲が悪くないわけじゃないんだけど。それでもやっぱりどこか仕事上の付き合いっていう感じもしてたから……今回のお誘いは、本当に嬉しいんだ』
「誘われたってことは、ハルカゼさんはちゃんと慕われていたってことですよ。仲良くなりたいと思ってないとそんなこと言われないでしょうしね」
『そ、そう? そうかな……そうだといいな』
俺の言葉を噛みしめるように何度も呟くハルカゼさん。
この感じだと、やっぱり不安は大きかったんだな。日頃からストレスが溜まりそうな性格であることはよく知ってるし、ここで俺がやることはひとつだ。
「ええ、大丈夫ですよ。自信を持って下さい。今のハルカゼさんに足りないのは自信です。誠実に接すれば、きっとハルカゼさんの話を聞いてくれるはずですよ」
『う、うん。私、やってみる。お泊り会で、後輩の子たちをなんとか説得してみる! すぐ人を騙すクズみたいな幼馴染なんかとこれ以上付き合っちゃ駄目だって、ハッキリ言う!』
「頑張ってください! クズ野郎から引き離すんです! その子たちを救えるのは、ハルカゼさんしかいませんよ!」
『うん! 頑張るよ! クズマくんにも絶対いい報告してみせるからね!』
俺の応援を受け、いい返事をするハルカゼさん。これならきっと大丈夫だろう。
そう確信した後はそのまま雑談へと移行する。
「それで、今度発売するゲームなんですが、中々面白そうな新機能が追加されるみたいで……」
『そうなの? 知らなかったよあ。最近は忙しくてあまりチェック出来てないなぁ。教えてれてありがとう、クズマくん』
「いえいえ、どういたしまして」
あー、やっぱハルカゼさんはこうでないとなぁ。癒されるわぁ……。
ここ最近のあれこれを忘れさせてくれる癒しのひと時を、俺はしばしの間満喫するのだった。




