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なんで君らそんなに監禁する気満々なの?

 スゥッと。頭の奥が冷えていくのを感じた。


「ちょっと雪菜。それどういうこと? 確かなことなの?」


「落ち着いてアリサちゃん。本当のことだよ。私、直接カズくんから聞いたもん。今日はお仕事が早く終わったからお昼休みの時間から学校に行ったんだけど、そうしたらカズくんが一之瀬さんとその話をしていたんだよ」


「そんな……嘘でしょ……」


 まさか、和真に告白する子がいるなんて。いいえ、それ以前に、あの和真を好きになる子がいるなんて。


「ダメよ、そんなの」


 ポツリと口から出てきたのは、まごうことなくアタシの本音そのもの。

 小さな、だけど確かな決意のこもった呟きだ。


「和真はアタシがついていないとダメなの。他の子に和真の面倒が見れるわけがないわ。小さい頃からずっと一緒で、ずっと面倒を見てきたのよ。ずっとずっとずっと。アタシがずっと和真の近くにいたんだもの。いつの間にかダメ人間になっちゃったけど、それでもアタシがついていればきっといつかはまともなやつになってくれるはずなの。他の子とくっついたりしたら、アイツのことを甘やかしちゃってますますダメ人間になるに違いないわ。そんなの、幼馴染として見過ごせない。和真にはアタシがいないとダメなの。だっていうのに、よりによってアタシがいない間に告白するなんて……! アタシのほうが、ずっとずっと先に和真のことを好きになったのよ? それを奪おうとするなんてダメよ。そんなの卑怯じゃない。和真が付き合うことになるなんて思ってないけど、するならせめてアタシが学校にいるときにすべきじゃない。それが出来る勇気がない時点で、告白なんてしたらダメよ。アタシが和真を譲るはずがないのに、それでもアタシから和真を獲ろうって考えてたわけでしょ。なら、もっと正々堂々とすべきじゃない。それが出来ない子に、和真を譲れるはずがないわ。和真はアタシがついていないと絶対ダメなんだから……!」


 そのままつい本音が漏れ出てしまうけど、これに関しては仕方ない。

 だって、和真が悪いもの。告白されたなら、アタシにまず報告すべきじゃない?


「和真の馬鹿……なんでアタシに言わないのよ……!」


 もしかして、これまでも似たようなことが何度もあったんだろうか。

 何度も何度も、誰かに告白されたりしたのだろうか。

 何度も何度も、アタシは他の誰かに和真を奪われそうになっていたんだろうか。


「そんなの、そんなのって……」


 許せない。和真はアタシたちのモノなのに……!


「アリサちゃん」


 思考がドンドン深いところに傾きかけていた時、不意に身体が温かい感触に包まれる。


「そんなに怖い顔しちゃダメだよ。アイドルが台無しだよ」


「だって、だって……」


「今度は不安そうな顔してるね。大丈夫だよ、落ち着こう。私がついてるから。ね?」


 頭をポンポンと優しく叩いてくる雪菜。

 昔から、この子はいつもそうだ。私が泣きそうになっていると、いつの間にか寄り添ってきて、抱き締めてくるんだ。


「でも雪菜、和真が……」


「大丈夫。カズくんは私がクズに育ててあげたんだから。カズくんの性格を知ったら、大抵の子はすぐにドン引きして離れていくに決まってるよ」


「うぅ、確かにそうだろうけど、でも……」


「私たちはカズくんの一番近くにいるんだよ。私たちが誰よりカズくんのことを知っているし、理解してるって、もっと自信持とうよ。私たち以上にカズくんを好きな子なんていないんだから」


「……うん」


 雪菜にそう言われて、少し気持ちが楽になったのを感じる。

 確かにそうだ。あの和真とずっと付き合える子なんて、アタシたち以外にいるわけないもの。


「それに、そんな不安を解消するために監禁するんだよ。そのことは忘れてないよね?」


「ええ。勿論」


「なら、今回のことはチャンスだよ。夏休みまで待たないといけないって思ってたのが、もっと早くなったんだもの。二日しかないけど、その間にカズくんをメロメロにしちゃえばいいんだよ」


 雪菜の囁く声が耳にかかる。それはとても蠱惑的で、同時にとても魅力的な提案だった。


「カズくんがなにを考えていようが関係ない。私たちが力を合わせれば、きっと無敵だよ。協力して、カズくんを監禁の虜にしよう? そうすれば来月の本番で、もっとカズくんと仲良く出来るはずだよ?」


「そう、そうよね……うん、間違いなくそうだわ」


 逃げようとしようがなにか考えがあろうが関係ない。

 結局は手に入れてしまえば全部解決するのだ。なら、迷う必要だってないのだ。


「やりましょう、雪菜。和真を絶対手に入れるのよ」


「うん! 勿論だよアリサちゃん!」


 満面の笑みを浮かべる雪菜と手を取り合い、アタシたちは決意を新たにする。

 その時。


 ヴヴヴヴ…………


「雪菜、スマホが鳴ってるわよ」


「あ、うん。そうだね」


 スマホが鳴ったので教えてあげると、絡めていた手をほどいてスマホを操作する雪菜。

 タイミングが悪いわね、なんて思って見ていると、雪菜が大きく目を見開いた。


「ア、アリサちゃん。あの、ルリちゃんからメッセージが届いたんだけど……」


「え?」


 珍しく慌てた様子でスマホを突き出してくる雪菜。

 でも、慌てたのは雪菜だけじゃない。


「こ、これって……!」


 画面を覗いた次の瞬間には、アタシも同じように目を見開いた。


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