泥船の間違いじゃないですかね……
「お? 前向きに考えてくれるつもりになりました?」
「一応な。ただし、ある程度の安全マージンが確保されていることが前提の話ではあるが」
流石に身一つで監禁されるのは御免被る。なにかあってもすぐに助けが入るという確信がないと絶対無理だ。
そんな俺の考えを見越したのか、ルリは笑顔で頷くと、
「勿論です。安心してください、監禁されるときはルリも一緒です」
「え? 一緒?」
「はい。というか、こんな面白……大変なことを見過ごせるわけないじゃないですかぁ。おにーさんとはキスもした間柄ですし、ルリたちはもう一蓮托生ですよぉ」
「無理矢理だけどな。あくまで無理矢理」
思い出を美化されて脳内変換されてはたまらないのそこは強調しておく。
「おにーさんは相変わらずいけずですねぇ、そこがいいんですが。まぁ冗談はともかくとして、ルリだってまだ『ダメンズ』でアイドルを続けたいんで流石に監視役は必要かなと。おふたりがおにーさんを好きすぎるあまり、暴走するという可能性はゼロではありませんからね」
「それは確かに」
ゼロどころか結構な確率で暴走しそうだからな。
というか、暴走しないようなやつはそもそも監禁するだなんて発想からして出てこないだろう。ふたり揃って俺のことを自分のモノにしたがっているなら猶更だ。
「分かっていただけましたか。今回は流石にある程度真面目にやるつもりですよ」
「……本当だろうな?」
ルリは面白いことを優先する傾向がある。さっきの発言もそうだが、その場のノリで動くところがあるから、こっちとしてはイマイチ信用出来ないのは確かだ。
そんな俺の考えを読み取ったのか、ルリは一度肩をすくめると、
「おにーさんは疑り深いですねぇ。今回はちゃんと考えがあるんです。ルリも一緒に監禁されると言いましたが、ルリひとりだけとは言ってませんよ」
「ほう?」
それはつまり、他にも誰か監視役で巻き込むということか。
「相手はセツナセンパイとアリサセンパイですからね。おふたりのことはよく知っているつもりですが、流石にふたりとあっては監視の目が行き届きません。人数がいるに越したことはないでしょうからね」
「いいアイデアだと思うが、念のために言っておくとここにいるふたりは多分使えないぞ。夏純は雪菜たちとは関りがちょっと薄いから参加したら不自然だし、一之瀬は対抗心から悪ノリに走りそうだからな」
俺がそう言うと、近くから「うぐっ」とか「そんなことはありません、いいからキスしてください」とかいう声が聞こえてきた気がするが、そこは無視する。
少なくとも今回はロクに頼りになりそうにない奴らに意識を割いても仕方ない。
「ふふーん。そこは大丈夫です。今回の件にうってつけの人がいますから。ルリが誘えば一も二もなく話に乗ってくれるはずですよ」
「それならいいんだが……てかソイツ、頼りになるんだろうな?」
「うーん、頼りになるかというとイマイチ頼りないんですが……まぁいないよりはいいかなって。あと誘わないと後でいじけそうですし」
「えぇ……」
そこは嘘でも頼りになると言って欲しかったんだが。
いじけるとか言われたら信用なんてまず出来んぞ。
「まぁ大船に乗ったつもりでいてください。おにーさんは話を合わせてもらえれば、あとは全部ルリがなんとかしてみせますから」
自信あり気に胸を叩くルリを、思わずジト目で見つめてしまうのも無理はないと思う。
(すっげー不安だ……)
本当に大丈夫なんだろうな、おい……。




