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クズにクズって言うのは当然だよね

※申し訳ありません、設定を変更する必要がありましたので書き直しをさせて頂いております。



「聞き方、ちょっとミスったかもしれん……」


 告白を受けてから十分後。自分のクラスに戻った俺は昼飯を食いながら、これまた自分の席で少し悩んでいるところだった。


「ミスったってなにをでしょうか、ご主人様」


 そんな俺の嘆きに質問を投げかけてくるのは、対面に座るメイドの一之瀬だった。

 俺をご主人様と慕う彼女は、クラスに戻ってきた俺に甲斐甲斐しくも弁当を差し出すためにやってきたのである。


「もしかして、うちのシェフが味付けをミスしたのでしょうか。それなら後でキツく言っておくのでお任せください。つまみぐい出来る口実にもなるのでモーマンタイです」


「いや、別に味に文句はないから。それはしなくていいぞ、シェフの人可哀想だし」


もっとも、この発言の通り別に一之瀬の手作り弁当というわけではないのが若干あれではあるんだが。

 正真正銘のメイドではあるのだが、一之瀬が自分で弁当を作ってきたところを見たことがない。


 まぁ家にシェフがいるのならそりゃ作る必要がないんだろうが、なんとなくメイドさんといえば料理も上手みたいなイメージがあったため、ちょっと肩透かしな部分があるのは否定出来ないのは確かではある。


「ほほう。では他になにかあったと? 教室に戻ってくるのが遅かったことに関係あるのでしょうか?」


 そんなことを考えると、一之瀬が首を傾げ、追及するように聞いてくる。

 一瞬答えるかどうか悩んだが、ヤンデレ気味な幼馴染たちならともかく、コイツになら隠す必要もないだろう。素直に話すことにする。


「ああ、実はさっき告白されてきたんだが、相手の女の子泣かしちゃってさ。少し反省しているところなんだ」


「…………ほう?」


ため息交じりにそう話すと、何故か一之瀬はすぅっと目を細め、


「告白とは誰が、誰にでしょうか?」


「俺以外にいないだろ。後輩の子に呼び出されて好きだって言われてきたんだよ」


ちなみにその子は俺を養ってくれるかどうか聞いた直後、『お金稼いで出直してきますぅっ!』と言い残し、走り去っていった。

ポジティブな捨て台詞を残していくあたり、大変ガッツのある子だし、将来有望と言っていいだろう。

 この先いくら貢いでくれるか楽しみである。それまでに俺が幼馴染たちの手によって監禁されていなければの話ではあるんだが……。


「あり得ません」


しばし思いを馳せていると、何故かやれやれと首を振り、断言してくる一之瀬。


「は? なんでだよ」


「いいですかご主人様。ハッキリ言いまして貴方はクズです。それもただのクズではなく、超弩級のガチクズです」


「すげークズクズ言うじゃん」


 ここまでクズって連呼されること普通あるか? それも面と向かって。

 分かっていたがこのメイド、やはり並の神経をしていないな。


「事実ですので。高校生でクズとしてここまで仕上がっている方はそうはいないでしょう。だからこそわたしも惹かれたわけですが、とにもかくにもご主人様がモテるというのはおかしな話なんですよ」


「なんでだよ。俺は頭脳明晰運動神経抜群のイケメンなうえ、この前の球技大会でも大活躍した男だぞ。惚れる女子がいたとしても何の不思議もないだろうが」


「確かにあの時のご主人様が格好良かったことは認めましょう。容赦のない精神攻撃をしたり、相手の弱みに容赦なくつけ込むあの姿勢。惚れ直したのは確かです」


「フッ、そうだろうそうだろう」


 褒められて悪い気はしない。一之瀬は美少女だし、気分が良くなるのは当然のことだ。


「ですが、それとこれとはまた別の話です。だって普段のご主人様はクズであることをまるで隠していませんし」


「むっ……」


「いくら吊り橋効果で好きになったとしても、時間をおけば普通の人はあれ? この人のこと格好いいと思ってたけどなんか違うな? と思うものなのですよ。アクション映画を例に出しますが、主人公が大活躍してヒーローとして終わっても、それはあくまで緊急時におけるその人のいち側面に過ぎません。日常に戻ればただの人になり、悪い面も見えてくるのが当然というものです」


 要は常に自然体でいるのにモテるのはおかしいと、一之瀬は主張したいというわけか。


「ふむ、なら反論してやろう。いいか一之瀬。お前の主張は間違っているところがある」


「間違い、ですか。至極真っ当なことを述べたつもりなのですが……」


「確かに吊り橋効果で惚れたところで、時間を置けば冷めるというのは確かだろう。お前の言うことにも一理ある」


が、人間ってやつは、そんなに単純なものでもない。


「でもな一之瀬。映画が始まる以前に、ヒーローに惚れたヒロインがいたらまた話が変わってくる。それも、そのヒロイン以上の美少女。それも複数いて、ヒーローを好きだと公言していたなら、な」


「…………!」


 目を大きく見開く一之瀬。

 自分の主張が間違いであることに気付いたのだろう。俺は大きく頷き、そして告げる。


「俺はアイドルをやっている幼馴染たちに既に貢がれている。アイドルに貢がれているような男なら凄いところがあるはずだと当然思うだろう。あとは目に見える結果さえ残せば、自然とそいつのことが魅力的に見えてくる。世の中っていうのは、そういうものなんだよ」


 まず前提が違うのだ。俺に告白してきた子たちは、球技大会で活躍したから惚れたというわけではないだろう。

 俺が幼馴染たちに貢がれていることは以前から噂になっていたし、潜在的に俺に興味を持っていた女の子は少なからずいたはずだ。

 『ダメンズ』みたいな人気アイドルに貢がれるほど好かれる男子。その人は、一体どんな人なんだろう、ってな。


「いいか一之瀬。この世界はな——モテるやつがモテるように出来ているんだよ」


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