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阿武隈の狼  作者: 平良中
-第二部- -第三章- 旌旗奔流
153/243

-第百五十三話- 娘達、旅立つ

1585 天正十三年 晩秋 厩橋


 「おん 阿謨伽あぼきや 尾盧左曩びろしゃな 摩訶母捺囉まかぼだら 麼抳まに 鉢納麼はんどま 入嚩攞じんばら 鉢囉韈哆野はらばりたや うん!」


 上野は厩橋から北西にちょっと馬を走らせた場所にある放光寺。

 随風和尚の声が晩秋の上野の風に乗って行く。


 今日はここで業棟なりむねの葬儀が行われている。


 柴田業棟。


 越後の山奥で生まれ育った母上が棚倉へ嫁ぐにあたり、北越後の山里で暮らしていた柴田の一族は総出で伊藤家に仕えてくれることとなった。業棟はその一員として伊藤家に仕えるようになった人物である。


 柴田の一族は平家に仕えた者のうち、越後山脈の山村に落ち延びた系譜であるという。

 時代が下り、鎌倉平氏の流れを汲む越後長尾家と近くなり、その縁を以て一族の娘が長尾為景の側室の一人に収まり、その間に生まれたのが母上ということらしい。

 母上と業棟は年が近かったこともあり、実の兄妹のように育ったということだ。


 「太郎丸……人はいずれ老いて死ぬ。……逃れられぬ定めとはいえ、身近なものがいなくなるのは耐えられないものですね。婆は既に何人も親しい人との別れを経験してきましたが……ああ、また一人、愛する人がいなくなりました……」

 「母上……」


 母上、景文院様は寂し気な顔をしてそっと俺を抱き寄せる。


 「太郎丸が羽黒山で逝った時、その後に旦那様が太郎丸を追った時、これ以上の悲しみを感じることはないのだろうと思っていたのですが……生まれた時より一緒だった業棟殿が逝かれた今回は、また別の悲しみを感じます」

 「母上……」


 業棟も七十五を超えてのことだったので、この時代ではまれな長寿であったというべきであろうが……身近な人物の死というのは、その人物が何歳であれ、心に重く、何かしらを感じてしまうものだ。


 「母上……」


 気落ちする母上を元気づけるよう、俺はぎゅっと……軽く母上を抱きしめた。


 「お前の生みの母である真由美には申し訳ないですが、今は私を「母」と呼んでくれる太郎丸を有難く感じます」


 優しく俺を抱き返してくれる母上。


 ざざっ。


 「景文院様、太郎丸様、少々よろしいでしょうか?」

 「ええ、構いませんよ」


 掛けられた声に反応し、うるんだ眼をそっとぬぐい、俺を離して母上は応える。


 「申し訳ありませぬ景文院様。……別室で太郎丸様に相談したいことが有ると、両統領様がお待ちです。お越し頂けませぬか?」

 「太郎丸……こうして業平殿が呼びに来ているのです。婆は大丈夫ですから行ってきなさい」

 「……はい。わかりました景文院様」


 気落ちした母親を残すのも心苦しいものだが、一丸と中丸が呼んでいるというのなら行くしかあるまい。こうして業棟の嫡男である業平が呼びに来ていることだしな。


 「父上、どうぞ行ってきてください。景文院様には私が付いていますから」

 「そうか……頼む」


 って、瑠璃さんや。

 お前どこから来たの?そして、いつから居たの?


 末娘の驚くべき忍びっぷりにビビりながらも、俺は業平について行く。

 念仏が続いている本堂の脇、別棟の僧坊に入る。


 「父上、済みませぬ。お呼び立てをしてしまい……」


 そう言って頭を下げる一丸。

 俺の長男は礼儀正しいいい子である。


 「気にするな。で、どういう話だ?」

 「はい、昨日お話しさせて頂いたように、どうやら当家は日ノ本の筆頭武家として政の大筋を決めて行かねばならなくなったようで……」


 そう。昨日、古河に戻った一丸から開口一番、伊藤家による天下統一がなったことを聞かされた。


 京の連中への懲罰として軍を興したは良いけれど、考えてみれば全国の武家を糾合して連合軍結成。

 京への進軍も、軍記物的な表現をするのなら「上洛軍」だよな……そりゃ天下統一の流れとなるのもしょうがないんだよね……言われてから気付いたよ、そのことに。


 「ついては上様や大御所様の構想を元に、今後の大筋を練るべく、実務をこなす私の下で働いてくれる者達を探しに参ったのですが……」

 「業棟は病に倒れ、亀岡斎、鶴樹の大叔父上たちも病床厚いので、古河での人事含め悩ましいということか……」

 「……お恥ずかしながら」

 「いや、業平が恥ずかしがることはどこにもあるまいさ。人は老いて死ぬ。悲しいがそれが自然の摂理よ、と先ほども景文院様と語っていたところだ……だからといって、残された者達としても指をこまねいていてはいられぬことも確かか……」


 いやいや、歴史を眺めるに、どの時代の君主もことあるごとに「人が足りぬ」って言うのは本当のことなんだよな。

 本当に人材が足りないよ。

 特に「信頼置ける」っていうところがミソだよな。


 言うても畿内の人材とかも使えれば、数の上と能力の面では足りるだろうけど、中々心情的なところではねぇ。やっぱり長年の信頼関係が出来た人物を使いたいのは人の性。


 「う~ん。……こういう時は原則というか根本というか、話の元に戻ってみるのが近道だよな。うん、よし、一丸」

 「はい、何でしょうか?」

 「お前が欲しい人材にはどういった仕事を割り振るんだ?お前の補佐だとして具体的には?」

 「そうですね……私と周囲の伝達役、上様と大御所様との調整役、大友殿を初めとする領主たちとの連絡役、それらの情報を集めて来る役、私が相談できる役……」

 「……兵を率いる役目は要らないな?」

 「はい。それは要りません。もしもの時は私自身が兵を率いますし、もとより軍の編成には問題ありません」


 ならば良し。


 「これは確認だが、業平が古河を離れることは難しいんだよな?」

 「はい……父上は隠居して久しかった身ですが、やはり関東の柴田の長老としての役目は多岐に渡ります。以後は私が正式に引き継ぐことになりますが、古河での内政、一族からの情報の精査……申し訳ありませんが、今、古河を離れるのは家中にとって益になるとは思えませぬ故……申し訳ございませぬ」

 「いや、良いって。……忠宗、忠清のところも同じだよな?」

 「……そうですな。儂は今のところは健康ではありますが、業棟殿よりは年を食っておりますからな。今更、畿内にまで行って床に就きたくはありませんし、また、そうなっては景基様にご迷惑をおかけしてしまうでしょう。儂の兄弟連中も良い年ですし、忠清も六十を超えておりますからな……他の者達も奥羽と関東を行ったり来たりですし……」


 そうなんだよね。

 棚倉から北の各城は大体、安中の誰かに見てもらってるのが実情だからな。

 そこから人を引き抜くのは得策ではない。


 「中丸の近くはどうだ?」

 「勘弁してください、父上!俺のところも江戸の開発に鎌倉街道の整備と鹿島運河の件で手一杯です。兄上の状況も理解できますが、逆に俺の方が誰かの手を借りたいぐらいの状況です」


 はいはい。

 太郎丸君はわかってましたよ。


 「そうなると、身体の空いている者、一丸と畿内に赴く者は自然と決まるな?」

 「ま、まさか?」

 「父上が来ていただけるので?」


 え?


 「おお!それは有難い!正直なところ上様の案というのは非常に斬新で、私としては父上に間に入ってもらえれば非常にありがたいというものです!」

 「そうだな、兄上!父上ならば問題あるまい!」

 「左様ですな!太郎丸様なら、伊藤家の惣領。他家との交渉においても格としてこの上無し!」

 「「そうだ、そうだ!」」


 いや、違うよ?

 俺は関東から動かないよ?

 滅茶苦茶に妥協して、勿来から古河まで出て来たけど、これが限界だよ?


 「おお!では早速準備をせねば!」

 「これはあれですな。時間が掛かることも考慮して、傍仕えの梢にも連絡して飯盛山への旅支度をさせねば!」

 「おや?忠清殿、梢殿だけとはおずるい!ここは笙も連れて行ってもらわねば!」


 ま、まずい!

 皆が暴走している……!


 「ま、待て!待ってくれ!俺が行くとは行ってないぞ!!」


 精一杯の大声を出してみる。

 歴戦のオッサン武将相手に十歳の少年が注意を集めるには、命を削るほどの大声が必要なのです。

 あ~、なんか耳の奥がつ~んとするわ。


 「は、はぁ?では誰をお考えなのですか?」


 皆が一様に首を傾げる。


 「まったく……そもそも。当主と先代が揃って本拠を空けてるんだから、惣領の俺が関東を離れるわけには行かないだろ?だからだ……」


 きょろ、きょろ。

 お?僧坊の端にみっけ。


 「おい、瑠璃!逃げるな!……そう、お前だ、瑠璃。一丸の補佐として飯盛山城に赴いてくれ」

 「……あ、いやぁ……私はしがない若娘ですから……それにお婆様の補佐という仕事もありますし……」

 「新年を過ぎれば杜若と千代も古河に来て母上の仕事を手伝うのだろう?麻里姉上も正式に母上の仕事を手伝うようになると美月から聞いたぞ?」

 「え~!もう!なんで姉上はそういうこと父上に話しちゃうわけ?!」


 瑠璃さん御立腹である。


 「え?いや、普通は話するだろ?……だって、久しぶりに姉妹が揃うんだぞ?」


 末の妹の剣幕にドン引きの三女。

 まぁ、「末」と言いても同年には義の娘の彩芽がいるから、立場的には末じゃないけどね。


 「もう……そうじゃなくて……絶対に父上って面倒事を押し付ける相手を探してくるんだから……もう……」


 くっくっく。

 その通りだぞ、瑠璃さんや。

 流石は姉妹で一番俺の性格を把握している娘。


 「まぁ、そう怒るな。……俺と目が合って逃げ出そうとしたところを見ると、ウスウスは理解していたんだろ?」

 「……まぁ……ええぇ……はい」


 理解が早い娘を持って俺は幸せだね。


 「一丸の補佐だけじゃなく、姉上も気軽に相談できる女手は欲していることだろう。そっちも頼むぞ?」

 「おお!そうですな。大御所様も飯盛山城の暮らしには愚痴を言うておりましたし、瑠璃が来てくれるのは良いかも知れませんな」

 「あぁ~!……仕事増やされた」


 よし!

 一丸の賛成も得られた!


 「はっはっは、頼んだぞ!瑠璃!……そうだな、言うてもお前ひとりじゃ大変だろうから、蘭と彩芽も連れていったらどうだ?沙良には俺から連絡を入れておくぞ?」

 「……はぁ……わかりました。腹をくくりますか。……それじゃ、蘭姉上と彩芽は連れて行くとして……杏ちゃんと伏ちゃんにも声を掛けますか」


 む?

 義の娘は全員連れて行くのか?


 「ん?……ああ、大丈夫、大丈夫。こっちの体制に不備は無いようにはなってますから。……万事うまいことやっておきますよ。……ただ、一丸兄上が言っておられた「情報収集」?そっちは私では難しいので誰かを付けてくれると嬉しいです」

 「ふむ、そうか……情報収集……畿内でだと、丹波者に伝手がある者か……おお!商人の伝手でも良いか?」

 「むしろそちらの方が有難いです。丹波の草の者とか使える気がしませんからね」

 「では、ちょいと後で吉法師に貸し出しをお願いしてくる。中々の男前らしいからな、惚れるなよ?」

 「……うわ~、父上ウザい……」


 ウザイとか言うな!

 十歳の少年の心は傷付き易いんだぞ!


 って、ウザいとか誰が教えた言葉だ?

 ん?

 ん?……俺か……。


天正十四年 初春 飯盛山 伊藤瑠璃


 「瑠璃様!こちらの書類はどちらに?」

 「ああ、徳川家からの要望書?左側の棚に手前から積んでおいて!……って、違う違う!私から見て左側!反対、反対!」

 「瑠璃様!景貞様からの報告書は?」

 「大叔父上から?……もう、どうせ公家連中から来た訴えの却下一覧でしょ?今見ちゃうから渡して!……うん、問題なし。これはもう燃やしちゃっていいよ!」

 「瑠璃様!!……」

 「ああ、はいはい!」


 想像はしてたけど、何よこの忙しさ……。


 っていうか、一丸兄上もよくこんな量の仕事をこれまで一手に引き受けてきたわね。

 私だったら大御所様の元に怒鳴り込んでるに違いない!


 ここは飯盛山城の北の丸、一丸兄上の屋敷……というか伊藤家の畿内事務の執務所ね。この状況は。


 一丸兄上は年を跨ぐ前に尼子家と話を詰めて来ると、古河から飯盛山に戻って早々に出雲へ向かった。

 確かに、急がなければ大友の大軍が月山富田城と美保関を落としちゃうだろうけど……まぁ、私も大変だけれど、一丸兄上も大変だよね。

 父上が良く言う「過労死」にならなければ良いけれど。


 「瑠璃様?」

 「あ?!何??!!……って、あらいやだ。長政殿……おほほほ。何用でしょうか?」


 いけない、いけない。

 家族、親族ではない男前相手に怒鳴るのは得策じゃない。

 嫁に行く、夫を娶る、どっちもする気はないけれど、自分から男前の心情を悪くするものではないよね。


 「いや……堺から戻りましたので、ご報告にと……」

 「そうですか……それならば……」


 室内と机の上の書類の進み具合をちらっと眺める。


 ああ、これなら私が席を外しても問題ないか。


 「伏ちゃん!ちょっとここをお願いするね。長政殿の報告を聞いてくるから、戻るまでよろしく!」

 「わかったよ~。……けど、時間が時間だし、そのまま昼餉も二人で取っておいで~。私は瑠璃ちゃんが戻って来てから、杏ちゃんと勝手所に取りに行くから~」

 「んじゃ!任せた!」


 私は姉の伏ちゃんにそう言って椅子から立ち上がる。


 伏ちゃんは私の六つ上の姉。

 父上の側室である義さんの娘で、東国から一緒に来てもらった杏ちゃんとは双子の姉妹。

 六つ上と言っても、私より背は三寸ほど低く、顔立ちもかなり幼い。

 初対面の人は、まず間違いなく双子の姉よりも私の方を年長者として扱うだろう。


 だが、肉付きは私よりだいぶ女性らしい……解せぬ。


 「おや?如何なされましたかな?瑠璃様?……そう、胸を抑えられ……やはり腹が空きましたかな?先に昼餉でも……」

 「あ!いや、大丈夫!結構です!先に報告を聞きましょう!」


 がらっ!


 幾分荒っぽく応接室のふすまを開けた私。

 いかん、いかん。

 これでは、安中や柴田の兵達と同じじゃない……。


 「ふぅ……では報告を」


 応接室に設えられた、執務室の物よりもゆったりとした作りの椅子に腰かけ報告を受ける。


 ……

 …………


 「……というわけでして、三好の残党は紀伊の山奥に逃げ、補給もままならない状況であるため、近々消滅するであろうとのこと。また、阿波と讃岐に寄った三好一党も長曾我部の猛攻により見る影もない有様とのことです」

 「そうですか……では、堺の者達を初め、近隣の商人達は三好家との商いはしていないということですね?」

 「はい。商人達は秋の収穫物を使った取引が終わった段階で、一切の商いを取りやめたようです」

 「それはなんとも……三好家は風前の灯火だとはいえ、これまでには多くの商いをして来たでしょうにね……」

 「そうおっしゃらないで下さい、瑠璃様。商人達も怖いのです。……兵を持たぬ彼らにとって、武家の兵は怖いのです。常に一方的な搾取を受ける危険があるのですから」


 確かに一般的な商人はそうだろう。

 だけど、堺みたいにぐるりと堀で街を囲んだり、鉄砲を装備した警護兵を備えた街の者がそう言うのはねぇ?ちょっとだけ身勝手にも思えてしまう。


 ……まぁ、良いでしょう。

 人は人、ってね。


 「三好家についてはわかりました。他には?」

 「……そうですな。……ああ、そうそう。堺の町では瑠璃様を初めとした伊藤家の女性の装束が人気を博しそうですぞ?」


 私たちの装束?


 「はっはっは。そう不思議そうなお顔をなさいますな。……関東ではそのような「水兵服」でしたか?洒落た南蛮の装いも珍しくはないのでしょうが、やはり畿内ではまずもってお目に掛かることが有りませんからな。しかも女性が着ているというのは!」


 ああ、そういう!


 今も私が着ている水兵服。

 もともとは沙良ちゃんが獅子丸さんの部下たちとの調練中に着ていた服だけど……これってなんか格好が良いのよね。

 私たちが口々に「沙良ちゃん格好いい!私たちにも着せて!」っていうもんだから、いつの間にか私たち姉妹の分を十文字の人達が用意してくれるようになってたのよね。

 水兵服は着物と違って、着るのは楽だし、ずぼんは動きやすいしね。

 袴よりもすっとしている分、刀を振る時も楽なのよ。


 ……そういえば、勿来に誾千代様がいらした時、目を輝かして水兵服姿の私たちを見ていたわね。

 う~ん。だって、帆掛け訓練で着物は無理でしょ……。


 「まぁ、水兵服は動きやすいから……そうね、時間が無いものだから飯盛山に着いてからは、姉妹揃って水兵服で過ごしているものね……けど堺の人達の目に留まったことなんてあった?」

 「確かに瑠璃様は無かったでしょうが、蘭様と彩芽様は船に乗っておられますからな。五日に一度は水軍の船が堺に寄港しますし、淀川から巨椋池に至る水路建設の指揮をなさっておられるお二方は畿内では有名ですぞ?」

 「……言われてみれば、そうなりますね……」


 無類の船好きである二人には、水路建設の人手不足を嘆いておられた景貞大叔父上の補佐をしてもらっているが……そうよね、あの二人が丘から指揮するとか無いものね。そりゃ船に乗って水面から指揮するわよね。

 そして、船に乗れば水兵服を着るわよね。


 「はっはっは。堺の呉服屋共は、こぞって某や尾張屋に水兵服の作り方を教えてくれと手土産持参で参りましたぞ?おかげで尾張屋の販路が堺で広がり申した。有難いことでございます」


 そう言って頭を下げる長政殿。


 黒田長政くろだながまさ殿。年齢はたしか、私と同じ。

 信長殿が手を引いた尾張屋を買い取った黒田孝高くろだよしたか殿のご嫡男。

 縁あって、信長殿の下に仕官することになっていたのだけれど、今回私たちが飯盛山に向かう段になって、商人達からの情報収集の役目を負っている。

 本人は信長殿の元を離れることを渋っていたそうだけど、今では楽しそうに堺と飯盛山、六波羅を行ったり来たりしている。


 「とまぁ、今日の報告はこの辺りでしょうかな?」

 「ああ、そうですか。ありがとうございます。ご苦労様。……では時間も丁度良い頃合いです。昼餉でも貰いに行きましょうか?」

 「あ、いや!そんな瑠璃様に勝手口まで赴かせるなど!私が膳を持ってくるよう伝えますれば!」

 「ふふっふ。それでは味気が有りません。長政殿はご存知ないかも知れませんが、この北の丸では「しぇふずてーぶる」なるものがあるのですよ。楽しみになさってくださいな。……では、参りましょうか?」

 「しぇふずてーぶる???」


 色恋などは要りませんけど、昼餉の時間ぐらいは美男子と楽しく過ごすのも悪くはないでしょう。

 今日の「しぇふずてーぶる」はしっかりと確保させてもらいましたよ!

 伊藤家の姫という立場を利用して!

 瑠璃さんクローズアップ回です。

 今後も一丸の名代として畿内を中心に辣腕を振るうのでしょう。


 そして、堺で爆売れ気配漂う「水兵服」!!

 まぁ、この時代の水兵服、しかもスペイン海軍ですから、いわゆる現代日本で知られるセーラー服的な物ではありません。

 簡単に言えば被り長めのブラウスに太めのベルト、ゆったりとした厚めのズボンと言ったところでしょうか。

 作中季節は冬ですので、それなりに重ね着もしているのでしょうが、着物とは違った形でボディラインが出る服、「水兵服」を始めてみる畿内の人々には新鮮に映っていることでしょう。

 石鹸・シャンプー・入浴が日常的で、大柄で目鼻立ちくっきり系の若い娘さんが船上の風を浴びている姿……そりゃ注目の的、新しい文化の象徴となるのでしょうね。

 ちなみに以前に勿来へお買い物に来ていた誾千代さん、彼女は袴姿に編み上げブーツ。いわゆる「はいからさん」スタイルでイメージしていただければ幸いです。


 悲しいことではありますが、棚倉時代から古河への変遷時期を引っ張ってきた世代は年齢的に次々と退場していきます。

 変わって新しい世代の台頭も始まってきますのでどうぞご期待ください……ということで!


 今後ともよろしくお願い致します。

 m(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[一言] >色恋などは要りませんけど、昼餉の時間ぐらいは美男子と楽しく過ごすのも悪くはないでしょう。 わかり味が深い…… 当方は美女だと嬉しいですが鑑賞する分には美男子でも良いですね!
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