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刻印術師の高校生活  作者: 氷山 玲士
第六章 前世の亡霊篇

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21・選考

――西暦2097年12月14日(土)PM13:50 明星高校 生徒会室――

 週明けに学年末試験の結果が発表され、先日追試も終わった。そのためこの時期は気が緩みがちだが、夏休み前とは違う点が、週明けからの宿泊研修だろう。

 現在生徒会室では、そのための最終打ち合わせが行われていた。


「それじゃあ連絡委員会は、バスケ部の辻君と野球部の浅野君が追試を受けたのね?」

「ああ。とりあえずクリアしたって報告があった」

「浅野はともかく、辻はそこそこだったんじゃなかったか?」


 連絡委員会は各部の部長と他一名で、部長こそ2年生だが、もう一名の委員は1年生が指名されることも多い。今名前が挙がった二名は、残念ながら連絡委員だ。


「辻がどうこうっていうより、バスケ部自体がアウトだったみたいだぞ。何でも、盛大にヤマを外したとか言ってたな」

「何してんだよ……」

「さすがに自治委員会や図書委員会は、追試受けた人はいないみたいね」

「今回は保険委員会もいなかったわ。危ない人はいたけどね」

「風紀委員会は一人いたな。軽く威したら、追試にあるまじき高得点でクリアしてたが」


 誰が追試を受けたのかということは、生徒会としても気になるところだ。追試で赤点を取ってしまえば、生徒会であっても容赦なく留年が決まるし、それが委員会の委員長の場合、新しい委員長を決めなければならないという校則がある。

 だが幸いにも、生徒会で追試を受けた生徒はいなかった。


「鬼か、お前は」

「威したのは飛鳥じゃなく、久美だけどね」

「水谷ってことは、弟か?」

「京介には、もし追試を受けるようなことになったら、再起不能にするって前々から言い聞かせてあるわよ」


 だが京介は学年総合34位という成績のため、追試には縁がない。


「怖ぇ姉貴だな……」

「じゃあ誰だよ?確か佐倉は、歴史でも上位にいたはずだぞ」

「1年の二宮だ。刻印術に重点を置きすぎて、肝心の学業の方が疎かになってたんだよ」


 1年生は留学生のオウカも含め、全員が半分より上だったが、唯一勝だけが赤点を取ってしまっていた。飛鳥の言ったように、刻印術に力を入れ過ぎた結果だ。


「それでお前らが威しをかけたってことか。気の毒に」


 赤点を取った勝は、あまり反省している様子がなかった。だから久美を中心に2年生の生成者が取り囲み、源神社で追試対策の勉強会まで行ったのだが、勝からすればそれは恐怖以外の何物でもなかった。


「二宮君、泣きそうでしたよ?」

「自業自得だ」


 飛鳥達2年生の風紀委員も、基本的に成績は悪くない。大河は学年トップクラスの優秀者だし、今回は敦と久美、美花も上位20位に入った。飛鳥とさゆりも50位以内に入っている。唯一真桜だけが、苦手の社会科系で赤点スレスレの点を取っていたが、それでも何とかクリアした。

 ちなみに刻印術に関しては、1位から5位までが生成者で占められており、大河と美花も上位10位に入っている。


「そのテストだけど、1年生の風紀委員って刻印術の成績、すごく上がったわ。一学期と比べたら、とんでもない進歩じゃない」

「だよな。特に女子三人は、可もなく不可もなくに近い成績から、一気にトップクラスへ躍り出てたからな」


 紫苑、花鈴、琴音は、1学期の刻印術の成績は真ん中辺りだったのだが、紫苑が7位、花鈴と琴音が同率12位と、この2学期末試験では一気に順位を上げていた。


「富永、実際どうなんだ?」

「御崎さん達、風紀委員に推薦された当初は、けっこう馬鹿にされてたんですよ。1学期の試験結果を理由に」

「よくある話だな」

「1年生の1学期の結果なんて、あんまり意味ないのにね」


 明星高校には中間テストがない。時々抜き打ちテストが実施されることはあるが、刻印術に関してだけはそれもない。

 理由は手間がかかるうえに、万が一の被害が大きいからだ。刻印術の試験は、術師教員の立会いがなければ実施することを禁止されており、現在明星高校には卓也しかいない。準一も赴任してはいるが、教育実習生という扱いなので、正式な資格はまだ持っていない。そのため学期末の刻印術試験は、術師教員以外にも連盟や警察から派遣された術師が監督することを認められている。それでも人手不足なので、各教育委員会が頭を悩ませながらスケジュールを組んでいるわけだが。

 それはさておき、1年生1学期の期末試験の結果は、内心にも一切記入されない。刻印術の基本しか教えていないし、個人で学んだ基本技術にもバラつきもある。何より各人の生活環境が大きく結果に影響するのだから、参考にもなりにくい。だが当人達からすれば一つの結果であるため、2学期の期末試験が終わるまでは鼻にかける生徒も、毎年必ず存在する。


「竹内先輩も、すごく悩んでたね」

「対策を考えたほうがいいのかしら?」


 かすみと向井は、前期でも生徒会役員を務めていた。だから前会長の竹内護が、このことで悩んでいた姿をよく覚えている。


「来年の結果次第でもいいんじゃないか?確かに問題だが、1学期の期末をいつまでも自慢にしてるような奴は、だいたい俺達が捕まえてるし」


 1学期の期末が参考にもならないということは、試験前に聞かされる。だがその結果をいつまでも自慢するような生徒は後を絶たず、高確率で風紀委員に取り締まられる。結果がよくとも、上級生とは雲泥の差なので、毎年夏休み前と夏休み明け、そして新生徒会発足直後は、そういった1年生が捕まることも一つの風物詩となっていた。


「それもそれで問題なのよね。オウカちゃんだけじゃなく、御崎さんや長谷部さん達の実力がついてきてるのはいいことだけど」

「僕も風紀委員と同じ課題を出してもらって、練習も何度か見てもらいましたけど、あんな無茶苦茶なことしてたなんて、思ってもいませんでしたよ」


 生徒会唯一の1年生、さらに飛鳥、真桜と同じ中学の出身だったということもあり、駆は何度か手ほどきを受けていた。だが出された課題は本当に大変だったし、実戦と変わらない形式で練習をしていたとは思わなかったから、初日はすぐに悲鳴を上げてしまったものだ。


「でもそのおかげで富永君も、けっこうな実力がついてきたんでしょ?」

「おかげさまで、刻印術の実技は学年5位でした」


 駆は1学期の期末試験、刻印術実技は50位より下だった。1年生は例年より精度が低いと言われていたこともあり、駆はこの結果に衝撃を受けた。夏休みも何度か試験を受けたり、友人と練習をしたりしていたが、それでも実力がついたとはいえず、生徒会に立候補することも辞めようかと考えたこともあった。


「おお、すげえじゃねえか。上位四人は、風紀委員か?」

「ああ。トップが瞬矢で次が浩。3位がオウカで4位が京介だ」


 上位四人、特に瞬矢と浩は本当に僅差だった。

 1年生の2学期から系統別の授業がはじまるのだが、練度を上げたいと考えた浩は、非適正系統である攻撃系の授業を選択していた。それが明暗を分けたのだが、攻撃系を選択したのは他ならぬ浩自身なのだから、ある意味では当然の結果だろう。


「グロムスカヤさんがトップじゃないんだ」


 だが瑠依は、オウカがトップじゃなかったことに驚いた。実力が遺伝しないことは知っているが、それでも母が七師皇なのだから、環境的には最高のはずだ。


「実はあの子、七師皇の娘ってことで、ロシアじゃ過大評価されててね。そのこともあって、刻印術に関しては先生達も口を出さなかったらしいの。だからまともに教えてくれる人はニアさんぐらいで、術式の組み方とか、まだよくわかってないところがあるんだ」


 この事実に、真桜はかなり驚いた。だからすぐにニア――グリツィーニア・グロムスカヤに連絡を取り、直接問いただした。結果はオウカが語ったよりひどく、よくそんな状況であれだけの刻印術を使うことができたと感心し、同時に危険性も理解せざるをえなかった。だから真桜は、毎日つきっきりで、オウカに基本から刻印術を教えていた。


「なるほどね」

「ここにいる七師皇の息子と違って、随分と繊細なんだな」


 飛鳥もオウカと同じく、親が七師皇だ。だが飛鳥の父が七師皇だと知っていた生徒は、中学時代では大河と美花だけだった。七師皇の家族は、犯罪組織にも狙われやすい。事実として飛鳥は、5年前に過激派に襲われ、実の母と真桜の父を失っている。

 その後再婚した一斗と菜穂は、二人の存在を世間に公表しなかったし、立花家や久世家も協力してくれたため、中学時代は一度しか事件に巻き込まれなかった。その事件で神槍を生成してしまったのだから、数は問題ではないわけなのだが。

 そんなこともあり、今でこそ父と比較されるようになった飛鳥だが、多感な中学時代には一度もなかったことなので、伸び伸びと育つことができた。


「うるさいよ。それより田中、来週の打ち合わせをしなくていいのか?」


 来週の打ち合わせとは、宿泊研修のことだ。普通ならば日程の確認だけで済むのだが、今年は交流試合の選手がまだ決まっていないという異常事態が起きていたし、最終日に行く壇ノ浦では、平知盛と平教経が襲ってくることがほぼ確実視されているため、細かい日程が決まる度に、生徒会は会議を行っていた。


「そうなんだけど、先輩達がまだなのよ」

「雅人さんとさつきさん、それに三条先輩か」


 その関係で、自ら同行を申し出てくれた三人の複数属性特化型生成者も、よく生徒会室に足を運んでいた。今日もその予定だ。


「ええ。お昼前に連絡したんだけど、野暮用があるから、ちょっと遅くなるかもしれないって言われたの。もう少ししたら来ると思うんだけど……あ、来たみたい」

「すまない、遅くなった」

「これ、差し入れね」


 丁度いいかはわからないが、雅人とさつきが、手に某有名ケーキ店の箱を提げてやってきた。来てくれることは素直に嬉しいし、安心もできる。だが毎回毎回、手土産持参で来るのだけは勘弁してほしいとかすみは思っていた。


「ありがとうございます」

「わざわざすいません」


 一度だけ直接上申させていただいたのだが、迷惑をかけたお詫びだと言われ、呆気にとられている隙になし崩し的に定着してしまった感もある。


「あれ?雪乃は?」

「え?一緒じゃなかったんですか?」


 真子は雪乃も一緒に来ると思っていた。だがよく考えれば雪乃はまだ高校生なのだから、校内にいる方が普通だ。


「すいません、遅くなりました」


 そんなことを考えていると、少し息を切らせながら雪乃がやってきた。


「雪乃先輩、どうかしたんですか?」

「ちょっと、図書館で調べ物をしてたの」

「珍しいわね。あんたが時間を忘れて没頭するなんて」


 雪乃が時間に遅れることは、かなり珍しい。むしろ約束の時間より、10分以上早く来ることも珍しくない。


「最近はそうでもありませんよ。それよりごめんなさい、遅くなってしまって」


 だが飛鳥、真桜、久美、敦の前世が立て続けに判明したため、雪乃は四人の前世について、時間を忘れて調べることが増えていた。今日もそれを調べるために、図書館に足を運んでいたのだが、実は雪乃が一番気になるのは、さゆりの前世だった。

 襲撃事件の際、雪乃とさゆりだけは前世がわからなかった。さゆりがそのことを気にしているのは、雪乃もよく知っている。表には出さないが、自分だけ関係ないと言われているようだと、雪乃に漏らしたこともある。


「気にしないでください。それじゃお茶を用意してから、打ち合わせを始めますね」

「それは私がやるから、田中さんは打ち合わせを始めちゃって」


 だが雪乃が代わりに申し出た。会長自らお茶の用意をすることが悪いとは言わない。だがかすみが仕切らなければ話が進まないし、生徒会の面々もそれは同様だ。


「雪乃先輩、私も手伝います」

「あ、私も」

「ありがとう、真桜ちゃん、さゆりさん」


 真桜とさゆりも、雪乃の手伝いをすることにした。久美も手伝いたかったが、料理系が苦手という弱点があるため、自粛した形だ。真桜に教わって形にはなってきているが、まだ人様に出せる域には到達していない。


「ありがとうございます、三条先輩、真桜、さゆり。それじゃ始めますね。まずは日程の確認から。富永君、お願い」


 雪乃の気遣いに感謝し、かすみは生徒会をはじめることにした。


「月曜日は朝9時に新横浜駅に集合し、9時52分のリニアで博多まで。到着後に大宰府を見学して、そのまま宿泊施設に入ることになってます」

「ここは問題なさげだな」


 リニア・トレインによって、東京―博多間は約4時間に短縮された。空路を使えばもっと早いのだが、修学旅行が海外なので、宿泊研修は陸路となることが多い。


「移動で終わるしね。見学するところも、大宰府だけなんでしょ?」


 大宰府は博多駅からは距離がある。だから真子の言うように、大宰府を見学する時間を含めても、ほとんど移動で終わってしまう。だから問題があるとは思えなかった。


「ええ。でも問題はあるわよ」

「何かあったか?」

「確か今年って、連盟の客船に宿泊するんじゃなかったっけ?」


 いつもなら学校側が宿泊施設を手配するのだが、今年は事情が違う。

 明星祭を襲った平知盛と教経は、厳島神社にも表れ、奉納されていた小烏丸を奪い、以後の消息は完全に途絶えてしまった。因縁の地、ということを言っていた以上、九州では襲ってこないだろうが、それでも頭から信じられるはずはない。

 そしてこれが最大の理由だが、狙われている飛鳥と真桜は、刻印神器 神槍ブリューナクの生成者だ。世間にはまだ公表されていないが、連盟や刻印管理局、政府の上層部はそのことを知っている。真実を知らない反対派を抑えることは大変だが、逆に知っている者はほぼ無条件で協力してくれるのだから、ある意味ではやりやすいのかもしれない。知っている者の大半は、日本最強の刻印術師達なのだから、政府だって、それが野党であろうと、無視することなどできるはずがないのだから。


「ええ。事情が事情だから、連盟が用意してくれたわ。問題なのはそこじゃなくて、もしかしたら代表が来るかもしれないってことなの」

「親父が来るだとっ!?」


 だが一斗が来るなど、完全に予想外だ。


「え?聞いてないの?」

「雅人さん!」


 この場で唯一知っている可能性があるのは、七師皇と対等に近い立場にある刻印三剣士だけだ。だから真桜は、問答無用で雅人に詰め寄った。


「すまん。俺も今、初めて知った」


 だが雅人からしても、そんなことはいつものことなので、まったく動じていない。


「いつものことだけど、余計なサプライズよね。でもかすみ、もしかしたらってことは、現状じゃ来れない可能性の方が高いのよね?」


 さすがにさつきも黙ってはいられない。思わず口を開いてしまった。


「今のところ、半々だそうです」

「来ないことを祈るしかないってことか……」

「ま、まあ、そうしておいて。次に進めるわね。二日目は交流試合。場所は福岡ドームよ」


 溜息混じりに呟く真桜に呆気にとられながらも、かすみは話を進めた。


「そこだけなのか?」

「ええ。今年はいつもとは違う趣向を用意してあるそうなの」


 去年までと大きな違いは、交流試合が一日しかないことだった。去年は二日、一昨年は三日で、場所も山の中だったり施設の中だったりと海の上だったりと、千差万別だった。だが一日で、しかも福岡ドームでしか行わないということなので、この時点で異例と言えるだろう。


「そいつが何なのかは、ハンデってことで当日まで知らされないってことか」

「出場選手を決めるための情報は、さすがに教えてもらったわ。今年は学年別と混合の、合計3試合よ」


 交流試合の出場選手がまだ決まっていなかった理由は、出場できる人数を教えてもらえなかったからだ。さすがに候補はいるが、本当にこんな直前になって開示されるとも思わなかった。しかも教えてもらえたのは、出場選手の人数と試合数だけだ。


「学年別は各5名の団体戦、混合は10名の団体戦だとさ」


 亨も今更感を滲ませながら補足した。


「ってことは交代要員も含めて、各学年15人ってとこか」


 交流試合は毎年負傷者が出る。去年までは審判が各校の教師だったことも一因だが、学校の名誉もかかっているため、ヒートアップしやすく、反則行為も少なくない。だからどの学校も、交代要員は必ず用意している。


「思ってたより少ないわね」

「だな。人選どうすんだ?」


 だが予想していたより人数が少なかった。少数精鋭同士の試合は、かなり白熱したものになるから、面白くなることは間違いない。だが準備を行う身としては、それぐらいはもう少し早く教えてほしかったと思わずにはいられない。


「成績で決めるのが無難なんでしょうけど……」

「2年生と混合が問題よね」

「こいつらを出すかどうか、出すならどっちにするかで、けっこう変わるからな」


 成績で出場選手を決めるなら、学年別と混合で上位15位ぐらいまでが基準となる。そこで問題なのは、上位五名が生成者だということだ。


「それがね、混合は学年別の選手しかエントリーできないそうなのよ」


 だがかすみの追加情報は、さらに選手選考を難解にさせるものだった。


「マジか?」

「それもハンデってことか?」

「そう聞いてるよ。あと天草学園から、三上君か井上君は絶対にエントリーさせるよう言われてるんだ」


 向井の追加条件も、さらに厄介だ。普通なら生成者の相手など、試合であってもお断りだ。だが天草学園は指名した。自信があるのか、それとも噂の生成者の実力を肌で感じたいのか、はたまた別の理由があるのか、現時点ではさっぱりわからない。


「なんで俺達を?」


 それは飛鳥も同様だ。


「今年の新人戦なんだけど、空手大会は天草学園が個人優勝してるの。だけど井上君が出場しなかったから、優勝にケチをつけられてるみたいなのよ」


 敦は新人戦に出場しなかったのではなく、出場することができなかった。普通の高校生の大会は、スポーツを通して青少年の育成を目的としている。だが敦は、既に連盟からの任務を何度もこなし、七師皇から称号まで授かった一流の生成者だ。普通の高校生ではない。だから高体連に、それを理由に出場を禁止されたことにも納得している。


「だから井上を名指しってわけか」

「今年の新人戦で優勝したってことは、諸星って奴だな」


 だがかすみの説明で、理由はわかった。敦は優勝者の名前も知っていた。


「知ってるのか?」

「名前だけはな」

諸星もろぼし 一巳かずみ。天草学園高校2年生の刻印術師ね。刻印法具の生成ができないだけで、実力は同世代でもトップクラスよ。ただ、この子達の影に隠れてしまってて、あまり有名じゃないわ」

「さつき先輩、知ってたんですか?」

「光理さんに教えてもらったのよ。根拠のない自信家や自惚れ屋じゃなく、むしろ敦が新人戦に出て来なかったことを残念がってたらしいわ」


 さつきは自分と同じ三華星の一人 秋本光理から、諸星一巳のことを聞かされていた。一巳は同世代では間違いなく最強候補の一人で、刻印法具を生成しなければ生成者にも匹敵すると噂されている優秀な刻印術師だ。

 だが実際に手合わせをしたことがない者と比べられても、それは意味がないばかりか過大評価にもつながる。一巳がどう思っていようと、周りが勝手に評価し、勝手に結果を求めてくるようにもなる。そしてそれが、自分の増長と自惚れを招くことを、一巳は知っている。


「そりゃまた、珍しいタイプですね」

「そのかわり、実力は本物らしいわ。光理さんはここ数年で間違いなく、天草学園最強を名乗るに相応しいって言ってたから。まあ、あんた達程じゃないとも言ってたけど」


 光理は一巳の実力を買っている。だが同時に、世間の評価が間違っていることも知っている。一巳にはそのことを教えてあるが、どうやら一巳自身もうすうすと感じていたようだ。だから光理は、明星高校との交流試合を行えるよう、準一に母校を推薦していた。同時に同世代最強の生成者 飛鳥か同じ空手家の敦のどちらかと競わせてみるつもりだった。


「つまり、三華星のミラージュ・ウィッチが絡んでるわけなんですね。そういうことなら俺が」

「いや、本来なら俺が試合う可能性があったわけだから、俺がやるべきだろ」


 自分達が指名された理由はよくわかった。三華星が絡んでいたとは思わなかったが、馬鹿にされているわけでも見下されているわけでもないなら、こちらとしても気持ちよく相手ができる。それどころか可能な限りの全力で応えたいとまで思えてしまう。


「いっそのこと1年も2年も、風紀委員に任せときゃいいんじゃねえのか?」


 やる気を見せた二人を見て、迅が呟いた。


「それもそれで問題だろ」

「逆に選手が固定だから、それでもいいような気はするのよね」


 反論した壮一郎だが、またしてもかすみから条件が追加された。


「なんで?」

「うちは負傷者が出ても、選手の交代はできないんだ。これは学年別も混合も共通だよ」


 さすがにこれはない。負傷交代ができないということは、欠員を抱えた状態で試合を行うことになるのだから、人数的なハンデが露骨なまでに発生する場合が考えられる。


「よし、任せた」


 だから真吾が、負傷する可能性が低い風紀委員に任せようと思ってしまい、大多数が賛同の意思を見せているのも、ある意味では当然だった。


「おい……」

「でも冗談抜きで、負傷交代ができないのはキツいわね。去年だって、半分以上が途中交代したんだし」


 去年の交流試合は三日間に渡って行われており、参加選手百人中、約半分が負傷交代した。明星高校にはいなかったが、相手校には入院した生徒もいたのだから、試合の激しさが窺える。


「それはそうだが……他に情報はないのか?」

「対戦方式は一対一じゃなくて、チーム戦ですって」


 チーム戦ということは、リングのような場所で戦う可能性は低い。可能性が高いのは指定領域内でのサバイバル戦だろう。


「……それ、誰が決めたの?」


 確かに去年もサバイバル戦はあったし、チーム戦もあった。だが今年はそれしかないし、何より一日しかない。時間は区切られるだろうが、本当に終わるのだろうかという疑問もある。


「三華星って聞いてるわよ」

「さつきさん!」


 真桜の声を合図に、室内の視線が一斉に三華星のマルチプル・ヴァルキリーに集まった。


「あたしはノータッチよ。むしろあんた達と親しいからってことで、何も教えてくれなかったもの」


 だがさつきも、涼しい顔で受け流した。


「ということは、犯人はお母さんか……」


 三華星はここにいる久世さつき、秋本光理、そして真桜の実母 三上菜穂の三人を指す。つまり母も今回の交流試合に深く関わっていたということだった。


「責任とって、飛鳥君と真桜も出場するしかないでしょうね」

「ということは、私達も諦めろってこと?」


 飛鳥と真桜は半ば諦めた顔をしている。敦は出場するつもりになっている。だがさゆりと久美は、そんなつもりはない。


「そうなるな。それにチーム戦なわけだし、当日まで時間がない以上、クラブか委員会でまとめないと無理だろ」


 だが壮一郎の言うように、宿泊研修は週明けからだ。しかも土日を挟んでしまうため、練習する時間もない。慣れた者同士でなければ、即興でチームプレイをすることはできないだろう。


「というわけで、2年はお前らに決定だ。いいよな、田中?」

「ちょ、ちょっと待ってよ!」


 だがさゆりの抗議は完全無視された。


「修学旅行中みたいに、無遠慮に生成することはやめてほしいけどね」


 そしてかすみの一言で、2年生の出場選手は決定した。敦が密かに闘志を燃やし、飛鳥と真桜が肩を落とし、さゆりと久美が納得できないという顔をしているが、かすみが最終決定を下した以上、覆せない。それに友人であるかすみには、けっこう迷惑をかけているから、諦めるしかなさそうだ。


「あとは1年か。混合のこともあるから、やっぱり風紀委員からだろうな」

「佐々木君と水谷君、新田君、それからグロムスカヤさんは決定としても、あと一人が難しいわね」


 だが1年生も、微妙に難しい。上位四人が風紀委員だからいいが、残る一人をどうするべきかだ。


「成績でいくなら、富永じゃないか?」

「チームワークを考えると、風紀委員から選ぶべきだと思うわよ」

「富永君、出場してみる?」


 駆は刻印術試験5位、学年総合3位の成績優秀者だ。そして次期会長候補筆頭でもある。生徒会の先輩方にも目をかけてもらっている。だから今回も、出場する意思があるかの確認までしてくれている。


「学年別だけならともかく、混合までとなるとちょっと……」

「交代なしだもんねぇ。気の毒だけど、風紀委員から選ぶしかないと思うわよ」


 負傷しても交代できないのだから、さすがに辛い。さらに混合は生成者と組むことになるわけだから、おそらく自分では萎縮して何もできなくなるだろう。


「ちなみに風紀委員からだとすると、誰になるんだ?」

「勝と花鈴は、ムラがありすぎる」

「そういう意味じゃ、京介も似たようなものね」


 勝と花鈴は、逸るところがあるため、刻印術の扱いが雑になりやすい。京介は二人ほどではないが、荒くなることがある。試験でもそれが原因で他の風紀委員に負けていた。


「琴音は戦闘向きじゃないわね。雪乃先輩や美花と同じく、癒し系だし」

「それを言ったら、オウカも戦闘向きじゃないけどね」


 琴音は美花によく似た適性をしているし、実はオウカも前線支援向きの特性がある。しかも二人とも、性格的にも戦いに向いているとは言い難い。


「それもそれで困る問題だろ」

「やっぱり紫苑かしらね」

「消去法ってのも、どうかと思うけどな」


 確かに残った風紀委員は紫苑だけだが、さすがに消去法はどうかと思う。


「そんなことないよ。だって紫苑、7位だったはずだし」

「そうなの?紫苑って、確か御崎さんよね?富永君、知ってる?」

「御崎さんですか?学期末はまだ慣れてない様子でした」

「慣れてないってことは、まだ伸びるってことか」


 学期末試験の際、紫苑は1学期とは別人のような精度で次々と課題をクリアした。だが紫苑は要領が悪いため、飛鳥達の課題もけっこう手間取った。その課題をクリアすることで、今まで自分が効率の悪い使い方をしていることを知ったが、試験では慣れない使い方で挑んだため、ぎこちなさが表に出てしまっていた。それでも7位という好成績だったのだからすごい。


「ふむ、なら御崎で決定だろ」

「そうね。そういうことなら問題ないと思う。お願いね、飛鳥君」


 かすみもそう判断した。これで出場選手が決まったわけだから、後はリーダーである飛鳥に任せる。


「わかったよ。その代わり、どんな結果になっても、文句言うなよ?」

「心配しないで。1年生はともかく、2年生と混合で負けるなんてことは、これっぽっちも思ってないから」

「負けるとしたら、やりすぎての反則負けだろうな」


 2年生が負けることは、正直考えられない。刻印法具を生成しなくとも、とんでもない精度で刻印術を使いこなしているし、それは成績にも表れている。


「それじゃ話を戻すけど、最終日は壇ノ浦に移動して、史跡や合戦場跡地の見学をする予定よ」


 一応とはいえ、交流試合の選手は決まったのだから、かすみは最大の問題である最終日、壇ノ浦の予定へ話を進めた。


「ここで平知盛と教経が襲ってくる可能性があるってわけか」


 平知盛と教経だけではなく、飛鳥達にとっても因縁が深い壇ノ浦は、高確率で襲われることになる。飛鳥の前世が源義経、敦が佐藤忠信なら、さらに可能性は高くなる。


「雅人先輩、どう思いますか?」

「こちらも、その可能性がもっとも高いと予想している。だから当日は、限定的に関門海峡を封鎖することになった。本州側と九州側、どちらにも軍を配備させることで、追い詰めることができるからな」


 雅人の言うとおり、既に軍は関門海峡の封鎖に動き始めている。明星高校で召喚の刻印を使ってきたのだから、それは最低限の備えだ。


「でも、逃げる方法がないわけじゃないですよね?」

「確かにそうだが、平安時代や鎌倉時代には、フライ・ウインドやオゾン・ボールといった術式は、存在していなかったことがわかっている」

「そうなんですか?」

「ああ。空を飛ぶという発想は当時もあったようだが、それにしては記録がない。そんな武将がいれば、しっかりと残っているだろうからな」

「昔の刻印術は、今みたいに科学的な根拠や理論をもとに使われていたわけじゃないみたいなの。少なくとも酸素や水素のような元素といった概念は20世紀の中頃になってから、当時の刻印術師達が取り入れていたそうよ」


 フライ・ウインドのように空を飛ぶ術式や、オゾン・ボールのように水の中でも呼吸ができる術式は、昔から考えられていた。だが今と違い、刻印術は個人で考えなければならず、他人に教えることは稀だった。だから使い手も少なく、記録も残っていない。命取りになることだから、昔の術師達は、その点にかなり気を使っていたことが記録に残されている。


「科学の発展と同時に、刻印術も進歩したってことか」


 原子や元素の概念、刻印具の開発、刻印術の体系化など、時代と共に刻印術は進化し、今では誰でも使えるようになっているし、様々な場所で、日常的に使われている。


「もっとも、江戸時代になってからは、刻印術師は表舞台から退いたそうだけど」


 刻印術師はあまり歴史の表舞台に立ちたがらない。日本では平安時代末期から江戸時代初期までの、いわゆる武士政権と乱世の時代に表に出てきたことが確認されており、それも人々を守るためだった。だが自ら天下を取るために動いた者がいないかといえば、そんなことはない。


「でも先輩、知盛も教経も、前世の記憶を持ってる今の人間ってわけですから、その辺の問題はクリアしてませんか?」


 駆の疑問は当然だ。知盛が誰かはいまだに不明だが、教経は村瀬燈眞だと判明している。村瀬燈眞は土属性に適性を持つ高位の刻印術師なので、風属性術式であるフライ・ウインドとオゾン・ボールの試験を受けていないことも確認済みだ。だがヨツンヘイムの試験も受けていないのに、同種の術式である樹震陣を使うのだから、使えないとは断言はできない。


「もっともな話だ。だが知盛も教経も、世界樹型の昔の名称を使っていたと聞いている。刻印術を発動させるためには言霊認証が必要である以上、確立されているA級までの術式を使うことはできないはずだ。直接対峙したわけじゃないから、正確なことは言えないが」

「それに教経はヨツンヘイムを使ってきたけど、教経である村瀬燈眞は、ヨツンヘイムの試験を受けていないことが確認されているの。つまりあれはヨツンヘイムではなく、樹振陣っていう現代の刻印術とは異なる術式ということになると思うわ」

「そっか。教経の正体がわかってるから、そこからどの術式許諾試験を受けたのかは、正確に調べることができるんですね」

「もちろん、不正術式を使っていないという前提の上で、だが」


 不正術式の多くはB級だが、A級がないわけではない。刻印具が壊れてしまうため、生成者ぐらいしか使えないので、実際に不正A級術式を使うのは刻印術師優位論者ぐらいだ。


「あとは当日ね。みんなには迷惑をかけないようにするけど、知盛がどんな手を使ってくるかわからないから、警戒だけはしておいてね」

「わかりました」

「それから俺達は、宿泊研修まで準備に取り掛かることになっている。質問があれば、今のうちに頼む」


 だが誰からも質問はないようだ。何を聞けばいいのかわからないという理由もあるだろう。


「それじゃあ質問もないみたいなので、これで解散にします」


 それを確認したかすみが、終わりを告げた。


「1年生に試合のこと伝えなきゃね」


 だが風紀委員にとって、これで終わりではない。2年生は全員がここにいるが、1年生は風紀委員会室にいるため、まだ交流試合に出場することを知らない。しかも試合は三日後なのだから、あまりにも急だ。


「だな。一度ぐらいは練習試合をさせておきたいところだが……」

「厳しいけど、今日ぐらいしか時間とれないわよね」

「ああ。伊東、檜山。どこかのクラブに頼めないか?」


 運動部はそれなりに練習試合の機会が多い。今回の対抗試合のようはことは滅多にないが、それでもチームワークはいい。だから去年も、だいたいはクラブごとにまとめられていた。


「お前らの相手は、聞くまでもなく無理だぞ」

「心配しなくても、お願いしたいのは1年生だけよ」

「確かにお前らはともかく、1年には練習ぐらいさせてやりたいな。わかった、いくつか声をかけてみる」

「悪いな」

「押し付けたようなもんだからな。これぐらいはやるさ」

「早めに連絡するが、断られることも視野に入れといてくれよ」

「わかった。頼むな」


 壮一郎と真吾に、練習試合の予定を急遽頼んだ飛鳥達は、後輩に伝えるべく、生徒会室を後にした。


――PM14:34 明星高校 風紀委員会室――

「つまり、生徒会から押し付けられたってことですか?」


 開口一番、不満を漏らしたのは浩だった。


「そういうわけじゃないが……」

「だからって、なんで私まで……」


 紫苑もとても嫌そうな顔をしている。交流試合のことは聞いているし、選手に選ばれるのではないかという予感もあった。だがまさか、そんなとんでもない条件だったとは思いもしなかった。


「だって紫苑、すごく上達したじゃない。成績にも反映されてるんだし」

「チームワークを重視してだから、紫苑が選ばれるのはわかるわよね」


 対象的に花鈴と琴音は、心底安心した様子だ。紫苑には少し恨めしく見える。


「そういうわけで、伊東に声をかけてもらってる。戦法なんかは俺達も一緒に考えるが、試合形式の練習となると、今日ぐらいしかできないからな」


 どういうわけかわからないし、自分達の意見は聞いてもらえないようだ。だが生徒会が決めた以上、覆すこともできないだろう。


「どんな形式になるか、わからないんですよね?」


 だから瞬矢も、諦めの境地に達したようだ。


「指定領域内でのサバイバル戦だとは思うけどな」

「サバイバル戦、ですか?」

「リング上で全員で乱闘っていう、安易なことはしないだろう。他に思いつかないってのもあるが」

「それが一番、可能性が高いでしょうね。飛鳥、伊東君には形式を伝えてるのよね?」

「ああ。無難にフラッグ戦ってことにしておいた」


 旧世紀末から、空気やモーターで球形のプラスチック弾を撃ち出すモデルガンを使った遊びがあり、競技にもなった。それはモデルガンが刻印術に変わった今も続いており、人気の高い競技となっている。フラッグ戦はその中でもっともメジャーな種目だ。


「フラッグはいくつなんですか?」

「3つだ。今回はダミーなしにしてある」

「3つかぁ」


 フラッグ戦はいくつかのフラッグを回収、もしくは相手を全滅させれば勝利となるが、ほとんどはフラッグの回収で決着がつく。


「お、伊東からか。いくつかのクラブがOKしてくれたみたいだ。4時になったら校庭で始めるぞ」

「校庭ですか?刻練館じゃなくて?」


 術式試合を含め、刻印術に関することは刻練館で行うことが多い。クラブ活動に関しては校庭でも使用できるが、顧問の教師がいなければ禁止されている。その校庭で試合形式の練習などしてもいいのかと思う。


「さすがに刻練館じゃ手狭だからな。それに去年も、校庭で練習したぞ」

「みんな興味あるらしく、見学希望も多いみだいだな」

「緊張するなぁ……」

「いつもどおりでいけば大丈夫よ。それで、戦法はどうするの?」


 フラッグ戦は戦術も重要だ。たいていは適性によって決まるが、それでは面白くない。


「京介と浩が攻撃、オウカと紫苑が防御、瞬矢が遊撃でいいだろう」

「適性から判断すれば、そうなるわよね。無難すぎて、面白味に欠けるけど」


 やはりさゆりもそう考えたようだ。


「ならさ、瞬矢君とオウカが攻撃、浩君と紫苑が防御、京介君が遊撃は?」

「あ、面白いかも」

「瞬矢と京介で攻撃させて、浩を遊撃に回すのもアリじゃねえか?」

「瞬矢君とオウカちゃんが防御、京介と浩が攻撃、紫苑が遊撃もアリだと思うわよ」


 五人の適性はよく知っているし、性格も同様だ。だからどんな戦術にするかは、思い付きだけでもけっこうでてくる。


「練習だし、色々と試してみるしかないだろうな」

「それからリーダーだが、遊撃に回った奴がやってみてくれ。当日誰にするかは、それを見て決める」

「わかりました」

「それじゃあ、行くとしましょうか」

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