23.彼氏ができるということは
サキが紹介してくれた男の人は、確かにイケメンだった。
少しぼーっとしてるところが気になるけれど、どうやら相手は私のことを気に入ってくれたらしい。
「いいよ、付き合おうか」
そんな軽いノリで……彼氏ができてしまった。
「なんか、彼氏ができた実感が湧かないんだけど……」
「最初はそんなもんだって! 後から恋人らしくなっていくものよ!」
ファミレスで顔合わせをした後、サキに本音を零せば、ばしばしと背中を叩かれた。
「いい、メイコ。オウガにだけは絶対、彼氏ができたって報告しちゃダメだからね?」
「えっ? どうして?」
「どうして?じゃないわよ。あいつがメイコに彼氏できて、黙ってるわけないでしょうが」
「まぁ……何か言ってくるかもしれないけど」
想像してみたけれど、オウガがどんな反応をするかよくわからなかった。
とりあえず、どんな男かということくらいは聞いてきそうだ。
「あと、もう彼氏ができたんだから、オウガの家には行かないこと!」
「えっ!? なんで!!」
「なんでじゃないよ。当たり前でしょうが。よく考えてもみなよ。彼氏からしたら、自分の彼女が同じ年頃の男の部屋に出入りしてるなんて、それ浮気だからね?」
確かに言われたらそうかもしれないけれど、そんな急に言われても困る。
彼氏ができたら、オウガと遊んじゃダメだなんて……。
そんなことになるとは、思ってもみなかった。
「はぁ……」
夜、交換したメールアドレスを眺めながら、ベッドの上に寝転がる。
生まれて初めて彼氏ができたと思うと、なんだか不思議な気分だった。
こんなに簡単に、恋人同士になるものなんだなぁ。
なんかこう、もっとあるかと思っていた。
たぶん、私が夢みがちなのかもしれない。
初めて彼氏ができたというのに、気分はどうしてか沈んでいる。
オウガに明日、何て言おう。
すでに彼氏なんて急いで作るものじゃなかったな、と後悔しはじめている自分がいた。
とりあえず、寝る前におやすみなさいと彼氏にメールをして、その日は眠りについた。
「メイコ、昨日はサキとどこに行ってたんだ? 夕飯、作るって話しだったのに」
朝、学校へ行けばオウガが少しむくれていた。
実は昨日、本来はオウガの部屋へ行く約束をしていたのだ。
久しぶりにプリンが食べたいといわれ、じゃあついでに夕食にカレーライス作ってあげるという話しになっていた。
しかもサキとの用事を優先したというのが、オウガは気にくわないんだろう。
「ごめんねオウガ。ちょっと色々あって」
「まぁいいけどな。今日は作りにこれるか?」
「うーん、今日も用事があるかな」
「じゃあ土曜日でいい。休みだしな」
「その日も用事があるんだ。日曜日も」
「……」
オウガが無言になる。
避けていることが、これじゃ丸わかりだ。
――もう彼氏ができたんだから、オウガの家には行かないこと!
サキの言いつけを守れば、罪悪感がむくむくと大きくなるのを感じる。
――彼氏からしたら、自分の彼女が同じ年頃の男の部屋に出入りしてるなんて、それ浮気だからね?
サキに言われたことはもっともで、わかるのだけれど。
オウガは友達なんだし、やましいことは一切ないんだから、それくらい良いんじゃないかなと思う。
というか、やっぱり……彼氏ができたって報告したほうがいいような。
でも、サキは絶対それは止めろって言ってたんだよね……それに、ちょっと言いづらいし。
そんなふうに悩んでいたら、授業のチャイムが鳴って。
結局、本当のことをオウガに言いそびれてしまった。




