表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

119/134

雷鳴⑧

生き返らせることができる。

響いた自身の言葉。

それに付け加えるように、マーリンは続けた。


「身も心も本物の聖女の加護」


「それがあれば、死んだ人を生き返らせることは可能」


しかしそこで目を伏せ、「でも、この世界に本物の聖女はもう居ない」そう呟き、悲しげにヨミへと視線を向けるマーリン。

そんなマーリンを見上げ、ヨミもまた声を響かせる。


「ほんものの、聖女」


「勇者の側に居るはずの女の人。その人はどこ?」


「知っていたら苦労しない。うーん。名前だけは知ってる。確かーー」


「マリア」


マーリンの言葉。

その続きを淑やかな声が受け継ぐ。

それに皆の視線が一斉にそこへと注がれる。

果たしてそこに佇んでいたのは、掠れ切った笑みを浮かべ小さく頭を下げるスズメだった。


そんなスズメの姿。

それを見据え、マーリンは声を響かせる。


「スズメさん」


「はじめまして、賢者さん。こうやってお話をするのははじめてですね」


微笑む、スズメ。


「それに」


「貴女もはじめましてですね。名前は確かーー」


「ヨミ」


スズメの声。

それに短く答え、マーリンの影に隠れるヨミ。

その姿。それは、母猫に縋る子猫そのもの。


「はじめまして、ヨミさん」


顔は笑っている。

しかしそのヨミを見つめるスズメの目にはうつっていた。

アレンにより取り上げられた冥府チカラの残滓。それがヨミの周囲に未だ仄かに漂っているのを、はっきりと。


こちらを見据える、スズメ。

それに、ヨミは呟く。


「こわい」


「あの人。こわい」


小刻みに震え、ヨミはスズメの視線から逃れようとする。


「まーりん」


「よみ、こわい」


「って言われても。わたしにはどうしようもできない」


ヨミの言葉。

それに困惑し、頬をかくマーリン。

元勇者セシリアの仲間。

力は衰えているとはいえ、今の自分にどうこうできる相手ではない。


「大丈夫。あの人はなにもしない」


「わからない」


「わからないのは貴女のその考え」


「……」


「今の貴女はペルセフォネじゃなく、ただの少女。わたし、聞いたよ。アレンの力で元の少女に戻ったって」


マーリンの悟すような声音。

それにヨミは落ち着きを取り戻していく。


「冥府という概念。それに支配されていた時の貴女なら、あの人を怖がるのもわかる。でも、今は」


"「返してもらうぞ」"


ヨミの脳裏。

そこに蘇る、アレンの声。


「もう冥府ペルセフォネは存在しない。アレンがその存在を消したから」


そんな目の前のやり取り。

それを見届け、魔王は口を開く。


「スズメ」


にこりと。

魔王に微笑む、スズメ。


「何故、ここに? セシリア亡き今、御主がここに用などないはずだが」


「えぇ、そうです」


「では、なぜ?」


魔王の疑問。

それにスズメは答える。

顔から笑みを消し、意思の込められた声音と共に。


「アレンくんに、託したい」


魔王の問い。

それにスズメは更に言葉を紡ぐ。


「セシリアさんがアレンくんに託した思い。それにわたしも応えたいのです」


「……」


意思のこもったスズメの声。

それを静かに聞く、魔王。

そして己の胸中で、「勇者。その存在に人は皆憧れを抱き、そして思いを託す」そう呟き、魔王はアレンの姿を脳裏に宿す。


"「あらゆる困難。そして苦しみを乗り越え、仲間と共に成長し世界を救う」"


"「それが勇者わたし」"


かつて対峙したセシリアの姿。

真紅を纏った勇者の姿。

それを思い、魔王はちいさく笑う。


そして、そこに響くは声。


「みんな、すまない。俺は大丈夫。少し、疲れてただけ……だから」


アレンの声。

心の痛み。それを見せまいと笑顔を浮かべる、アレンの姿。

それが、玉座の間の入り口にはあった。


あけましておめでとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ