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0歳児スタートダッシュ物語  作者: 海華
欲求の取捨選択編
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9



「リリア!」


「大丈夫?リュート」


「なんか色々…うん」


魔封じが施された部屋で、力無く笑う彼女に胸が痛む。

犯罪者として処刑されてないだけ。魔力がコントロール出来てない彼女はそんな扱いを受けていた。


まあ魔封じを施していないと、いつ人を操るかわからないから国としても怖いのだろう。わかる、わかるから早く呪い封じの結界を作らないと。

彼女の呪いを封じる魔道具でも作ってあげれば待遇は変わるかもしれない。


「ねえ。リリア、その……もしかして、リリアも私に呪われてるの…?」


「……まあ、初めはね。と言うか私に関しては自覚なかったとはいえ確信犯でリュート呪ったでしょ?」


小さく笑いながら、魔力を注ぎ込まれたことを突っ込めばうぐ、と言葉に詰まったリュートが「だって学園長が…」とボソボソ言う。その様子がちょっと可愛くて、笑う。


「まあ、私は自分で呪いは解いたからもう平気だよ」


「………じゃあ私、もう友達じゃない?」


「まさか。リュートは数少ない私の貴重な友達だよ。でもまあ今は最優先すべき旦那様を思い出したから、最優先は出来ないけどね」


言いながらちらっと出入口に立っているエルク様を見るとリュートは複雑そうな顔をしたけど、とりあえず友達で嬉しいと笑った。


「ああでもこれからは友達兼私の一番弟子になって貰うよ?私も呪いの研究をするから、リュートも呪いをコントロール出来るようにして、一緒に解呪の勉強をしよう」


「……ありがとう、リリア」


リュートの表情は最後まで優れなかったけど、その日は情報交換をして前から言っているコントロールの特訓をするように言い魔封じの部屋を出る。


エルク様と一緒に出ると、そこには心配そうな顔をして待っていてくれた賢者たちがいた。



「りりたんや、あの子はりりたんの友達なのかの?」


「ええ、友人です」


「それは呪いで作られた偽物の友情ではないのかい?」


「偽物だろうと本物だろうと友情です。私が彼女を大切にしたいと思っていることに違いはありません」


キッパリ言い切ると、難しい顔をしたが頷いて頭を撫でてくれた。三人に同時に撫でられてちょっと照れて笑うとおじいちゃんたちは悶えた。


「うちのりりたん可愛い…!」


「リリアはうちのです」


むむむ、と言いながらぐっとこらえたおじいちゃんずはそれでもエルク様に私を譲った。

リュートのいる部屋のドアを開けて中から4人を見せる。


「リュート、私の旦那様のエルク様と賢者のおじいちゃん達!ちょくちょくくるからこれからよろしくね!おじいちゃん達も、私の友達をよろしくね!」


そう言うと不安そうなリュートはやっと笑った。


「よろしくお願いします」


「ああ……よろしくな新米の魔女よ」


けれど急に威圧感と言うか賢者感を出して喋りだしたおじいちゃんには驚かされた。って言うか誰ですか…






「さて、りりたんや。改めてありがとう。まさか大賢者の弟子たちも道を誤っておったとはな…」


「しかしおかげで昨日からずっと隠れていた関係者たちを続々と捕縛できている。ずっとずっと探していたヤツらだったのでこちらは助かった」


魔術棟の応接間で、アイザック様と賢者達と対談をする。

私とエルク様が共に座り、向かいの椅子にはアイザック様。賢者達はその後ろに三人立っていて。

その近くに何人もの護衛も立っている。


少し考えて、エルク様の手を握ってコクリと頷くだけにしておく。すると私の意を理解してくれたのかエルク様が私を見て笑った。


「学園での謎の洗脳が始まったので振り払った迄です。気になさらず」


「そのお陰で私も、他の大多数の生徒も救われた。そしてお前もな、エルク。関係者たちのところで見つかった書類の中にはお前について書かれた物も沢山あった。今までも何度も接近しようとしていたみたいだがな」


やはりか。

イェスラの言っていた通りエルク様も狙われていた。

守り続けてくれた彼には感謝しかない。


「私を含め、今現在の学園には国の重要関係者候補と関係者が多く通っている。そこで田舎で魅了の呪いの魔女の疑惑が上がっていたリュートをぶつけてきたそうだ。少女が憧れるような展開を用意して、懐かせた上でな」


アイザック様に今回に顛末の軽い書類を渡される。

父が貴族で養女になりまるでお姫様。

そこで王子様たちが通う学園に入学して、王子様と知り合い愛されーーーーーー


何この乙女ゲーム。

まるでおと…め…ゲーム………。

乙女ゲーム、だと……


王子が2人。

宰相子息

公爵令息

隣国の王太子

王子の従兄弟



不思議な力で人々の好意を集める平民上がりの少女。



あ、うん。めっちゃ乙女ゲームっぽいですわ。

乙女ゲームの育ち方を一切してない私には全く関係ないけども。



「それでリリア。君に頼んでいた魔女の魔力を封じる結界の方はどうなっている」


「試作はできています。呪いの仕組みはわかったので、多分これで行けるかと」



改良結界魔法陣。

魔力コストをトーマ型の10分の1に抑えたそれ。

何故、トーマの魔法陣がリュートの魔力を抑えられたのか。

それは単純に物量だった。


複数種類の魔法陣。実はそれら全てが呪いに対し効果が出た。

普通なら反応しないはずの物理防御にも、精神防御でも効果があったのだ。

その理由まではわからないけれど、全てに効果が出て……全てが万全ではなかった。

つまり、私の結界同様全てが単品では漏れが生じたのだ。


防ぎきれない結界だけど、複数重ねてあるから呪いを遮断できた。

それがトーマの結界の私的見解だ。多分あってると思う。


全てに効果があるならば、その効果を高めればいい。

ということで、漏れていた結界の隙間を完全に塞いだのが新型だ。


結界は曲線を描くものが多いため定番は効果を網状にして、あみで捕える物が多い。

それを薄い板を貼り合わせるような形にした。

隙間ないそれは激しく動いたり、他者が接触したりすると揺らぐがとりあえずの試作品としては上々だ。

今後、改良を重ねていけばいい。



そう、説明をしてとりあえず精神防御で作った結界の魔法陣を提出すると殿下は頭を抱えて賢者たちは身を乗り出してきた。


「つまり呪いとは繊細な、細かな魔力による魔力障害とな!!」


「そうですね。漁師の網で砂粒を取ろうとしても無理でしょ?」


「なるほど、わしらの知らぬ魔力の世界があるんじゃな」


「既存の魔法陣ではそこまで細かな世界での効果を出すには難しいのう」


「防ぐという点では板、というものは正解じゃな。板に隙間はない。今後は板に柔軟性を加える方向で……」


「柔軟性で言うならば……」



「あああもう!りりたんなぜあと百年早う産まれてこんかった」


結論、魔力操作ができない賢者たちでは呪いが通過できない結界の作成くらいしか出来ないと知った時おじいちゃんたちに本音が溢れた。

わしも魔力操作したいーと爺泣きする賢者をアイザック様がなだめるというカオスの図。

しかもアイザック様より私に慰められたいと愚痴る不敬罪カオスの図。





でも優しい魔法使いたちに見送られて、私とエルク様ついでにアイザック様とその護衛は魔術棟を後にした。


アイザック様が賢者と一緒に話をしたいということで、まっさきに魔術棟に来る事になったせいかはわからないが。

行きはなかったはずの風船やぬいぐるみが城からの連絡通路には溢れていた。


魔術棟そのものもカラフルでファンシーな外壁をしていた。

そしてぬいぐるみに混ざって獣型の精霊も沢山いた。そこにカーバンクルが混ざって私を誘っていたのは秘密だ。

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