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エルク様を胸いっぱいどころか胸焼けするほど堪能してから部屋に戻り、お風呂とかを済ませてから私は三賢者のおじいちゃんたちに手紙を書いていた。
イェスラとリェスラは今まで私の研究に深く係わってくれた。
精霊は人とは違う魔力の使い方をするせいかその知識は斬新だ。
なのでおじいちゃん達も精霊の声が聞こえたら良いな…と思って、『私の魔石に傷つけて耳元につけたら私の精霊の声が聞こえるようになった』という情報を書き込む。
また同時に、使った私の魔石同等品です。と、数個の魔石を作って同封する。
そして封をして気づく。
そういえば、トーマのとこのフェアリーも名前つけて欲しいって言ってたっけか。今更になるけど…少し迷った末についでにトーマにも手紙を書くことにする。
本題はあの日、精霊が名前を欲しがっていたこと。
メガネの大量生産に成功して納品が可能なこと。
ついでにトーマのおかげでカメラの試作品ができたこと。
そこまで考えて面白いもんできたらくれって言われてたことを思い出す。
あいにくカメラは私の手を離れたからあげられない。
だから迷った末、精霊の声が聞こえるイヤカフを改良して同封することにしトーマへの手紙は1度机の中にしまった。
「母様、ちょっとこれ付けてくださいな」
「あらリリアどうしたのかしら?」
「ちょっと実験で、リェスラどうぞ」
『コンバンワ』
寝る前に母様を襲撃して、エルク様と同じイヤカフをつけてもらって実験する。ちなみにイェスラは男同士の会話があるって言ってエルク様のとこに残ったままだ。
「まあ。リリア、またとんでもないことしたのね?水竜の声が聞こえるわ」
「本当に!母様の精霊の声は?」
言われて母様はすぐに自分の精霊に声をかけたけど、残念そうに首を振った。
私でも聞こえないんだから、私だけの魔力じゃダメか。
ふむ、と悩んで母様に魔力を少し出してもらう。
その魔力を操って、イヤカフ包むようにする。
「これでどう?母様」
「まあ…聞こえるわ、すごいわねこれ!」
そんなちょろくて良いんですか。
あまりの簡単さに少しゲンナリとするが、母様は初めて自分の精霊と嬉しそうに会話をしていたので水を差す真似はしない。
その後母様に協力してもらった実験の末
私の魔石+ターゲットの魔力→聞こえる
私とターゲットの魔力を混ぜた魔石→聞こえる
というお手軽設計が判明したので、母様にはすぐに母様と私の魔力で作った魔石をつけたイヤカフをプレゼントした。
そして部屋に帰ってトーマの手紙にはこの魔石に魔力を纏わせて耳元に置くと精霊の声が聞こえるよ。と書き足して封をした。
賢者のおじーちゃんたちへの手紙も当然、書き足した。
そして翌日、今日はキャロル家で仕事の予定のエルク様と母様と侯爵家の仕事をこなす。
エルク様は一時期侯爵代理を務めていたおかげで侯爵としての仕事はもう完璧だった。そこに元から完璧な母様、悔しいが補助の私でサクサクと仕事をこなす。
「リリア、これありがとうね。おかげでこの子達と話せるようになってとても嬉しいわ」
「喜んで貰えてとても嬉しいです」
「それでね、父様もこれが欲しいって言っていたのだけれど作れるかしら?」
「なら今晩でも父様が帰ってきたら作りましょう」
「ありがとう、助かるわリリア」
「…じゃあリリア、イヤカフの発注をしましょうか?多分たくさん必要になるんじゃないですか」
「え、そんなにいらないんじゃないですか?」
「絶対に、いると思います」
キッパリ断言するエルク様に首を傾げるも、エルク様は大量発注を熱く押すのでそんなに言うならととりあえず100個ほどソルトに注文をした。
そして昼にはソルトから飾りっけのないやつならすぐに都合がつく。と返事が来ていて、仕事が早いなーと呑気に思いながら母様とエルク様と昼食を取る。
そして午後は暇だから父様のいる騎士団に顔を出して色々と注文したいものとか聞きに行こうかなーとエルク様のとこでまったりしていると。
「お嬢様、訪問の先触れの手紙が来ておりますが…」
「ああ、ジーク様かしら?」
「……いえそれが、色々な方から10通以上」
「はい!?」
「ああ、また一通追加のようです」
爺から渡された手紙は見たことの無い名前の数々で、その手紙にはどれも賢者の弟子と書かれていた。
そして手紙の内容はほぼ全て同じ。
精霊との会話道具を作ってくれ、だった。
「ほら、必要だったでしょ?」
そんなことを言いきったエルク様は、クスクスと笑った。
まじか。そんなにか。そんなみんな話したいのか。
「…大量生産を考慮すべきでしょうか?」
「しない方がいいと思う。これはリリアの魔石が必要だろう?リリア以外には作れないのだから、無理をしないように」
「ああ、そういえばそうですね」
そっか、そういえばそうだった。
他者との魔力を絡めて作るのは結構しんどいし、私の魔力だって限界があるし。そもそもそんなに沢山作れるものでもなかった。
「受注をするなら一日何個まで、と制限をつけてですね。これは魔法陣を使わないんだから1度作れば相当持つと思うし身近なものたちならそれで問題ないかと」
「なるほど、ありがとうございます」
余裕な範囲でなら一日5個まで。飛び入りは3個まであたりだろうか。私の一日に使う平均魔力からそう計算を逆算しているとイェスラが頭に突っ込んできてその勢いでベッドに倒れ込んだ。
「どしたのイェスラ」
『リリー俺たちは別に作ってもいいけど気をつけろよ、俺たちの声が聞こえるやつが増えるんだからなー』
「あーそっか。そういえばそっか。やだ?」
『んーん。俺は最悪魔法でリリの耳に直接話せばいーし大丈夫。でもリェスラはそれ出来ないからさ』
「そっか、リェスラはやだ?」
『聞かれて困ることは私にはないわ』
「そっか、2人とも心配してくれてありがとうねえ」
わしゃわしゃと転がりながら2人とじゃれ合う。
あーもういい子可愛い。
そんな風に3人でベッドで遊んでるとエルク様が手を止めてベッドに腰掛けてきた。
「リリア、男性のベッドに簡単に転がるものじゃないよ」
「はいっ」
そして速攻で飛び起きた。冗談だろうが無駄に色気の滴る笑顔で言わないで欲しい。エルク様の色気はもはや公害レベルだ。
「ああでも少し疲れたな。リリアおいで、休憩に付き合って」
そしてエルク様に捕獲されて一緒にベッドに転がる。
今、注意したばかりなのになんで!と思いつつ、私は恥ずかしくてもエルク様を拒めない。
「大丈夫。無体なことはしないから。リェスラとイェスラも一緒に寝ようか」
『はーい』
『良いわよ』
そして後ろからエルク様に抱きつかれる形で抱き枕になりながら
幸せなお昼寝をみんなでした。
だいぶ恥ずかしいけど、でもとても幸せだった。
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「リェスラ、イェスラ、リリアを癒してやってくれないか。多分リリアはまた近いうちに魔石を大量に作り出すと思うから」
『あ、やっぱりー?リリって集中すると限界まですぐ使うからなあ』
『言われなくたってやるわよ』




