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0歳児スタートダッシュ物語  作者: 海華
完落ち編(第5章)
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6



ぷるぷると、書類を持つ手が震える。


「こ、こ、これは…」



そんな私を見て、三賢者はニヤリと悪い笑みを浮かべた。


「ふっふっふ、りりたんの御要望は叶えられたかな?」


「わしすごい頑張ったもんね」


「いやあ久々に面白かったのう。全てが新発見というのもまた楽しいのう」


てっきりどこぞの王太子のように何かを請求されるかと思ったが、三賢者は何も言わずに透明な魔石を差し出してきた。


「これは?」


「2枚目に書いてあるがのう、ほぼ全ての魔石は属性もちの魔石じゃった。色に対応した属性の魔法陣で使った場合のみほかの色よりも魔力コストが良かったんじゃ」


「そんでこれは、数種類確認取れたヤツのうちの一つで特殊属性じゃ。わしの弟子にこれを作れる魔力を持ったやつが1人おったんじゃがこれは全ての属性の魔法で同一コストじゃった」


「試しにこれにりりたんの有形の魔法陣を試して見たら、なんと色つきで映像が記録されてのう」


「そこからはわしの力じゃ!この紙、普通の紙じゃなくて…砂より細かく砕いた特殊魔石を紙に練りこんである。魔石からこの紙に転送魔法を試してみたら上手く記録されたって訳じゃ」


「転送魔法」


つまりだ。特別な魔石と転送魔法があれば、カメラができると。写真ができると…!

エルク様の記録ができると…!



「ジーク、こっちおいで。りりたん、こやつがその魔石の元となる魔術師じゃ」


そして黄金の賢者に呼ばれてやってきた猫耳の大人しそうなお兄さんに


立ち上がって頭を下げた。


「貴方の魔力で魔石いっぱい作らせてください…!」


「り、りりたんや、そんな事しなくても協力するよなジーク?」


「あ、はい。面白そうなのでぜひとも実験に加えてください」


よっしゃ言質とった!

早速わきわきと魔石を作ろうとするが、蒼海の賢者に止められた。


「りりたんや頼みがあるんじゃ。この『カメラ』とやらの研究わしらに一任してくれぬか。無論りりたんの魔石を作る能力がなければ出来んのは重々承知じゃが…」


「試作機もあげるし、完成したらそれもあげる。じゃがわしらは賢者じゃから国にも納めないといけなくなるが…」


「この研究は面白い。りりたんの頼みじゃなく、正式にわしら一丸となって研究をしたいのじゃ。そうすると権利が国になってしまうが…」



一任するとなると、権利の問題が発生するがそもそも彼らなくしてこの発見はなかった。

もちろん私がなくてもなかった訳だが、つまりどちらも欠けてはならないのだ。


そもそも賢者様たちに作って貰って利益まるっと取り上げるとか有り得ないし、そもそも私はエルク様の写真さえあればいい。


この発明に関する利益程度、他で稼ぐことは出来る。

だがこの発明は彼らの協力が必要。


「良いですよ。私も賢者の端くれですから、魔石を作ることは精一杯協力しますのでどうぞカメラの完成をお願いします」


そういうとほっとした様子を見せる賢者トリオ。改めて宜しく御願いしますと頭を下げると、3人は嬉しそうに笑った。



その後ジークさんの魔石を、ジークさんの限界まで作り

さらに頼まれた他の魔石を私の限界まで作り、カメラ試作品である魔石と魔紙を数枚貰ってほくほくしながらエルク様と帰宅した。






「随分嬉しそうですね」


「はい!これでエルク様の写真が作れますから。帰ったら撮らせてくださいね?」


馬車で隣に座って貰った魔石を見せると、はあ。と何故かため息をつかれた。

え、なにか悪いことをしたのかと動揺するとポンポンと頭を撫でられる。ん?不機嫌?どっちだ?



「本当に妬くのが馬鹿らしくなるくらい、行動理念が私ですね」


「当たり前です…?」


「当たり前な事じゃないからね。仕方ない子だ」


キョトンとしていると何故かエルク様はくすくすと笑いだした。

よくわからないけど、私の旦那様はなにか不機嫌になって解決して自己完結したようだ。


よくわからないけど、その蕩ける瞳の笑顔が綺麗だったのでこっそり魔道具を起動させたのは秘密だ………。




それからの日々は少し変わってきた。

メガネの大量生産に向けて名乗りをあげた数百の職人が魔道具ギルドに加わり、侯爵家も協力して支社を数箇所に作った。

それらの販売ルートをエルク様と協力して大手の商会と契約して作り、検品は商会に任せることにした。



また魔道具ギルドは日々生産量が増していき大きく別れて3つの部門に別れた。


・新型魔道具を初めから終わりまで作る部門

・道具に魔法陣を焼き付けることをする部門

・上で使う一般の道具を仕入れたり作ったりする部門だ。


各部門の責任者はギルドマスターソルトに続いて残りの始まりの3人が受け持つことになった。


そして規模の拡大に伴い、魔道具ギルドは侯爵家の管理から外れることとなった。

今後は私を通さないで注文を受けることに………なると思ったら、何故かギルド構成員の顧問指導者に私の名前があった。

侯爵家から外れてもお嬢の管理からは外れてやらねえぜ!と自信満々に言いきった4人に試作品のメガネを投げつけた。


とはいえ、時折様子を見るというような挨拶をするだけになったが。




また魔術棟の方は魔石が少なくなると私の元に訪ねてくる魔術師が現れるようになった。その魔石の特殊性故来るのは大体がジークさんで、初めは先触れもなく突然訪ねてきたジークさんは門前払いをくらっていた。


だがしかしすぐに対侯爵令嬢の訪問方法を学んだらしく今ではきちんと事前に先触れを通して来訪をしてくれる。


そんな感じで気がつけば学園に行くまであと半年を切っていた。


魔道具ギルドは基本的に私の手を離れた。新製品を持ち込めば話は別だが。

カメラの研究も賢者トリオに任せているのを待つだけで。



まあ要するにあれだ。

侯爵家の仕事はあるものの、基本的に暇になった。とはいえ半年後にはまた忙しくなるが。



というわけでリェスラと共に隣のお部屋に突撃をした。



「エルク様はなにか欲しいものありませんか?」


「リリアがいればあとは割と興味無いかな」


「でもエルク様が不安にならないように居場所がわかったり、移動できたりするものがあったらいいですよねえ」


だんだんとエルク様に好意を持たれるにつれて、エルク様が色々と不安を感じてきているのは気づいている。

だから私を管理できたら喜ぶかなあと思ったのだが、

そう言うとエルク様はぐしゃっとペン先で紙を破った。


「…それは私の居場所がわかるものですか?それともリリアの居場所がわかるものですか…?」


「私はエルク様の行動を制限はしませんよ?エルク様が私を把握したいかなって」


「………正直とっても魅力的な話ですがそれはやめましょう。そのまま私の欲求を優先したらリリアは部屋から二度と出れなくなりますよ?」


エルク様推し歴4年を舐めないで欲しい。

たとえヤンデレに進化をしたとて、私の愛は冷めることは無いと断言出来る!

出来るが、まあ監禁もそれをやめたいのもエルク様の意思なら任せよう。


とりあえず肯定も否定もしないでにっこりと笑っておく。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] しかしヤンデレエルク様もそれはそれで見てみたい…( ˙-˙ )
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