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「どーもはじめまして。魔国の皇太子、トーマって、おい、うぇえ!?」
トーマ少年が怪しげな自己紹介を始めたのでダッシュで走り出す。
護衛ももちろんそれに続き、しかし運動神経が宜しくない私はすぐに慌てたピンク少年に捕まりそうになりーーーー大きくなったリェスラが私を捕獲して水が流れるように一瞬で移動した。
「早く父様にブレスレットを渡してエルク様のところに逃げるわよアスター」
「かしこまりました。水竜様お手を煩わせてすみません」
そして父様にはいコレ出来ました!とブレスレットを渡して、リェスラで高速でエルク様の執務室に行くと。
「よー、みんなここに来るって言ってたぜー」
「りーねーただいまー」
ピンク少年が居た。しかも給仕の様にエルク様に茶を入れさせていて、茶菓子も食べている。しかもピンク少年だけでなくピンク少女と、ピンクのメガネをかけたフェルナンド様もいる。
とてつもない怒りが湧いたが、
すぐに笑みで顔をおおってぺこりと淑女の礼をとる。
「おかえりなさいませフェルナンド様、それからようこそいらっしゃいました魔国の尊き方々。エルク様、来客中とは知らずに無作法失礼しました」
「ああ気にするな。リリアほらこっち来いよ。おい無器、リリアにも茶を入れてやれ」
何だこのクソガキは。
エルク様に対して失礼すぎじゃないだろうか。
お前の隣に座ってやるもんか、とエルク様の隣に立つ。
「トーマー、エルクにーにそれはやめた方がいいよー」
「は?無器なんて使えないんだから働かせないとダメだろ?」
「兄様やめた方がいいわよ。わたくしフェルに聞いたことがありますの」
「何がだよ」
レナード殿下以上のクソガキっぷり…出会った当初のレナード殿下のようだ。エルク様は気にしてないから座って良いですよと言うが、いかにエルク様の言うことだとしてもやつの隣に座る気は無い。
「りー姉、エルク様大好き過ぎてぶっとんでるからー」
「はあっ!?無器を!?」
とりあえず出会ってから四年。未だに大嫌いなレナード殿下以上にこいつは嫌い、と心に刻み付けた。
ピンクの隣に座る気はなかったが、しつこいピンクの誘いに折れたエルク様がピンクの隣に座って。
「リリア、おいで」
の一言で私は陥落して速攻エルク様の膝の上に座った。
「なあ、おい、悪かったよ」
「それではアイラ様は指輪の希望を言うために逢いに来てくれたんですね」
「ええ。あとはフェルナンド様の御家族に挨拶もしたくて。フェルナンド様ったら『すごい指輪頼んだよ』って言うばかりで詳細教えてくれないんですもの」
「教えるも何もすごい指輪が全てだったしねー」
本当だよ詳細もなにも『すごい指輪』しかこっちにも情報はないですよ、とはさすがに飲み込んだ。
えへへと笑うフェルナンド様ともう!と拗ねてみせる。
アイラ様は本当に仲が良さそうで何よりだ。
「で、アイラ様はどんな指輪がいいですか?どんな効果とかもできるだけ善処しますが」
「そうねえ…フェルナンド様を常に感じられるようなものがいいわ」
ざっくばらんすぎではないでしょうか。
なんだこの破れ鍋に綴じ蓋かっぽう。
「それいいねー。僕もアイラのことがずっと好きでいられる指輪がいいなあ」
おい、無茶ぶりおい。
顔面に貼り付けた猫もそろそろ限界を迎えそうな無茶ぶりでぷるぷるしだしたのがわかったのか、私の心労を察したのか。
そっとエルク様に手を握られた。
その温もりで、全てがどうでも良くなってきた私はたいがいちょろいと思う。




