表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水属性の魔法使い  作者: 久宝 忠
第二部 第四章 マファルダ共和国
367/933

0342 ニール・アンダーセン 【第二巻発売記念早出し投稿!】

『水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編Ⅱ』の発売を記念して、

本日は二本投稿です!


次話「0343 チェーザレ」は、いつも通り21時に投稿します。

『カフェ・ロワイヤル』から出てきた涼は、幸せに満ちていた。

それも当然であろう。

住所を聞くために入ったカフェが、驚くほど美味しいケーキを提供していたのだ。

自分の幸運に感謝した。


((これも、日頃の行いの成果ですね))

((え?))

『魂の響』で繋がった王様は、なにやら不満があるらしいが、涼は無視する。



教えられた住所は、『カフェ・ロワイヤル』の道路の反対側。



少し大きめの、普通の一軒家。


涼は知らないが、この界隈(かいわい)は土地代がかなり高いため、この辺りに家を持っている人間というのは、ありていに言ってお金持ちなのだ。



「すいません、魔法使いのニール・アンダーセンさんに、手紙をお届けにあがりました」

涼は扉を叩き、出てきた女中さんらしき人に、そう言って預かった手紙を見せる。

「申し訳ございません。ご主人様は、ただいま外出しておりまして……」

女中さんは、申し訳なさそうに答える。


「ああ……、依頼主から、直接ご本人に手渡しするように言われておりまして……」

涼は、事情をきちんと説明する。

いきなり、帰るまで待たせてもらいます! とか言ったら、帰ってくるのが数日後の場合、大変なことになる……。


「ご主人様は、もうすぐお帰りになると思います。どうぞ、中でお待ちください」

「では失礼します」

それほど時間はかからなさそうだ。



そんな涼を、カフェの時と同じ場所から監視するバンガン隊長と、アマーリア副隊長。


そして、二人を監視する別の者たち……。




二十分後。

「戻ったぞ。どなたか見えられているのかな?」

「おかえりなさいませ、ご主人様。ご主人様に、直接渡すお手紙をお持ちの方がいらしています」

女中さんのそんな声を背後に聞きながら、男性が扉を開けて、涼が待つ応接室に入ってきた。


二メートル近い長身であるが、ほっそりした感じ。

白髪は、短く揃えられ、鷲鼻(わしばな)、そして、左目にはモノクルと言われる片眼鏡をかけている。

少し神経質で、怖そうな印象を受ける。


涼は、立ち上がって挨拶した。

「私は涼と申します。お手紙を預かってまいりました」

そう言うと、涼は手紙を渡した。


「ふむ」

魔法使いニール・アンダーセンはそう言うと、手紙を受け取って、差出人を見る。

「サカリアス枢機卿?」

そう言って一読する。


「はて……なぜ、いまさら?」

そう呟くのが涼にも聞こえた。


「もし、返信などがあれば、受け取りますが?」

涼はいちおう問う。

その辺りがあるかどうかは、分からないとヒューからは言われているのだ。


「いや、よい。わしの引き抜きの話じゃ。今までも何十回と断ってきた話じゃし、最近は無かったのじゃが……なぜこのタイミングで?」

ニール・アンダーセンは、ふと目の前の涼を見る。


「お主は……リョウと言ったか。リョウ殿は、教会の者ではあるまい? なぜこの手紙を預かってきた?」

「はい……私は、実は中央諸国からの使節団の者で……」



簡単に説明をした。



「なるほど……」

ニール・アンダーセンはそう言うと椅子に座った。

涼にも着席を促して、言葉を続けた。


「表におった者たちは、お主が?」

「いえ……二人の監視者は、私が国境を越えてからずっとですので、この国の諜報機関でしょう。ただ、その二人を監視している者たちは、今日から増えた者たちですので、ちょっとわかりません」

「ふむ。そこまで気づいておるのなら、わしが出る幕は無いな。おそらく、この手紙を持たせた者の狙いはわしではなく、お主、リョウ殿であろう」

「あら……」



ヒューにも言われていた。何かあるかもしれないと。



「ちょっと、この国の置かれた情勢がよくわからないのでお尋ねしたいのですが……。もし、中央諸国からの使節団の人間が、共和国内で死んだりすると……何か大きな問題が起きたりしますか?」

涼は、直接、全部尋ねてみることにした。

どうも、目の前の魔法使いは、いろいろと国レベルの事情にも通じているようだし……。

枢機卿が、何度も引き抜こうとした人材でもあるみたいだし。


「そうじゃな……」


ニール・アンダーセンは、少しだけ考えた後に、言葉を続けた。


「今、この共和国は、西の隣国シュターヘン連合王国と戦争になろうとしておる」

「なんと……」

「まあ、共和国は、よく戦争に巻き込まれるから、それ自体はよくあることなのじゃが……今回はちと厳しいらしい。厳しい理由は、さすがにここでは言えぬが、負ける可能性がある。元々、シュターヘン連合王国は軍事大国じゃから、純粋な戦力比では厳しいのじゃ。今回は、それがもろに出るであろう。それと同時に、他国、というより教会が介入してくる可能性が非常に高い」

「教会?」

「うむ。教会が介入するということは、ファンデビー法国軍が介入するということじゃ」

「ですが……法国は、この共和国とは国境を接していませんよね?」


涼は、西方諸国の地図を頭に浮かべながら答える。


「そうじゃが、それは関係ないのじゃ。共和国以外の全ての国は、教会の支配下にあるからの。好きなように国内を通過できる」

「なるほど……」

「何百年も、教会にとってこの共和国は、目の上のたんこぶ……。今回は、滅ぼす千載一遇の好機じゃ。たとえ中央諸国からの使節団を迎えている重要な時期であったとしても、軍を派遣するであろう。おそらくゴーレム兵団を」

「ゴーレム兵団!」


思わず興奮して声を上げてしまう涼。

それを、(いぶか)しげに見るニール・アンダーセン。


「あ、失礼しました。ゴーレムに興味がありまして……」

「ほぉ。お主は……その様子からすると、魔法使いであろう? 錬金術も嗜むのか?」

「はい。まだまだ若輩者ですが……大好きです」


涼はそう言うと、笑った。


その笑顔を眩しそうに見るニール・アンダーセン。

何か、かつては持っていたが、今は失ってしまった情熱に、久しぶりに出会ったかのような……。


「錬金術の頂は遥か高いと聞く。頑張られよ」

「はい、ありがとうございます!」




「おっと、そうであった。お主に何かあった場合、何か起きるのかであったな。はっきり言ってお主が死ぬと、中央諸国からの使節団を受け入れている法国が、大手を振って介入してくることになる」

「あら……」

「まあ、おそらくは、死なずとも、介入してくるであろうが……。大義名分が一つ増えるかどうか、くらいの違いであろう」

「その程度のために死にたくはないです……」


ニール・アンダーセンのあんまりな説明に、小さく首を振ってため息をつく涼。

死にたくはないし……大義名分を一つ増やすために殺されるのは、あんまりだ……。



「監視している二人は別として、他の監視者たちは、私を殺すためでしょうか?」

「いや……見た感じ、まあ見てはいないが、感じとしては、諜報特務庁の二人を殺すのが主目的のように見えたが……。機会があれば、お主も殺そうとするかもしれんな」


涼は、この時初めて、共和国の諜報機関が、諜報特務庁という名前であることを知った。



その後もいくつか話をして、涼はニール・アンダーセンの元を辞した。




「まさか、ニール・アンダーセンの元に行くとは……」

「彼も、錬金術師?」

バンガン隊長とアマーリア副隊長は、ニール・アンダーセン宅に入っていった涼を見て、相談をする。


その後、掌に収まる程度の小さな箱に向かって、何か言い始めた。

時々、それを耳に当てて、何か聞いたりもした。

通信用の道具らしい。



「本庁に報告した。このまま、ロンド公爵を監視しろ、だそうだ」

「交代要員とかは……」

「ああ、ない」

バンガン隊長はため息をつきながら答えた。

同様に、アマーリア副隊長もため息をついた。


「あと、気になることを言っていた。ルーシャー隊との交信が途絶えたらしい」

「え? ルーシャー隊って……誰か、教会関係者を監視してましたよね?」

「ああ、五日前に入国した枢機卿だな。サカリアス枢機卿」

「教会関係者が動き出したのかしら……」

「わからん……」



二人がそんなことを話していると、涼がニール・アンダーセン宅から出てきたのだった。




((アベル。アベルならどんな場所で襲撃しますか?))

((は? 藪から棒になんだ?))

((アベルは、経験豊富な冒険者だったので、罪のある人も罪のない人も、いっぱい襲撃してきたでしょう? どんな場所が襲撃しやすいですか?))

((うん、ものすげー理不尽なことを言われた気がするな。まあ、普通に考えて、人気の少ない場所だよな。それに、昼間より夜の方がいいだろ?))

((いえ、夜は客室露天風呂に入って、美味しい晩御飯を食べて、フカフカのベッドでゆっくり寝るのでダメです))

((そうだな、リョウならそんな感じの事を言うだろうと思ってたよ……))


『魂の響』を通してそんな会話を交わしながら、涼は市街地を抜けて、だんだんと街外れの方に歩いている。

パッシブソナーで探る限り、特務庁の二人と、それを追う六人は、ずっとついてくる……。



「こんなところでしょう」

涼はそう言うと、立ち止まり、後ろを振り返った。


そして、叫んだ。


「諜報特務庁の二人、あなたたちは命を狙われています」


「!」

二人の驚きが、伝わってきた。

まさか、監視がばれていないとは思っていなかっただろうが……自分たちの命が狙われているとも思わなかっただろう。



カキンッ。カキンッ。



二人が潜む藪から、硬質な物が、投げナイフを弾き返した音が聞こえた。

慌てて、二人が藪から出てくる。


「二人とも、こっちへ!」

涼が叫ぶ。

二人はほとんど考えることなく、走り出した。


そこに、後ろから襲いかかる投げナイフ。


カキンッ。カキンッ。


先ほどと同じ音。

見えない氷の壁が、投げナイフを弾き返したのだ。



遠距離での攻撃では倒せないと悟ったのであろう。

六人の襲撃者が姿を現した。


本日2021年6月19日(土)

『水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編Ⅱ』の発売日です!


第一巻にも載っていた「外伝 火属性の魔法使い」の続きが載っております(2万4千字)

はたして、オスカーは救われるのか!

もちろん、次の第三巻、第四巻にも続きが載っていきますからね。



本編では、ついに、なろうのWeb版から離れていく部分が出てきます。新キャラ登場!

その結果、書籍版の第一部最終話がWeb版とは異なる展……ゲホッゴホッ。


こ、これ以上は言えません。


第二巻は、全部で四万字程の加筆、更にいくつもの改稿がなされております……。

第一巻同様、二十三万字弱の大ボリュームです!

文庫本二冊分以上!


お得ですよ!



第二巻の後ろの方に、コミカライズ冒頭7ページが載っております。

いいですよ! いい感じですよ!

コミカライズは墨天業 (ボクテンゴウ)先生が描いてくださっております。

https://twitter.com/gon_take


先生のバトルシーンとか、筆者は大好きです。

きっと、『水属性の魔法使い』のバトルシーンもカッコよく描いてもらえるはず!


「テヅコミ特設サイト」で先生の『京獣物語』を試し読みできますよ!

https://tezucomi.net/



「0330 金色の目」のあとがきでも書きましたが、

『水属性の魔法使い』の書籍版は、【四巻までの制作が決定】しております。(五巻以降は売上次第)

ですので、「二巻で打ち切り」というようなことはありませんので、

安心してお買い求めください!



またしばらくしたら、第三巻についての情報も公開いたします。

第三巻、間違いなく、なろうで読んでいる全読者が、

買いたくなる……!


だって、書いた筆者が、何度も読み返したいですもん。

その情報も、お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『水属性の魔法使い』第三部 第4巻表紙  2025年12月15日(月)発売! html>
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ