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水属性の魔法使い  作者: 久宝 忠
第一部 第九章 コナ村
176/933

0164 <<幕間>>

連続幕間の最後です。

本日は二話投稿です。

「はぁ~」

内務省から戻って来た主任研究員にして男爵、ケネス・ヘイワードは、深い、深いため息をついた。


「おかえりなさい」

すかさず、部下であるラデンが紅茶を入れてくれた。

「ああ、悪いね」

ケネスはそういうと、座って、紅茶を一口飲む。

「ヴェイドラの開発は、今月も凍結のままだ」

苦々しげに言った。

「そうですか……」

ラデンも深いため息を吐いた。



ここは王立錬金工房。

様々な錬金道具の製作、研究開発が行われており、ケネスはその中心の一人である。

そのため、ヴェイドラ以外にも様々な研究開発を進めており、仕事には事欠かない。

もちろん、それらの仕事も進めているのだが、国の存亡にかかわるヴェイドラの開発は喫緊の問題であるとケネスは思っていた。

もちろん、『王都騒乱』によって混乱した王都の諸機能が、未だ回復していないことは理解している。


だが、だからこそ、進めなければならないのだ。


世界は決して優しくない。

弱点があれば、そこを集中的に攻めてくる……隣国とはそういうものなのだ。

男爵とは言え、一介の研究員で錬金術師に過ぎないケネスにはどうにもならないが……。



ふと、ケネスは左隣の席を見た。

そこは、空席。

かつて、ケネスと共にいくつもの錬金道具を開発し、ケネスと共に天才錬金術師の名をほしいままにした男が座っていた席。


ケネスは未だ二十代そこそこであるが、その席にいた彼は、すでに六十歳を超えていた。


積み重ねた実績、ケネスに並ぶ発想力、それら全てにケネスは憧れ、心の中では師と仰いですらいた。

本籍は魔法大学にあったため、この錬金工房へは出向扱いであったが、ケネスはよく可愛がってもらったのだ。

孫ほどの年齢でありながら、知識と経験を砂が水を吸い込む様に吸収していくケネスを見る目は、非常に優しかった。


だが……。

「フランクがいなくなって、もう二年か……」

フランク・デ・ヴェルデ。

かつて、ケネスと並ぶ天才錬金術師と呼ばれた男の名である。


次話「0165」より、新章「第十章 インベリー公国再び」が始まります。

今話0164は、そのプロローグ。


「0165」は、いつも通り21時に投稿します。

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『水属性の魔法使い』第三部 第4巻表紙  2025年12月15日(月)発売! html>
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