0142 <<幕間>>
王都騒乱が起きた時、コーンはすでに王都を出ていた。
インベリー公国のC級冒険者コーン。
それは事実である。
だが彼は、公国政府と極めて近しい関係でもあった。
王都の冒険者ギルドに顔を出したコーンは、そこに自分宛ての手紙が届いているのを確認した。
「すぐに大使館へ」
極めて短い文面。だが、それだけに緊急性を感じさせる手紙である。
インベリー公国大使館。
そこで身分を確認され、公国政府直々の指示書を受け取る。
内容を確認して顔をしかめた。
指示書は、暖炉の火に投げ込み、全て燃え尽きるのを確認した後で部屋を出る。
「大金は入るんだが、いつもながら危険すぎる潜入だろ……」
小さく呟くと、そのまま王都を出たのだ。
その結果、王都の騒乱に巻き込まれることもなかった。
公国政府の指示書。
簡単に言えば、スパイ活動の指示である。
公国は、完全独立から十年と、まだ非常に若い国家だ。
官僚機構はともかく、優秀と言われる諜報組織ではあるが、規模はまだまだ小さいものであった。
だが、小国が生き残るのに、情報収集は肝である。
そこで公国政府は、公国に所属する冒険者の中から、忠誠心の篤い者を中心に、諜報活動に従事させていた。
抱える資源から、小国の中ではかなり裕福な部類に入るインベリー公国だからこそできる力技。
しかも、選ばれる者たちの多くは、十年前の『大戦』で公国の裏工作に従事し、連合に裏から打撃を与えて戦った者たちであった。
決して使い捨て用途ではなく、公国にとって非常に有用な人材であり、公国がわずか十年でかなりの力をつける、その要因の一つとなっていたのである。
コーンは、そんな冒険者の一人であった。
そして、今回のコーンの行先は、ハンダルー諸国連合首都ジェイクレアとなっていた。
本日も幕間二話投稿します。
次話0143は、いつも通り21時に投稿します。




