0114 <<幕間>>
涼とウィリー王子が、襲撃された場所に着いた時には、ほとんど何も残っていなかった。
誰かに回収されたらしい。
とりあえず、何も残っていないことを確認した二人は、ウイングストンに向かうことにした。
ウイングストンは、王国東部最大の都市であり、この場所から最も近い街でもある。
ロドリゴ殿とコーンらと合流できれば一番良い。
合流できなくとも、最悪、馬車を雇ってウィリー王子を王都に連れて行き、その後で伝えるという方法でもいい。
「いえ、まず何としても合流をしましょう。私の到着は、多少遅れてもかまいません」
涼が提案すると、ウィリー王子はその提案を言下に拒絶し、ロドリゴ殿らとの合流を最優先とした。
雇い主の意向が最優先である。
それに、部下の事を大切に思う行動は、見ていて、素直に好感が持てたのだ。
「わかりました。そうしましょう」
二人がウイングストンに着いて、最初に向かったのは冒険者ギルドであった。
護衛冒険者リーダーのコーンは、インベリー公国のC級冒険者である。
涼が王国の冒険者であることは知っているから、連絡を取る手段として冒険者ギルドを介する可能性がある、そう判断したのだ。
身分を隠すつもりでもない限り、冒険者はギルドを積極的に利用する。
「はい、インベリー公国C級冒険者コーン様から、D級冒険者リョウ様宛てに、手紙を預かっております」
受付嬢は、涼のギルドカードを確認した後、そう言って、奥から一通の手紙を持ってきた。
中には、一行の宿泊場所が書いてあった。
こうして、涼とウィリー王子は、ロドリゴ殿とコーン、他の護衛、冒険者たちと、数日ぶりの再会を果たしたのであった。
数日後、ウイングストンを発した一行。
だが、いくつかの変更点があった。
見た目は、元通りであるが……。
襲撃によって、ジュー王国が発行した信用状の類が全て失われたため、ウィリー王子とロドリゴ殿はお金を自由に下ろせなくなっていた。
この、国発行の信用状があれば、各国の商人ギルドで、現地のお金を調達することが出来るはずだったのだが……。
現在は、涼が二人の必要な費用を立て替えている。
「申し訳ありません、リョウさん」
何度目かのウィリー殿下の謝罪である。
「いえ殿下、お気になさらずに」
ちなみに、涼とウィリー王子が合流する前の宿代は、コーンの財布に入っていたお金で賄っていたらしい……。
「王都に着いたら、大使館からお金を出してもらえるのでしょう? それなら大丈夫ですから。今のところ、お金には困っていませんから」
王国内に入ればこっちのもの!
インベリー公国公都アバディーンで、お金がなくて絶望の虜となった涼は、すでにそこにはいなかった。
代わりに、自信に満ち溢れた涼がいたのである。
短くてすいません…幕間ですので……。
明日(27日)12時に、もう一つ幕間を投稿します。
その後、21時に本編『0116 王都』を投稿します。
それをもって、新章開幕となります!
新章は、『第八章 王都騒乱』です。お楽しみに。




