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うんうん。ところで双魔くん?

「早速楽しそうで何よりだな」


 双魔が朗らかに笑うとティルフィングたちは弾けるような満面の笑みを浮かべた。


「うむ!シュウンとセイリュウのおかげだ!水を操る権能というのは楽しいし便利なものだな!」

「私も……ハァハァ……おかげさまでお姉様を堪能させていただきましたわ!」

「……たはは」


 二人に褒められて朱雲はすっかり復活したようだ。一応、後ろで青龍偃月刀が腕を組んで渋い顔をしているが、もう何も言うつもりはないようだ。


「うんうん。ところで双魔くん?」


 ロザリンがちょいちょいとシャツの裾を引っ張ってきた。ロザリンがこうするのは何かを言いたいときだ。そして、促さずともすぐに言いたいことを言う。ロザリンは一歩下がってすらりと美しい手足を大きく動かしてくるりと一回転した。


「水着、どうかな?大胆なやつにしてみたよ?双魔くん、嬉しい?」


 はたと、双魔の視線はロザリンに釘付けられてしまった。ロザリンは当然のことながら水着だ。翡翠色のハイネックビキニ。すらりと長い手足に自己主張の大変強い胸、くびれた腰にうっすら浮き出た腹筋。そして、しっかりと鍛え上げられた臀部。普段は下ろしている髪も今日はアップのポニーテールにまとめ上げられて首周りの白い肌も眩しい。


「………」


 赤の他人なら目をそらすところだが、目の前にいる美少女は見てもいい、むしろ双魔に見られたいと望んでいるのだ。見ない道理はない。思わずじっくり、言葉もなく頭の天辺からつま先まで視線を巡らせてしまった。


「……双魔くん、えっち?」

「あ……いや、よく似合ってます。綺麗です。え、えっちって俺のことですか?」

「喜んでもらえたならよかった。じゃあ、私の番は終わり」


 ロザリンは双魔の質問には答えずに、口元に微かな笑みを浮かべると、そのまま身体を翻し、跳び上がると宙に綺麗な弧を描いてざぶんと海の中へと消えていった。残された双魔が片目をつぶってこめかみをぐりぐりと刺激していると、何かを求めているような残った面々と目が合った。


(まあ……そういうことだな)


 ロザリンのおかげで、流石の双魔も今、自分が何をすべきかは理解できた。そして、今までの経験から、下手に言葉を選ばずに思った通りに言えばいいことを双魔は知っている。


 双魔は、まず、ティルフィングとレーヴァテインと向き合った。


「む?」

「なんですか……じろじろと」


 双魔に見られて、ティルフィングはこてんと首を傾げた。頭の動きにつられて白銀の長い髪がさらさらと揺れる。レーヴァテインの方はというとムスッとしてティルフィングの後ろに隠れるようにしている。とはいっても背はティルフィングの方が低いので全く隠れられてはいないのだが。


 二人は色違いの同じデザインの水着を着ている。フリルの可愛らしいシンプルな三角ビキニで、ティルフィングは白を基調にところどころに蒼のラインが入っているもの、レーヴァテインは黒を基調に薄紅のラインの入ったものだ。


(なるほどな。イメージカラ―を交換してるってことか)


 背丈、髪と瞳の色以外は瓜二つの姉妹がお揃いの水着を着ているというのはとても微笑ましい。自然と双魔の顔にも笑みが浮かぶ。


「ティルフィング、レーヴァテインも。よく似合ってるな、水着」

「うむ!そうだろう!いつの間にか宗房がこしらえてくれたのだ」


 職人気質の“錬金技術科の怪人”がいつの間にか完璧な仕事をこなしてくれたらしい。あとで礼を言っておかなくてはいけない。ティルフィングはぴょんぴょん跳ねて喜んでいるが、レーヴァテインは憮然としている。双魔の誉め言葉はお気に召さなかったらしい。


「別に、私は双魔さんに褒められても嬉しくはないですわ。まあ、あの変態さんは変態さんなのに服飾の腕が一流で……なんというかそこは釈然としませんわね……」

「ティルフィングとお揃いのデザインだろう?仲がいい姉妹って感じで、いいんじゃないか」


 契約遺物となって、以前よりは多少マシになったレーヴァテインのつっけんどんが、双魔の一言で一瞬のうちに満面のとろけるような恍惚とした笑みへと変わる。


「っ!?双魔さんにしてはいいところに気が付きましたわね!そうですの!私とお姉様は仲の良い……仲の良い姉妹ですわ!」


 レーヴァテインは真っ青な空を見上げながら双魔の言葉を噛みしめると、感極まって後ろからティルフィングに抱き着いた。すっかり慣れたのか、強烈なバックハグをされているのに、ティルフィングはどこ吹く風だ。


「ソーマにも褒めて貰もらえたし、我は泳ぐぞ!うおーー!!」

「お姉様!私たち仲の良い姉妹ですわよね?ね?」


 レーヴァテインを引きずりながら海へ飛び込んだティルフィングの豪快さと二人の様子に双魔の頬は緩むばかりだった。



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