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助っ人と言えば!!

 「それで?どうして梓織たちが?」


 騒がしくならないように店を出た後、イサベルは目の前に並んだ三人娘にジトーッと疑うような視線を向けた。梓織とアメリアは苦笑いだが、愛元はいつも通り欠伸をしながらどこ吹く風だ。昨日、試験が終わった後に、四人でお疲れ様会をしたのだが、その時は何も言っていなかった。聞いていない梓織たちの登場に、イサベルは釈然としない。


 「内緒にしてたら、ベルは驚くかなって、アメリアが」

 「アタシは試しにいっただけッス!やろうって言ったのは愛元ちゃんッスよ!」

 「ふぁー……はふっ……そうでしたかな?」


 そこで、イサベルの不満を察したのか、鏡華が間に入る。


 「うちが頼んで来てもろうたんよ。前にお洋服を選ぶときに助けてもらうたさかい。今日も色々と教えてくれたらええな、って」

 「いえいえ、あの時はデートの邪魔をしてしまったというか……」

 「アタシと愛元ちゃんは、伏見くんにスイーツをごちそうになっただけッスし……」

 「いや、伏見殿の懐の深さを存分に見せつけられましたなー」

 「って、言ってますけど……」

 「ほほほ!ええの。うちも双魔も嬉しかったさかい。イサベルはんも拗ねへんの。大方、住むのが別になって、梓織はんたちも寂しいんとちゃう?」

 「鏡華さん!」


 意外と図星をついていたのか、梓織が慌てる。そう思われていると思うと悪い気もしないというか、悪い気になるというか。イサベルは態度を普段通りに戻す。


 「まあ、そういうことなら仕方ないわね。ああ、梓織もアメリアも愛元も。こちら朱雲さんとアメリアさんよ」

 「関桃玉朱雲です!朱雲で構いません!以後よしなにお願いいたします!」

 「あ、その……クラウディア=フォン=パラケルススです。よろしくお願いします」


 二人とも礼儀正しくぺこりと頭を下げて日本式に挨拶をする。


 「幸徳井梓織です。梓織でいいわ。よろしくね」

 「アメリア=ギオーネ!アメリアでいいッスよ!」

 「左慈愛元であります。朱雲殿にご挨拶はよいかと思われますがー。クラウディア殿はよろしくでありまーす」


 三人娘もいつもの調子で挨拶を返す。愛元は朱雲と同郷で顔見知りなのだが、一応それにも触れた。


 「私、ロザリン。ロザリン=デヒティネ=キュクレイン。ロザリンでいいよ?」

 「ロザリンさん?どうしたんですか?突然……」


 自然なようで不自然な流れで自己紹介をしたロザリンにイサベルが反応した。今は双魔がいないので、場を回す役目がイサベルに回っているのだ。


 「三人とも、イサベルちゃんのお友達って知ってるけど、あんまりお話したことないから」

 「そうですか……」


 そう言って、梓織たちの方を見ると、顔に「確かに」と書いてあった。やはり、ロザリンはそのあたりは気が回るのだ。


 「さぁて、顔合わせも済んだし、せやねぇ……二組に別れよか?」

 「そうですね。八人で歩き回ったら他のお客さんの迷惑でしょうし……」

 「ではー、組み合わせはー、こちらでどうぞー」


 間延びした声で愛元が長く伸びた袖を捲って、グーに握った手を差し出した。手の中には、いつの間に用意したのか、八本の紙縒りが握られていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 「それで、この組み合わせになったのね」

 「何だか、ベルと一緒だと代わり映えしないわね……いえ、そんなことはないわね」


 同じ組になったイサベルと梓織は並んで歩きながら後ろを振り返った。


 「ふぁ……ふっ……」

 「……zzz」


 そこでは、ロザリンが小さく欠伸をしていて、愛元は半分寝ながら歩いている。引いた紙縒りの先は、色染めの無い白と赤の二つだったのだが、こちらは白チームだ。


 イサベルからすると梓織が一緒だと心強い。双魔との関係でやきもきしている時はいつもアドバイスしてくれているので、頼りやすい。一方、ロザリンのことはよく分からなかったりする。一緒にショッピングに来るのは、確か今日が初めてだ。愛元はいい意味でいてもいなくても変わらない。そう思っているのは、梓織も同じのようで……。


 「愛元はいつも通りだとして、ベル、ロザリンさんと買物なんてしたことあるの?」

 「ないはずだけれど……そういえば、双魔君がちょっと世間知らずのところがあるから気をつけてあげて、って言ってたけれど……」


 イサベルが家を出る前に双魔にロザリンのことを見ていてやって欲しいと頼まれたのを思い出す。

 歩いていると、夏季限定で特設された水着コーナーに辿り着く。その直後だった。


 「おっ、お客様!どうなさいました!?」


 店員の慌てた声が真後ろから聞こえたので、イサベルと梓織はそちらを見た。すると、そこには着ていた水色のブラウスを脱ごうとして、店員に止められるロザリンがいた。


 「うん?この水着、来てみようと思って」

 「こちらにフィッティングルームがございますので!」

 「そうなの?」


 きょとんとした表情のまま、店員に案内されていくロザリンの姿に、イサベルと梓織は双魔の言っていたことが身をもって理解できた。


 「……伏見くんが言ってたのは、ああいうことなのね……」

 「気をつけてあげなくちゃ……愛元も、しっかり起きて」

 「zzz……おおっ!これは失礼」


 うとうとしていた愛元を起こして、一先ず試着室に案内されるロザリンについていく。


 「そういえば、伏見くんは?普通、水着とかって彼氏と選びに来るものじゃないの?雑誌とかでもよく見るし」

 「それは……その、恥ずかしいというか……どんな水着か海で見せて……双魔君を驚かせてあげたいというか……」


 イサベルの横顔がしっかり者から、恥じらうように変わって少々しどろもどろになる。見慣れた恋する乙女モードだ。


 「まあ、そういう考え方もあるわね」


 いじらしい親友の姿に、今日もしっかりサポートしてあげようと心に決める梓織であった。


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