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【おかげさまで100万PV到達!!】ー盟約のティルフィングー  作者: 精神感応4
第7部『龍桃烈女来る。訪れた中華動乱』エピローグ
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宴の前に

 「……自分で拭くって言ったのにな……」


 結局、断るに断れず、双魔はイサベルに身体を拭いてもらった。汗で少し気分が悪かったのは事実なので、お蔭でさっぱりした。因みにレーヴァテインは剣気を散らされてダウン中だ。


 「拗ねてるのかしら?仕方ないでしょう、身体が痛くて腕がいつも通りに動かない状態なんだから」

 「……それはそうだが……イサベルに申し訳ないというか」

 「いいのよ!私がしたくてしてるんだから……双魔君も私を助けてくれるし……恋人ってそういうものでしょう?」

 「……ん、ありがとさん」

 「……うん……はっ!」


 双魔がイサベルの手を握ると、イサベルも優しく微笑んで握り返してくれた。が、イサベルは何かを察したのか、すぐに顔から笑顔が消えた。ふと、鏡華の方を見ると物凄くいい笑顔でこちらを見ている。


 「ほほほ、恥ずかしがらんと!ここにはうちらしかおらんさかい」

 「そっ、そんなこと言っても鏡華さんだって、私たちがいたら恥ずかしがるじゃないですか!」

 「…………そんなことあらへんよ?」

 「今の沈黙は何ですかっ!?」


 鋭く切り返されて図星を突かれるとは思わなかったのか、鏡華が一瞬、静かになったのを見逃さずにイサベルがさらに切り込む。


 「二人とも恥ずかしいの?私には分からないけど」

 「ロザリンはんは!」

 「別だと思います!」


 無敵の第三勢力の参戦に鏡華とイサベルが即時に手を組んだところで、ティルフィングが心配そうに腕をペタペタと触れてきた。


 「ソーマ、大丈夫か?痛むのだろう?」

 「ん、もうしばらくすれば立てるようにはなると思うけどな……それよりも……」

 「……お姉様には叱られてしまいましたし……おかしな勘違いをされてしまったかもしれませんし…………あれもこれも全部双魔さんが悪いのですわ……それなのに契約してしまって…………」


 双魔の視線の先では、ダウンから復活したらしいレーヴァテインが床に体育座りをしてブツブツと何やら呪詛めいた雰囲気で呟いている。


 「うむ、アレはしばらく放っておけばいいと思うぞ?」

 「……そうか」

 『し、失礼しますっ!双魔殿のお着替えはお済でしょうか?他の皆さんも……入っても問題ないでしょうか?』


 ティルフィングがレーヴァテインをバッサリと切り捨てたタイミングで扉の向こうから朱雲の声が聞こえてきた。双魔が皆を見ると全員頷いた。


 「ん、大丈夫だ。ティルフィング、開けてきてくれるか?」

 「うむ、任せておけ!」


 ティルフィングがトテトテ扉に向かって、取っ手を引くとそこには頭を深く下げた朱雲の姿があった。


 「さっ、先ほどは申し訳ありませんでした!そ、双魔殿の……は、は、裸を……」

 「気にしなくていいから。こっちこそ見苦しいものを見せて悪かった」

 「み、見苦しいなんて……とんでもないです!」


 あまりに申し訳なさそうに、恥ずかしそうに頭を下げる朱雲を見て思わず笑ってしまった。こちらとしてはお互い悪いことはしていないという認識なので、只々微笑ましいだけだ。


 「双魔くん、双魔くん。朱雲ちゃんが双魔くんを助けてくれたんだよ?お医者さんの手配とかもしてくれたし」

 ロザリンはそう言うと、金蛟剪が去った後に力尽きて地面に落下を始めた双魔たちを朱雲が素早く救出して、宮殿まで運び込み、処置が済むまで部屋の外で待ってくれていたこと。その後もずっと気遣ってくれていたことを教えてくれた。


「そうだったのか……ありがとう、朱雲」

「いえいえそんな!拙こそ双魔殿たちには国を救っていただきました!当然のことをしたまでです!」

「そうそう、当然のことをしたまで。朱雲ちゃんの言う通り」


 謙遜してか激しく頭を振る朱雲に賛成して、こちらは穏やかに頷きながら白徳が部屋に入ってきた。首の動きに合わせて玉のピアスで飾った耳朶がぷるぷると揺れている。服装も戦装束から、出会った時の平服に着替えている。


 「……白徳殿」

 「お邪魔するよ。具合はどうかな?鏡華ちゃんも」

 「お陰様で」

 「ほんにおおきに」

 「それならよかった!実は宴の準備をもう済ませてあるんだ。良かったら着替えて楽しまないかい?」


 双魔と鏡華頭を下げると、白徳は「それはよかった!」と言わんばかりに、再び頷いた。そして、そのまま宴会に誘ってくる。


 「宴?」

 「ご馳走をたくさんご用意しました!」

 「「ご馳走っ!?」」


 ティルフィングの頭の上にクエスチョンマークが浮かんだのが見えたのか、朱雲が白徳の言葉に補足すると、食いしん坊コンビが途端に目をキラキラと輝かせた。


 「それじゃあ、お言葉に甘えて」

 「そう来なくっちゃ!それじゃあ、朱雲ちゃん案内してあげて。ああ、アッシュ君たちはもう広間で待っているから安心してね」


 双魔が代表してそう言うと、白徳は胸の前で両手を合わせて喜んだ。


 「早く行くぞ!」

 「はっ!?お姉様!お待ちになって!」


 ティルフィングが我先にと部屋を出ようとすると、それに気づいたのか、レーヴァテインも慌てて後を追う。


 「お腹空いた。中華料理はあんまり食べたことないから楽しみだね」

 「ヒッヒッヒッ美味い酒もあるだろうな」


 ロザリンとゲイボルグもマイペースに廊下の方に歩いていく。


 「おっと、双魔君は少し待って欲しいな。君と二人で少し話しておきたいことがあるんだ」


 双魔もベッドから立ち上がろうとした時だった。白徳に引き留められる。


 「そしたら、うちらは先に……」

 「ん、分かった」


 重要な話があることを察したのか、鏡華も皆についていくのを双魔は手を振って見送った。


 「ああ、朱雲ちゃん!食事の前に皆を着替えさせてあげてね!」

 『かしこまりました!義姉上!』


 白徳の声に、廊下の少し離れたところから朱雲の元気な返事が聞こえてきた。広い部屋にはベッドの上の双魔と、椅子を引っ張ってきて傍に腰掛けた白徳だけになる。


 「さて……二人きりだね?」

 白徳はにっこりと少し迫力のある笑みで双魔の顔を覗き込んでくるのだった。



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