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”虚空の穴・神魔襲封印”

 パンパカパ~ン!500話到達です!特に目指していたわけではありませんが、達成感はありますね!これからもどうぞお付き合いください!

 この際、感想とかその他諸々いただけたら嬉しかったり……ワクワク!

 「はぁ!はぁ!双魔君は!?」


 急いで飛ぶように走ってきたイサベルが闘技場に着くと既に双魔と“滅魔の修道女”との闘いは始まっていた。人が比較的少なく、舞台の上が近くから見やすい場所に当りをつけて乗り込んだ。


 「イサベルはん」

 「鏡華さん!!」


 先に到着していたらしい鏡華がイサベルに気づいて声を掛けてくれた。息切れに耐えて何とか鏡華の隣に立つ。


 「双魔君はっ!?」

 「…………」


 鏡華は必死の形相で問うイサベルの肩に優しく触れると視線を舞台に映した。イサベルも同じように舞台上を見る。そこには…………。


 交錯する二つの影があった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 

 戦闘開始から唯一アンジェリカに当たった攻撃。そして、それを起点にした双魔渾身の不意打ち。その結果は…………。


 「…………ぐっ!」

 「……今のは本当に危なかったわ……貴方、本当に何者なの?何を隠しているの?」


 非常にもアンジェリカを仕留めるには至らなかった。“ローランの歌は(ラ・シャンソン・)高らかに(ドゥ・ローラン)”発動の瞬間、アンジェリカは短いながらも大きな隙を晒したかに思えたのだが、デュランダルの“真装”である“聖騎士の(レ・コール・ドゥ・)体躯は(パラディン・)金剛石(エ・アン・ディアマン)”による肉体強化は健在のままであり、双魔が振り下ろしたティルフィングは微かにアンジェリカの背中を薄皮一枚切り裂いて一筋の血を流させるのみにとどまっていた。双魔とティルフィングの決死の刃は、“英雄”には届かなかった。


 『駄目だったかっ!』

 「……ああ……防御が堅すぎて俺たちの攻撃じゃ抜けない……」

 『……あ奴らには……勝てないのか?このまま負けるしかないのか?』


 ティルフィングが不満そうで、少しだけ不安そうに訊ねてきた。思わず双魔は笑みを浮かべた。そして、強大な敵を見据え、大切なパートナーを安心させるために答える。


 「いや、まだ手がないわけじゃない……少し賭けになってくるが……」

 『ッ!!うむ!流石、ソーマだ!そう来なくては!!』

 「……もう不意打ちには掛からないわ。それに、不意打ちは私たちには効かなかった。だから、終わらせてあげる。デュランダルッ!」

 『フハハハハハッ!予想していたよりも数段楽しい闘いだった!褒めてやろう伏見双魔にティルフィングとやら!だが、貴様らは所詮“英雄”には劣る!』


 デュランダルの高笑いと共にアンジェリカは再び聖剣を天に掲げ、十字を画いた。


 「“ローランの歌は高らかに”ッ!!」


 天からデュランダルに聖光が降り注ぎアンジェリカの纏う黒い修道服が純白へと染まった。これでいつ最大の一撃を放ってきてもおかしくはない。そして、その時はすぐ訪れた。降光をその身に帯びたデュランダルはその剣身から膨大な剣気の光柱を放出する。それは魔を滅し、悉くを切り裂く至高の聖斬。ジョージはプリドゥエンの得体の知れない力で完全に受けきった。ティルフィングにはそのような力はない。万事休す。しかし、双魔の目は死んでいなかった。“英雄”の猛威を真正面に見据え、身体から余分な力を抜き、魔力の流れに集中し、呼吸を整える。そして、己の身体に言い聞かせるように。鼓舞するように、静かに唱えた。


 「……応えよ。我が魂魄よ、心の臓よ。我が身は転じず。されど神の力はここにあり……古の力、女神の息吹。解放の時は来た!!」


 詠唱に応え、双魔は自分の心臓が、フォルセティの心臓が熱く、大きく鼓動するのを感じた。双魔が行ったのは己の魔力を限界まで引き出す呼吸法。そして、限界の先に、魔力を越えた先に眠る神器の力を呼び起こした。


 双魔の髪の全てが銀色に染まる。溢れ出そうな神の力を制御し、左手を今にもデュランダルを振り下ろそうとするアンジェリカに翳した。


 「……決着する前に答えなさい……伏見双魔、貴方は何者?」


 様変わりした双魔にアンジェリカはもう一度問う。少年を見つめるその瞳には明らかな疑念と戸惑いがあった。


 「……アンタに教える義理はない」

 「そう。ならば勝者の権利で聞き出してあげる……“(クぺー・ドゥ・)(ル・ボン・ディユ)”ッッ!!!!!」


 キィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!


 アンジェリカがデュランダルを振り下ろす。聖光と斬撃の剣気が奔流となり、双魔とティルフィングを飲み込もうとする。


 「“虚空の穴(ファザイホリィ)神魔襲封印(シェイターン・メーハ)”ッ!!」


 双魔は叫んだ。ありったけの魔力と神気を込めたその魔術を発動するために。それは巨大な裂け目だった。先ほど双魔が見せた“虚空の穴”の数十倍はある“聖絶”と同じ規模に虚空が裂けた。


 「ッ!さっきと同じ……まさか……」

 『シスター・アンジェリカ!出力を上げろ!でなければ!』

 「分かってる!アアアアアァーーー!!!」


 デュランダルの忠告にアンジェリカはより強力な一撃とするために力を籠める。が、それは徒労に終わった。“虚空の穴・神魔襲封印”は向かって来るデュランダルの剣気を一片も残さず飲み込み、空気に溶けるように消え去った。


 その光景を見てアンジェリカは呆然とするしかなかった。これまでの自分の研鑽が崩れ去るような感覚に襲われる。


 (……いったい……一体!何なの!?伏見双魔!!)


 戸惑いは怒りへと変わり、アンジェリカは対峙する遺物使いを睨んだ。すると、流石に“聖絶”を受けきって魔力や体力が尽きかけたのか、双魔はタイルに膝をつき、ティルフィングを杖に何とか立っているような状態だった。美しい銀色に染まっていた髪も元の黒と銀の混じり毛に戻っている。


 『シスター・アンジェリカ!』

 「……ええ!“英雄”は……二度敗れない!!」


 デュランダルの声に背中を押されてアンジェリカは双魔を沈黙させる一撃を与えるために一歩踏み出した。予想外の出来事に心に疲労がのしかかるが身体はまだまだ余裕があるのだ。ヴォーダンが定めたルールでは伏見双魔が自分たちと引き分けたことは認めなくてはならない。しかし、実質の勝利は譲れない。双魔を気絶させれば勝ちだ。そう思った。が、伏見双魔という少年は、何処までも……予想外だった。


 「……シスター・アンジェリカ……デュランダルも……アンタたち……自分の一撃を喰らったことはあるか?」

 「最後まで何を……ッ!!!???」

 「意味の分からないことを」、そう苛立ちをぶつけようとした時だった。アンジェリカは気づく。自分の頭上から降り注ぐ大きな力に。それはまさに双魔の言う通り、自分の一撃。消え去ったはずの“聖絶”。至高の斬撃だった。

 「……“解放(アサディー)汝が(アスツ・マヌ)剣は(・シャムシール)我が(・トゥオ・)(シャムシール)”……“聖絶”……」


 キィィィィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!


 双魔がそう唱えるのがかすかに聞こえた。しかし、そんなものに気を足られている余裕はない。遂に、“滅魔の修道女”アンジェリカから完全に余裕が消え去った。


 「“聖騎士の体躯は金剛石”ッ!!!」


 “ローランの歌は高らかに”で身体を強化したまま真装を改めて発動する。純白の修道服が金剛石の煌めきを纏う。アンジェリカはデュランダルの柄を握り締め、剣身に手を当てて備えた。


 「アアアアアァーーー!!!!!!」


 裂帛の叫び声を上げる“英雄”の姿は降り注ぐ自らの一撃にかき消されていった。



 いつも読んでくださってありがとうございます!レビューや感想お待ちしてます!評価はどうぞお手柔らかに…………。

 本日もお疲れ様でした!それでは、よい夜を!

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