二日目も賑やかに
『今日は二日目!メインイベントの遺物科&魔術科の模擬戦は闘技場で開催されるから是非とも観に行こう!迫力満点!今年もスペシャルなゲストが登場するから楽しみにしてくれたまえ!!他の出し物も引き続きやっているからそちらも楽しんでー!そして、忘れずに恋占いフローラの館に寄るんだよ!?気になっている相手がいる人必須さ!私がキューピットになってあげよう!そんな感じで今日も張り切っていこーーーー!!!』
「……自分の宣伝の割合……」
エレベーターの中でフローラのはっちゃけた放送を聞く。内容を聞くと呆れてしまうが、テンションの上がった学生たちや客たちには丁度いいのかもしれない。おかげで、ロザリンのせいで早くなっていた動悸が大分落ち着いた。下手にこのまま戻っては勘の鋭い宗房に茶化されそうだ。
チーン!
エレベーターが大会議室の前へと戻ってくる。間を空けては怪しまれる。ドアをすぐに開いて何食わぬ顔で部屋に入った。
「ヒッヒッヒ!悪かったな双魔」
「ん、もう慣れた」
「そうか」
ゲイボルグが入ってすぐのところで待っていて声を掛けてきたが平静を装った。ゲイボルグは何が起きたか察しているのかそうでないのか、それ以上は何も言わなかった。
「……さて」
双魔は宗房が陣取っている近くの自分の椅子に腰掛けた。今日の警備予定を確認しておかなければならない。二日目の開始前から開始後の一時間を担当する者たちには昨日のうちに指示をしてあるので、双魔が出張るのそれ以降だ。
「双魔」
「ん?」
座ると早速宗房が椅子に座ったまま寄ってきた。
「お前、模擬戦が行われる時間帯は闘技場以外学園全体の警備に回る予定だよな?」
「ああ」
「……それは他に任せて闘技場にいてくれねえか?」
「は?」
宗房の突然の提案に双魔は書類から顔を上げた。宗房の表情は真剣そのものだ。
「……何かあったか?」
「馬鹿野郎。俺だって色々つてはあるんだ。今、学園に魔導界の大物と超大物が来てるのは把握してる……お前が黙ってたことにも文句はない」
アンジェリカ、デュランダルのペアとジョージのことを言っているのは明らかだ。となると、やはり警備上の問題が発生してしまったのかもしれない。もしくは、発生してはいないが念には念を入れて万事に対応できると踏んで双魔に頼んでいるのかもしれない。
「……分かった」
「悪いな。一緒にキュクレインとマック・ロイも闘技場についてもらうから頼むぜ」
「おい、アッシュは模擬戦に出る……遺物科のメンバー全員が闘技場に張り付きか?……どういうつもりだ?」
宗房の口から出た案は些か過剰に感じるものだった。双魔も思わず片眉を上げる。
「学園長からの指示だ。万が一の時には遺物科の方が頼りになる。闘技場外なら魔術科と錬金技術科の連中で事足りる……それに、外は教員陣も見回ってる。兎に角、上からの指示だ。俺は命令されるのは嫌いだが、妥当な指示なら従う」
「……万が一があるっていうのか?」
「それは分からん。が、念には念を、だ」
「…………分かった。こっちは頼むぞ」
「ああ、任せとけ。ガーデンストックの奴を引き摺ってでも連れてきて手伝わせるからな」
「…………それはそれで不安なんだが……」
「双魔君」
「ん?なんだ」
宗房との話に区切りがついたタイミングでイサベルが声を掛けてきた。
「さっき、アッシュ君が来て伝言を預かったわ」
「アッシュが?」
「ええ、先に闘技場に行ってる。僕のこと応援しないと許さないからね!って……」
「……そうか、アイツらしいな」
腰に手を当ててビシッとこちらを指さして笑うアッシュの姿がすぐに思い浮かんだ。
「伊達議長に遺物科の人たちが闘技場につくのは聞いているわ。こっちは任せて」
「ん、イサベルがいるなら安心だ……そうだ……」
「双魔君?どうしたの?」
「時間があったら、少し一緒に歩こう……せっかくだから、な」
「っ!ええ」
双魔の提案にイサベルは嬉しそうに微笑んだ。少し照れ臭くなって双魔も笑みをこぼした。
「逢引きの約束は済んだか?じゃ、さっさと仕事に移るぞ。模擬戦が始まるまでは予定通りの警備を頼むぜ」
「了解……」
「……」
宗房はしっかり双魔とイサベルと双魔を茶化すとモニター前の机に両脚を乗せて書類の束を手に仕事を始めた。二人も、もう一度顔を合わせて笑うとそれぞれの仕事にとりかかるのだった。
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