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いつも通りが砕け散る

 「さて、ごちそうさん」

 「「「ごちそうさまでした!」」」

 「はい、お粗末様でした」


 ゆっくり食べていたいところだが、今日は朝から忙しい。皆で少し急ぎながら朝食を済ませた。ちなみに、今日はおかかのおにぎりが特に美味しかった。


 「重箱と水筒は邪魔になるだろうから置いていっていいぞ」

 「そう?それなら、後で取りに来るさかい」

 「ん、俺とイサベルはこの後、一回評議会室に行くが……」

 「うちはこのまま教室に」

 「ん、そうか。んじゃ、行こう」


 双魔はシンクに置いたマグカップに水を注ぎ、タオルで手を拭くと壁に掛けてあったローブを羽織った。


 「双魔」

 「ん?」

 「警備主任なんやろ?見回りの間に時間あったら、クラスの出し物に顔出してな」

 「ん。分かった、なるべく行けるようにする」

 「うん、待ってる」


 双魔が頷くと鏡華は機嫌良さそうに笑った。


 「ティルフィングとレーヴァテインはどうする?」

 「今日はサロンに行っても集まりが悪いとゲイボルグが言っていたぞ。だから、ソーマと一緒に行く」

 「お姉様がそうするなら私も……」


 如何やら、二人は双魔についてくるようだ。イサベルも途中までは一緒だ。


 「んじゃ、行くか。また後でな」

 「うん。イサベルはんも、もし来れたら待ってるよ」

 「はい!」


 準備室から出て、しっかりと施錠する。時刻は午前八時過ぎ。学園祭開始まで二時間を切っていた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 「おはようさん」


 評議会室のドアを開けると既にシャーロット以外の全員が揃っていた。


 「おはようだ!」

 「……お、おはようございます」

 「後輩君、おはよう。ティルフィングとレーヴァテインも」

 「いい朝だな!」

 「おはよう!……シャーロットちゃんは具合がよくならないみたい……頑張ってくれてたのに残念だね」

 「……ああ」


 評議会室に少しだけ暗い空気が漂った。シャーロットは体調が快方に向かわず、参加できないことを謝罪するメッセージが届いていたので、皆彼女の分も頑張るつもりだ。


 「ヒッヒッヒ!朝っぱらから遺物を二人も侍らせてるなんてな!相変わらずの色男じゃねぇか!ヒッヒッヒ!」

 「……私は双魔さんと契約したわけではないのですが……」


 暗い空気を察してか、ロザリンの足元で寝ころんでいたゲイボルグがいつもの調子で双魔たちをからかった。それを聞いて遠慮気味に不満を漏らしたレーヴァテインを見て、皆が思わず笑みを浮かべた。


 「ウフフ!せっかくのお祭りなんだもの!楽しまなきゃ損よ!ね!?」

 「私もその点は同意するわ。やるべきことをしっかりやって、その上で楽しむべきだわ」

 「何よ、いい子ぶって!堅苦しいわね!」

 「貴女みたいに頭の中が空じゃないのよ。ごめんなさいね?」

 「……何ですって?」

 「何?」

 「「まあ、まあ、まあ!!」」


 カラドボルグが皆を元気づけようとして、アイギスもそれに同意した。しかし、ここもいつも通り、瞬く間に剣呑な雰囲気に突入しそうになるのを、フェルゼンとアッシュが羽交い絞めにして止めた。


 「……ま、いつも通りだな」

 「うん、いつも通り」


 双魔が苦笑いを浮かべながら呟くと、ロザリンがコクリと首を縦に振って同意した。この調子なら何とか学園祭を運営できそうだ。全員がそう思ったその時だった。


 「「「「っ!」」」」


 双魔、ロザリン、アッシュ、フェルゼン。四人の背筋にゾクリと悪寒が走った。何か大きな力が評議会室に近づいてきている。


 「……む?」

 「……お姉様」


 ティルフィングもそれに気づいたのか、警戒して双魔を守るように前に出た。レーヴァテインは双魔の背中に隠れるようにして、恐る恐る顔を覗かせる。


 「この剣気は……」

 「こりゃまた面倒な奴が来やがったな?どういう了見だ?」

 「…………アイツ、嫌いなのよね。私」


 近づいてくる者に覚えがあるらしきアイギスは眉を顰め、ゲイボルグとカラドボルグはあからさまに嫌そうな顔をしていた。二人にしては珍しい。


 そうしている間にカツカツと靴が床を叩く音が近づいてくる。殺気はないがかなり攻撃的なのは確かだ。そして、足音が扉の前で止まった。


 (……この感じはっ!?)


 双魔の脳裏に昨日見た白いリムジンが思い浮かんだ。すれ違った時に感じた、恐ろしく鋭い剣気の持ち主。それが今、扉一枚を隔てた向こう側にいる。


 気づけば、自分を含め、ロザリンも、アッシュも、フェルゼンも身構えていた。


 バタンッ!


 次の瞬間、ノックも無しに壊れんばかりの勢いでドアが開かれた。開いたらしき人物はそのまま堂々と評議会室に足を踏み入れてきた。


 甲冑と修道服を組み合わせたような服を身に纏った金髪の美丈夫。その後ろには若く小柄な修道女が立っていた。首には十字架を下げ、手には聖典らしき分厚い本を抱えている。


 「久しいな。我がわざわざ顔を見に来てやったのだ。泣いて喜ぶがいいぞ?」


 美丈夫は両手を広げ、にこりとアイギスたちに微笑むのだった。


 いつも読んでくださってありがとうございます!レビューや感想お待ちしてます!評価はどうぞお手柔らかに…………。

 本日もお疲れ様でした!それでは、よい夜を!

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