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みんなの恋のキューピット!(自称)

 ブックマークがべりべりべりべり…………。

 「失礼するわ。遅れてごめんなさい」


 ノックの後にイサベルが扉を開けて入ってきた。書類の入った封筒を抱え、朝よりもきりっとした顔をして仕事モードだ。いつの間につけたのか首元には双魔が贈った竜胆(りんどう)のブローチを着けている。


 「……」

 「……」


 双魔が自分の椅子に座って軽く手を振ると振り返してくれた。


 「議長、皆さん揃っていますよ。早くしてください」

 『待っておくれよ~……前髪が変なんだ』


 扉の向こうから特徴的な声が聞こえてきた。一言で言い表すなら()()()()()()だ。


 「待ちません。待たせてしまっているのは私たちなんですから。前髪もおかしくはないです」

 『そう?君がそう言うならいいか。うん、分かった』


 納得したのか、イサベルに続いて魔術科の議長が堂々たる表情で会議室に入ってきた。


 「やあやあ!待たせたね!みんなの恋のキューピッド!フローラ=メルリヌス=ガーデンストックだよっ!!」


 名乗りを上げて目元にピースサインを当てるポーズを取るのは金髪と白髪の混じったフワフワ髪が輝かしい美少女だった。背はイサベルより少し低く、白を基調としたフリルの多いドレスを纏い、羽織っている魔術科のローブも紫色のレースで作られたフリルを縫い付けて盛大に改造している。


 ペロッと舌を出し、愛嬌のある万人に愛されそうな笑みを浮かべているが双魔の目から見ると盛大に胡散臭い。


 フローラ=メルリヌス=ガーデンストック。ブリタニア王立魔導学園魔術科序列第一位、同科評議会議長。世界魔術師協会から与えられた魔術師の称号は”導師(プロフェッサー)”、学生の身でありながら、世界で五百人しか存在しないトップクラスの魔術師であり、その上位に立っている。


 因みに情報公開は一切していないが、双魔は”導師”の上の称号”枢機卿(カーディナル)”を保持している。これは世界で百人のみに与えられ、双魔はその中で上位の序列に当たる。その上は世界を統べる力を有する十人の”叡智(ワイズマン)”が存在するのみだ。


 さらに、蛇足になるがイサベルは父キリルの意向で正式に魔術協会の序列に加えられていないが、双魔の見立てではフローラに比肩する実力がある。つまり、イサベルもトップクラスの魔術師であると、ここでもう一度認識しておきたいところだ。


 兎も角、フローラは破格の実力を持つ魔術師なのだ。そんな彼女の扱う魔術は占星術。そして得意かつ大好物なのは……恋占いである。言わずもがな恋バナは大好物。


 「むむ?むむむむむ!!ビビッと来たよ!!恋の匂いがする!!私の大好きな恋バナの気配!!!」


 席に着くや否やフローラは星紅水晶の瞳がキラリと輝いた。そのままぐるりと円卓に座った面々を見回す。


 「……なるほどなるほど!これは面白いなぁ!うーん!宗房!双魔くんも!ちょっとどっか行ってて!!」

 「カッカッカ!分かった。何分あればいい?」

 「二十分!」

 「んじゃ、羽根伸ばしてくるか!」

 「あっ、兄さん!」


 宗房は二つ返事で会議室を出て行ってしまった。


 「ほら!双魔くんも!」

 「会議は……」

 「そんなの後回しさ!はっやっくっ!」

 「議長、そんな時間は…………」

 「聞く耳持たない!さあ!」


 フローラは相当興奮しているのかイサベルの注意も全く意に介さず、眩しい笑顔で双魔に退室を要求してくる。ここは言うことを聞いた方が時間のロスは少なそうだ。


 「…………はあ、二十分ですよ」

 「ああ!約束は守るさ!」

 「……頼みましたよ」


 双魔はやれやれと呆れた表情で立ち上がると会議室を出ることにする。


 バタンッ!


 扉を閉めると目の前にエレベーターを待っている宗房が立っていた。


 「カッカッカ!追い出されちまったな?」

 「アンタが物分かり良すぎたせいもあるだろ……」

 「まあ、いいだろ。それより、もう三人も囲ってるんだからクラウもどうだ?」

 「またそれか……クラウディアは確かに可愛いし、才能もある魅力的な子だが……俺のこと好きなわけでもないだろ?」

 「……それはどうかな?」

 「は?」

 「いや、何でもない!それより二十分、どうする?」


 宗房は何かをはぐらかしたような気がするが、目の前の時間の潰し方を聞かれてはそちらの方が重要だ。


 『……お腹減った』


 双魔の頭の中にしょんぼりと萎れたロザリンが浮かび上がった。


 「……食堂で会議中に摘まめるものでも買ってくるか」

 「流石、気の利く男だな!まあ、鈍感なところがあるのはご愛敬か!」

 「さっきから何を意味の分からないことを……」

 「カッカッカ!!気にするな!食堂に行くぞ」


 チーン!


 静かな廊下にエレベーター到着を知らせるベルが鳴り響く。宗房は意気揚々と、双魔は釈然としない表情で食堂を目指すのだった。



 いつも読んでくださってありがとうございます!レビューや感想お待ちしてます!お待ちしてますよー!大事なことなので二回書いておきます!評価はどうぞお手柔らかに…………。

 本日もお疲れ様でした!それでは、よい夜を!

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