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蒼銀の魔剣

 誤字報告に高評価ありがとうございます!励みになります!

 パフッ!パフッ!パフッ!


 手袋をしたまま拍手をするときに出る独特な音が双魔の耳に入ってきた。


 音の主はロズールだ。目の前で自らと契約した遺物が消滅した訳だがやはり薄ら笑いを浮かべていた。


 仮面の奥から覗く瞳には黒いティルフィングへの情は一切なくただただ白銀に輝く双魔とティルフィングだけを見つめていた。


 「いや、見事だったよ!あの子に変身しないままでここまで神の力を引き出すとは……やはり”千魔の妃竜”のただ一人の弟子というのは伊達じゃないね」

 「……アンタ、師匠を知っているのか?」


 意外な名前がロズールの口から出てきた。双魔は密かに息を整えながらロズールの話に乗る。


 「何、長く生きていると様々な神魔に出会うものさ……フフフフッ……そろそろ息は整ったかな?」


 (ソーマ……バレているぞ?)

 (ん…………勘弁してほしいな……面倒だなことこの上ないな……)


 「フフフフッ……さて、下も丁度面白くなってきたようだね?」


 ロズールの相変わらずな得体の知れなさにティルフィングとの密談を交わしているとロズールは両手を広げて明るい声を出した。その言葉に双魔の胸は一気にざわつく。


 「何っ!?ッ!!?」


 双魔は慌てて戦場を見下ろした。すると、少し見ないうちに戦況は一変していた。


 ”黄昏の(ラグナロク・)残滓(リズィジュアム)”の雑群が大きく減少する代わりに”界極毒巨蛇(ミドガルズオルム)”が直径数キロメートルはくだらないアイギスの障壁をその巨体でぐるり何重にも取り囲み、真上から牙を突き立て、霧状の毒液を浴びせ掛けている。


 目を凝らすと障壁の中ではフェルゼンが膝を突き、アッシュの表情には明らかに疲労が浮かんでいた。


 鏡華とイサベルも何か手を打とうとしているようだが現状を見るに有効な手は浮かんでいないようだった。


 仮想の学園から戦場の端へと目を移すとそこにはロザリンと闘っていたはずの”神喰滅狼”がアイギスの障壁を目指して疾走していた。ロザリンの姿は何処にも見当たらない。ロザリンの身に何かが起きたのは確実だった。


 「クソッ!」

 『ソーマ!すぐ皆を助けに行くぞ!』


 恋人や友の危機に双魔の脳内は沸騰し、すぐに身を翻した。ティルフィングも同じく仲間を助けることに意識を向けた。しかし、救援が叶うことはなかった。


 「ッ!?…………」


 直後、双魔を背後から射貫くような、全身を包み込むような圧倒的に濃密な魔力、”神気”が膨れ上がった。


 「フフフフッ……何処へ行くんだい?余興はもう終わったんだ……君の相手は私さっ!」


 双魔は咄嗟に体の向きを反転させてロズールと真正面から向き合った。そうしなければならないと本能と経験の両方が警鐘を鳴らした。


 ロズールは両手を広げたまままるで役に入り込んだ劇役者の圧巻の演技のように言い放った。口元に浮かんだ笑みはこれまで見せてきた微笑みとは違い少々薄く形のいい唇をはっきりと曲げた。仮面の奥の瞳をギラギラと輝かせ、完全に臨戦態勢に入っている。


 今まで見せていた余裕を意図的に消し去ったのか、超越的な正しく”神”という存在が双魔の前に立ちはだかっていた。少しでも気を抜けばすぐに呑まれてしまう。


 これまで双魔も少なからず遭遇してきた絶対的な力の主だ。無意識のうちにティルフィングの黄金の柄を両手で握り身体中に力が入る。


 「うん、それでいいよ!……でも、君だけティルフィングと組んでいるのは平等じゃないからね……私も本命を出そう!レーヴァ、待たせたね!君の出番だ!」

 「かしこまりました、ご主人様……不肖、レーヴァテインお役に立てるのは望外の喜びですわ…………フフッ……ウフフフフフフフフフフッ……ついに……ついにティルフィングお姉様と舞踏(おど)ることができるのですね!嗚呼、なんてことでしょう!私、嬉しすぎてどうにかなってしまいそうですわ!!!」


 ロズールに呼ばれ、それまで後ろで控えていたレーヴァテインが陽炎のようにゆらゆらと姿を揺らしながらロズールの隣に侍った。理由は不明だがこれまでに幾度も見せていたティルフィングへの妄執を隠すことなく上品かつ大胆に笑っている。


 『……むう……相変わらず不気味なやつだな……』

 「まあ、不気味だなんて酷いことを仰らないでくださいまし!?私、お姉様と仲良くしたいと思っていますので!本当ですのよ!?そのようなことを言われては……胸が張り裂けてしまいますわ!」

 『…………』


 ティルフィングが思わず漏らした呟きを正確に聞き取ったレーヴァテインは食い気味に悲しみを露にするレーヴァテインにティルフィングは押し黙ってしまった。もし人間態だったなら苦虫を嚙み潰したようなあまり見せない顔をしているに違いない。


 「さて、レーヴァも猛っているようだし……私も悲願を前にしてこう見えて興奮しているんだよ」

 「……その悲願ってのは前に言っていた……()()()()()()ことなのか?」

 「うん、そうだね……それであっているよ……でも、今のままじゃまだ駄目なのさ……だから、レーヴァも望んでいるように双魔、君とティルフィングには私たちと踊ってもらおうと思うんだ!」


 ロズールが放出していた膨大な神気が、その絶対的な力がなかったかのように感じられなくなった。突然訪れた静寂に双魔とティルフィングの胸は焦げつくような感覚に襲われる。


 「レーヴァ、手を」

 「はい、ご主人様」


 神気を収めたロズールは優雅にサテンの手袋に包まれた手をレーヴァテインへと差し出し、レーヴァテインは白く美しい手で主の手を取った。


 「創造の御手による命である。その身に秘めたる力を解き放て。我が悲願の糧と為れ……汝が名はレーヴァテイン!」


 ロズールの高らかな声と共に双魔とティルフィングの放つ白銀の輝きに対応するかの如く蒼い光が戦場の空を染め上げた。眩く強い剣気の輝きに黄昏色は数瞬の間、蒼穹へと変じた。


 そして、光は徐々に収束していきやがてロズールの左手に一振りの剣として現れた。


 それは蒼き一振りの剣だった。万物を切り裂き、燃やし尽くす。目にしただけでその力を感じ取ることができる。美しくも残酷な蒼銀の長剣が仮面の神霊の手に握られていた。



 いつも読んでくださってありがとうございます!レビューや感想お待ちしてます!励みになりますからね!評価はどうぞお手柔らかに……。

 本日もお疲れ様でした!

!それでは、よい夜を!

 

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