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空舞う大鷲

 「グアッ!」


 飛び立った大鷲は空を滑るように低空飛行していく。イサベルのサイドテールが風に流れ、双魔のローブもバサバサと音を立てて靡いた。


 「双魔君!どうすればいいかしら!?」

 「先に手前の巨人たちを倒す仕込みを済ませる!後ろのムスペルヘイムの巨人たちのの間合いに入らないギリギリまで飛んでくれ!!」


 風のせいで普通の声では聞こえないので普段は滅多に大声を出さない二人だが自然と声が大きくなった。


 「分かったわ!双魔君、落ちないように気をつけて!行くわよ、お願い!」

 「グアッ!ピィーーーーーーー!!」

 「っ!」


 イサベルが大鷲の背に手を当てる。大鷲は鳴き声を上げると(くちばし)を上に向け一気に高度を上昇させた。正面からの風が強まる。双魔はイサベルの言う通り身を屈めて出来るだけ抵抗を弱めるように努めた。


 一瞬にして高度五十メートルほどまで上昇した。眼下を見下ろすと進撃する”黄昏(ラグナロク)()残滓(リズィジュアム)”の最前線の中央部分に血の海と深碧の斬閃が縦横無尽に煌めいていた。


 ロザリンは双魔に宣言した通り正面から向かって来る敵を全て斬り伏せているようだ。しかし、”黄昏の残滓”は迎撃されている穴を埋めるような意図は見せずにロザリン間合いから外の影は全て突撃を続けている。


 それらの先頭は”紅氷(ルフス)の棘(・スピーナ)死地(・フムス)”を潜り抜け、既にカラドボルグの重力網に足を踏み入れていた。


 とは言っても重力に耐え切れずすぐに押し潰されて息絶えている。下は問題なさそうだ。


 「双魔君、きっとこの辺りが限界よ!」

 「十分だ!このまま旋回させてくれ!ッ!?左に上昇っ!」

 「ッ!」

 「オオオオォォッ!!!」


 双魔の鋭い声にイサベルは即座に大鷲を降下させた。双魔たちが飛んでいた位置を数瞬後に短い咆哮と共に繰り出された巨人の一体が投擲した槍が空を薙いだ。


 「ッ!まずは一体!」


 双魔は瞬時にティルフィングを左手に持ち替え、右手でローブから装飾回転拳銃を取り出すとそのまま引き金を引いた。


 パンッ!


 乾いた音共に射出された弾丸らしきは的の大きさと重力を味方につけ巨人の首元に着弾した。が、それだけだ。巨躯からすれば銃の放つ弾丸など虫に刺されるほどのことだろう。


 「オオオオォォオオオッ!」

 「双魔君、屈んで!」

 「ピィーーーーー!!」


 イサベルの声が耳に入るのとほぼ同時に双魔は頭を下げた。甲高い声を上げ右方向へ旋回した。再び下から槍が飛んでくるのをギリギリで回避する。


 「ギャアアアーーー!!」


 獲物を失った長大な槍は放物線を描き戦場に落下したようだ。背後から聞こえてくるけたたましい断末魔から前方を行く兵士と魔獣たちが圧し潰されたと見える。


 銃弾を当てた巨人と今、槍を投擲した巨人以外の巨人たちも頭を上に向けている。どうやら目標はこちらに定まってしまったらしい。


 緩慢な動きだが大多数の巨人が手にした槍を投擲しようと構えだしていた。


 「チッ!出来れば一体ずつ確実にいきたかったが……仕方ないな。イサベル!上だ!」

 「分かったわ!お願い!」

 「グアッ!ピュイーーーー!!」


 イサベルの指示を受けた大鷲は嘴を上に向け一気に急上昇する。二十メートルほど上がったところで十分と見た双魔は上半身を捻って後ろに向けた。


 大鷲は上昇しているので双魔の目には槍の柄を握った拳を耳の横に構えている巨人の群れが映った。


 「ふー……」


 双魔が息を吐くと共に回転式拳銃が蒼白い光を帯びた。双魔の魔力を流し込まれ、機能が格段に向上される。時間にして一秒に満たず準備は完了する。双魔は再び引き金を引いた。


 バシュゥゥゥゥーーー!


 先ほどと威力の違いを感じさせる独特な風切り音を帯びて蒼白い光弾が射出された。光弾は数メートル進むと幾条もの光線に別れ誘導弾のように全ての巨人たちの首筋やうなじに着弾する。


 が、先ほどのようにダメージになるはずもない。巨人たちは何かをされた自覚はなく目障りな小鳥を打ち落とそうとしている。


 そして、巨人たちが腕を振り被り双魔とイサベルを乗せた大鷲今にも長大な投擲槍に穿たれようとした時だった。


 「……その種を呪物と為し、汝らが生、謳歌し落ちよ」


 双魔は素早く銃をローブの内ポケットに突っ込むと右手で刀印を切り僅かに口を動かし呟いた。


 その次の瞬間、敵味方問わず、戦場に立つ多くを戦慄させる光景が現れることとなった。



 いつも読んでくださってありがとうございます!レビューや感想お待ちしてます!

 本日もお疲れ様でした!それでは、よい夜を!

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