阿吽の呼吸
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「この野菜とお肉の煮物美味しいね!味は濃くないのに深みがある感じ!」
「うん……素材本来のの旨味を生かしている……普段は高たんぱくの食材ばかりだからたまには他の物を食べるのもいいな」
「ああ、筑前煮?せやね、味付けは薄めにしてるからお二人言う通りやと思うよ?どぉれ……はむっ……うん、美味しいわぁ……なくならないうちに他の料理を食べてな?」
「はむっ……むぐむぐむぐ……ごくんっ……はむっはむっ…………もぐもぐもぐ……」
アッシュたちの横ではロザリンが一定のリズムで料理を口に入れて咀嚼し、飲み込むを繰り返している。早まることも遅くなることもなく、そして止まることもない。
(少し多すぎるくらいやと思ったけど……余らなそうやね……さぁて……)
心の中で一息つきながら今度はチラリと双魔の方を見る。双魔は黙々とイサベルの作ったオープンサンドを食べている。
双魔の表情は本当に美味しいものを食べている時に見せるものだ。学園で普段見せている一文字かへの字の口角が上がっている。
(やっぱりイサベルはんもお料理上手やね……うちもピンチョス?食べてみたいけどその前に……)
大いにイサベルの弁当に興味をそそられるが鏡華にはその前にやることがあった。
卵焼きを一切れ箸で摘まんで双魔の様子を窺う。双魔はお茶を飲んで紙コップをテーブルの上に置いたところだ。
そのままティッシュを手にとってティルフィングの口の周りについたタルタルソースを拭い取ってやっている。
(……今やね)
「双魔」
「ん?なんだ?」
「はい、あーん」
「……ん、あむっ……むぐむぐ……」
タイミングを見計らって双魔を呼ぶとこちらを向いてくれた。その口元へと卵焼きを持っていく。双魔は一瞬、周りを気にしたようだったが口を開いて鏡華の手から卵焼きを一口で食べた。
「どう?美味し?」
「……ごくんっ……んまい……ふわふわだな、魚のすり身でも入れたのか?」
「正解、鯛のすり身を入れてあるんよ。正解したからご褒美に……こっちも、あーん」
鏡華は大根の煮物をつまむと再び双魔の口元へと持って行った。
「あむっ……むぐむぐむぐ……ごくんっ……よく染みてるな」
「ほほほ、口に合ったみたいでよかった」
「鏡華の料理で俺好みじゃないのなんてほとんどないだろ……」
「……もう、そないに褒めてもお料理しかないよ?」
双魔に褒められて鏡華は一気に上機嫌だ。一方、それを見ていた面々はそれを見て種々の反応を示した。
「ちょっとフェルゼン!今の見た?あれくらい自然にできる男にならなきゃダメよ?貴方は私の契約者なんだから!聞いてるの?」
「い、いや……そんなことを言われてもな……」
カラドボルグは双魔が鏡華に食べさせてもらっているのを見て感銘を受けたようにフェルゼンの脇腹を肘で突いている。突かれているフェルゼンは何とも言えない表情でおにぎりを掴んだ。
「双魔も六道さんも普段はあんな素振り一切見せないのに……一緒にいると自然とイチャイチャするよね……」
「むぐむぐむぐ……ごくんっ……アッシュ君もあーんして欲しいの?してあげようか?」
「いえ、僕はいいですよ!」
「それじゃあ、私は後輩君にしてもらおうっと」
「え?」
アッシュに頓珍漢なことを聞いたロザリンはおもむろに立ち上がると双魔の傍へと寄っていき、そのまま双魔の肩を叩いた。
「後輩君、後輩君」
「ん、何ですか?」
「あーん……」
肩を叩かれて振り返るとロザリンが口を開けて構えていた。
「…………あーん」
「はむっ……むぐむぐむぐ……ごくんっ……うん、美味しい。イサベルちゃんのサンドイッチも食べたいな」
双魔が箸で唐揚げを一つ摘まんで口に放り込んでやるとロザリンは満足気にイサベルの料理が広げてある方へと椅子を移動した。
「……双魔は女の子に餌付けする趣味でもあるの?」
「……また変なことを言い出すなよ」
「だって、ティルフィングさんによくお菓子とか食べさせてあげてるし、今だってロザリンさんにチキンを食べさせてあげたじゃない!」
「別に趣味でやってるわけじゃないからな?」
「ソーマ、ソーマ、あーん」
「ん、南瓜でいいか?ほれ」
「あむっ……むぐむぐ……うむ!甘くて美味だ!」
「ほら!」
ティルフィングに求められるがままかつ途轍もなく自然に食べさせてやる双魔を見てアッシュは思わず双魔を指さした。
「アッシュ、双魔と仲良くするのもいいけど、イサベルの料理がなくなるわよ?」
「えっ?あっ!ロザリンさん!僕まだ食べてないですよ!?ちょっと待って!」
パクパクと自分でバケットの上に具を乗せてピンチョスを頬張るロザリンを見たアッシュは慌てて食事に戻る。因みにロザリンとの付き合いが長いフェルゼンは動きを予測して既に自分の皿の上に幾つかのピンチョスを確保している。
流石のロザリンも人の皿の上に乗っているものに手を出すほど見境がないわけではない。
「ソーマ、今度は魚が食べたいぞ!」
「ん」
「はむっ……むぐむぐむぐ……」
「あむっ……ん、この稲荷寿司美味いな」
ティルフィングの口に一口大に切った鰤の照り焼きを運びながらもう片方の手で取った稲荷寿司を頬張る。油揚げに染み込んだ煮汁がジュワッと口に広がる。後から寿司飯の中に何か爽やかな風味が追ってきて非常に美味だ。
「甘すぎひんかった?」
「むぐむぐむぐ……ごくんっ……いや、ちょうどいいくらいだ。寿司飯に柚子か何か入れたか?」
「ほほほ、当たり。そうやって分かってくれると作り甲斐あって楽しいわ」
「ソーマ、我もそれが食べたい!」
「はいはい……」
「むぐむぐむぐ……イサベルちゃん、これ美味しいね?」
「どれですか?……ああ、オムレツですね。他にもハムとかチーズを入れるとコクが出て美味しくなるんですよ」
「ふーん……もぐもぐもぐ……ごくんっ……それも食べてみたいかも」
「そうしたらまた今度機会があったら作ってきますよ」
「うんうん、楽しみ」
遺物科評議会役員四人とイサベル、そして遺物たちのランチタイムのは過ぎていく。アイギスとカラドボルグが口喧嘩を始めた時はどうなるかと思われたが、和気藹々として実に楽しい時間だった。
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