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発光再び

 「そう言えば……あなた、あの事、双魔さんに相談した方がいいんじゃない?」

 「ゲロ?……ああ、あれか……そうだな、坊主にも聞いておいた方がいいかもしれないな……」

 「……あの事?」


 穏やかにお茶を楽しんでいたのだがルサールカの言葉で陽気にカップを傾けていたヴォジャノーイも不安気な声になったので双魔は暖炉から二人の方に向き直った。


 「何かあったのか?」

 「ああ、ちょっとな……前に辺り一帯の植物が枯果てちまったときがあっただろう?」


 ヴォジャノーイが言っているのはイサベルの婚約騒ぎの時の話だろう。謎の病気か何かかと思ったが、事態の原因は怯えた巨樹が自己防衛のために魔力を土から過剰に吸い取っていたせいだった。


 結局、双魔が巨樹に直接触れて恐らく精霊と思われる声と話した後に解決した。今考えれば巨樹はムスペルヘイムの巨人に怯えていたのだろう。


 「ん……また何かあったのか?」

 「ああ……今度は別に木や草が枯れるってわけじゃないんだが……」

 「夜になるとね……光るのよ幹から枝分かれしている丁度真ん中辺りが……もう昼間と変わらないくらい明るくて……しかも、偶に光の色が変わるの!赤になったり、蒼白くなったり……害があるってわけじゃないけど……」

 「夜に咲く花もあるし、影響があるかもしれないからな……どうにかなればいいと思うんだが……坊主は何か感じないか?」


 如何やら以前の局所的なものとは比べものにならない程の規模の異変らしい。そんなことがあれば箱庭の主である双魔にも伝わるはずなのだが心当たりはなかった。もう少し二人に詳しく聞いてみる必要がありそうだ。


 「……その発光はいつから起きてるんだ?」

 「そうだな……一昨日の夜からだったか?」

 「ええ、そうね……突然光りはじめて、ざわざわって枝が揺れるのよ……まるで泣いてるみたいに……」


 (泣いてるみたいに、か……それに発光……はじまったのは一昨日……それなら俺が何も感じなかったのも合点がいくな……)


 二人の話を聞いただけで双魔はある程度、何が起きているのか見当がついた。


 まず、発光現象は恐らく巨樹の精霊がまた何らかの意思表示をしているのだろう。次に、自分が何も感じなかったのは当然だ。何しろ、双魔は昨日まで寝込んでいたのだから。完全に回復しきっていない。今も魔力に関しての感覚が鈍っている自覚はある。とりあえず、この間と同じように直接話を聞くしかないだろう。


 「……んっ……んぐっ……はー……よっこらせっと」

 「双魔さん?」


 カップに残っていたたんぽぽコーヒーを飲み干しておもむろに立ち上がった双魔の顔をルサールカが心配げに見上げる。顔を見るに怪奇現象への不安というよりも未だ顔色が優れない双魔のことを心配しているのだろう。


 「ん、とりあえず様子を見に行ってみようと思う……」

 「あんたっ!」

 「ゲロロ!任せとけ、坊主は俺が連れてってやるからよ!」


 双魔を一人で行かせるわけにはいかないとルサールカは夫に声を掛けていたが、ヴォジャノーイはすでに立ち上がって外へと足を向けていた。


 「それじゃあ、ちょっと行ってくるよ」

 「二人とも気をつけてね。双魔さんは無茶したらダメよ?」


 双魔は片手を上げてルサールカに返事を示すと家の外に出る。外ではヴォジャノーイが双魔を背に負ぶるためにしゃがんでいる。


 「よし、じゃあ坊主乗りな!しっかり捕まってろよ!」

 「ん、よろしく」

 「ゲロッ!じゃあ行くぞ!ゲロロッ!」


 双魔がしっかりと捕まったのを確かめるとヴォジャノーイは両脚をばねに巨樹の根元目掛けて思い切り跳躍したのだった。


いつも読んでくださってありがとうございます!レビューや感想お待ちしてます!待ってますよ!はい!それと誤字報告もありがとうございます!

本日もお疲れ様でした!それでは、良い夜を!

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