柱の影のサイドテール
「後輩君、お待たせ」
双魔が座り込んでいると扉が開きロザリンが姿を現した。
が、双魔は向かいの壁をうつろな目で見つめたままロザリンの方を向こうとはしない。
「…………ちゃんとスカートは履きましたか?」
「うん、穿いたよ?ほら」
そう聞こえると同時に双魔の視界にスラリと伸びた美しい足とふわりと揺れる制服のスカートが映った。
ロザリンの動きに合わせて揺れることでスカートの中身が見えてしまいそうになり、双魔は慌てて立ち上がった。
既に中の白い下着はばっちりと見てしまったわけだが、だからといってもう一度見るのはやはり良心が許さなかった。
「……ん、じゃあ、行きましょうか」
双魔は普段通りを心掛けてロザリンに声を掛けた。
「うん……?後輩君、顔赤いけど大丈夫?」
「…………誰のせいだと思ってるんですか」
「???」
双魔の恨みがましい声を聞いてもロザリンは不思議そうに首を傾げるだけだ。
「……はあ、もういいです」
「……?うん、後輩君がいいならいいかな?行こうか」
「…………はー……」
ため息をつきながら重い双魔、楽し気で軽いロザリン。対照的な足取りを並べて二人はエレベーターへと向かった。
双魔が上がってきてから誰も乗っていなかったのかエレベーターはこの階に留まったままだった。
エレベーターに乗り込んで下の階へと降りていく。
ぐー……………
狭い空間の中に聞き慣れた音が響き渡る。ロザリンのお腹が鳴る音だ。
「…………」
「お腹減ったね」
「……評議会が始まるまで少しあるので先に飯にしますか」
「うんうん!そうしよう!」
開いた右眼を輝かせてロザリンはコクコクと何度も首を縦に振った。
チーン!
そんなことを話している間にエレベーターが目的の階に到着した。
「食堂でいいですか?」
「うん!」
エレベーターを降りると食堂へと二人で肩を並べて歩いていく。
「後輩君は今日もお蕎麦?」
「そうですね」
「あんな少しでよく足りるね?」
「ハハハ…………ん?」
話しながら歩いていると、ふと背中に視線を感じて双魔は立ち止まって振り返った。
(……誰もいない…………)
しかし、振り返っても誰もいない。影の一つもなかった。
「後輩君?早く行こ!」
自分より鋭敏な感覚を持っているであろうロザリンも空腹に勝てないのか気配に気づいた様子はない。
(…………気のせいか?)
「って!ちょっと、引っ張らないでください…………」
思案を巡らせる暇もなく双魔はロザリンにローブを掴まれてズルズルと引き摺られていく。
結局、視線の正体どころか、有無でさえ双魔は分からなかった。
「……………………」
そして、二人の姿が完全に消え去った後、双魔が立ち止まった場所から二十メートル離れた柱の陰から、結わえられた一房の美しい紫黒色の長い髪がはみ出すのだった。
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