表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
255/622

”ロザリンスペシャル”?

 双魔は食堂内を見回すと受け取り口から近い席に腰を掛けた。


 ロザリンは何やらおばちゃんと話し込んでいるようだが自分が離れてから話しはじめたので首を突っ込むような話ではないだろう。


 そもそも、双魔はなるべく自分からは人の話に首を突っ込まないようにしている。勿論、話を振られれば答えるが、むやみやたらと色々な話に混じり、情報が増えると厄介ごとの種にもなる。


 「…………」


 しかし、周りを見渡しても特に面白いものはないので何となしにロザリンの方を眺めてしまう。


 何やらおばちゃんが一人で面白がっていて、ロザリンは首を傾げているのでよく分かっていない様子だ。


 そして、一瞬、チラリとおばちゃんの視線がこちらに向いたような気がした。


 (……まーた、面倒な勘違いされてるんじゃないだろうな…………)


 あの手の視線には覚えがある。鏡華やイサベルと二人でいるときに受ける視線だ。存外に男女が二人でいると恋愛方向に結びつけたがる下世話な人種が多い。


 『…………要は体のいい二股ですか…………不潔ですね』


 (…………あー…………あー…………)


 昨日、評議会室で突き刺さったシャーロットの一言を思い出してまた頭が痛くなってきた。


 (…………いや、世間体が良くないのは分かってるんだが……鏡華もイサベルも俺のこと好きだと言ってくれるし……何か、俺も絆されたのか、鏡華だけじゃなくてイサベルも好きになっちまってるしなぁ…………いやいや、でも清い付き合いだし…………うん……いや、しかしな……)


 「後輩君」

 「…………」

 「後輩君?」

 「ん……っ!はい!…………は?」


 一人で言い訳がましい考えを堂々巡りさせていると耳元にロザリンの声が届いた。


 咄嗟にそちらを向くとトレーを持ったロザリンが無表情で立っていた。


 双魔の上げた間抜けな声の原因はそのトレーの上にあった。


 「隣でいい?」

 「ええ……どうぞ…………」

 「ありがとう、よいしょっと」


 双魔が呆気にとられながら椅子を引いてやるとロザリンはそこに座り、続いて持っていたトレーをテーブルの上に置いたのだが…………。


 ドンッ!


 その際にとんでもない重量感を感じさせる音が響き、テーブルが揺れた。


 それもそのはずだ。ロザリンの手にしたトレーにはとんでもないものが乗っていた。


 まさに、山だった。双魔の顔より高く渦巻く大量のスパゲッティ、その上にはこれまた大量のミートソースがかけられ。その周りに十枚を超えるであろう極厚のベーコン、目玉焼きが五枚、ミートボールが六個、輪切りのグリルトマトが八枚、マッシュルームが丸々八個。魚のフライのようなものとハッシュドポテトが三つずつ、出来たてであることを示す湯気といい匂いを漂わせている。


 よく見るとトレーが通常のものより大きく、スパゲッティの山の後ろにはレタスを恐らく丸々一個分、刻んだニンジン、オニオン、オリーブ、ブロッコリー、カリフラワー、ミニトマトと彩りの良いサラダの山が一つ、そして、その隣にちょこんと双魔が頼んだ掛け蕎麦のどんぶりが乗っていた。


 「はい、こっちは後輩君の分とお箸」

 「…………あ、ありがとうございます」

 「どうしたの?」


 絶句する双魔にロザリンは首を傾げて不思議そうにしている。


 昨日の夜は一皿ずつ料理を食べていたのでいまいち実感がなかったが、ロザリンはとんでもない量を食べていた。恐らくキロ単位で食べている。


 「…………いつもこんなに食べてるんですか?」

 「うん、後輩君はそれだけで足りるの?……少し分ける?」

 「いえ……大丈夫です…………」


 (…………この細い体のどこにこんな量が入るんだ)


 「じゃあ、食べようか。いただきます。はむっ……もぐもぐ……」


 双魔が思わずまじまじとロザリンのお腹の辺りを凝視してしまうが、本人はどこ吹く風。


 両手を合わせてしっかりと食前の挨拶をするとフォークを片手にサラダからもりもりと食べはじめた。


 「…………いただきます……ふー……ふー……はふっ……ズルズルッ……」


 双魔も麺が伸びてしまってはいけないと息を吹きかけて適温にしてから啜りはじめる。


 双魔は普段の食事の時は感じない謎の圧力。恐らく、”ロザリンスペシャル”から放たれているであろう圧力に居心地の悪さを感じながらも大人しく麺を啜るのだった。


 いつも読んでくださってありがとうございます!よろしかったらブックマークしていただけると嬉しいです!レビューや感想もお待ちしてます!評価はどうぞお手柔らかに……。

 本日もお疲れ様でした!それでは、よい夜を!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ