虫の知らせ
こんばんは!PVが振るいませんねーなかなか難しいところ、レビューとかいただけるといいんですけどね…………まあ、気にしても仕方ないので頑張ります。
今回もよろしくお願いします!
キリルの決定を受けて一旦見合いの場が解散となり、部屋を後にした双魔はホテルの外へと出てきていた。
部屋を出た時、既にオーギュストの姿はなかった。スマートフォンを片手にサロンに残るらしいキリルに一礼すると、キリルは初めの穏やかな表情で片手を軽く上げて応えてくれた。
サロンを出る際に先ほどの受付の男が緊張した面持ちで頭を下げていたのが少し滑稽だった。
丁度来たエレベーターに乗り込んで一階へと降り、そのまま外に飛び出した。
「……ご用件はお済みですか?」
「ん?」
門から出ようとしたところで声を掛けられたので、そちらを向くと来た時に双魔を引き留めた衛兵だった。
「ああ、さっきの人か。少し休憩時間だ。また戻ってくる」
「そうですか……分かりました。私はもう交代なので代わりの者にも貴方のことは話しておきましょう。そうすればもしお戻りになることがあってもスムーズにホテルに入れるはずですから」
「本当か?そりゃあ助かるよ」
「いえいえ……それにしての先ほどのご令嬢はとてもお美しい方でしたな……ハハハ!貴方が羨ましい!」
ヘルメットの奥から笑い声が聞こえてくる。仕事に忠実なだけで案外、プライベートは楽しい気性なのかもしれない。双魔はそんなことを思ったが、同時に首を軽く傾げた。
「羨ましいって何がだ?」
「……ハハハ!照れなくても結構ですよ!あのご令嬢とはいい仲なのでしょう?それぐらい分かります!」
何を勘違いしたのかこの衛兵は双魔とイサベルがただならぬ仲だと思っているらしい。
(……んな、馬鹿な……ってそう言えば今日の俺はイサベルの恋人だったか……となると、このおっさんの言ってることは間違いじゃないか)
いつものように気だるげに否定しそうになったのを何とか抑えて、にへらっと精一杯照れくさそうに笑って見せた。
「やっぱり分かるかな?」
「ええ、一目瞭然ですとも!あんな美人に好かれるとはやりますな!まあ、私の妻も負けてはいませんがな!ハハハハハ!」
ヘルメットの奥から再び大きな笑い声が聞こえてくる。この衛兵は非常に気のいい人物なのは確かなようだ。
「……ハハハ……じゃあ、俺はそろそろ……」
「おっと、引き留めてしまいましたな。申し訳ない。それでは」
重そうな鎧をガシャリと鳴らして衛兵は双魔に敬礼をした。
「ああ、アンタも奥さんを大事にしてやれよ」
双魔は衛兵に背を向けると通りを西に向かって歩き出した。
しばらく歩道を真っ直ぐ進むが、休日の午後とあって人通りが多く、道を真っ直ぐ進んでいるだけで、足は直線に進まずジグザグとまさに人並みを縫うように進んでいく。
(…………お、あそこでいいか)
そうしていると一本の路地が視界の端に入ったので迷わず足を向け、そのまま入る。
「……あー……疲れた」
路地裏の奥に進みながら、情けない声を出す。イサベルの両親の前とあっては真面目で精悍な人柄を装うしかない。
気を張っていたので妙に疲れてしまった。
前方に現れた三叉路を右に曲がり、次に目に入った二股の道を左に曲がる。
人ごみの喧騒は徐々に遠くなり静かになっていく。
路地裏の闇に潜む怪しげな露天商や辻占い師、三流の魔術師と言った者たちも流石に休日の昼間から商売はしていないようで、路地に入ってからは誰とも会わなかった。
通路を進んでいるとやがて建物に三方向を囲まれた行き止まりに辿り着く。
「…………」
振り返って誰もいないのを目視し、周囲に人がいないのを確かめる。
(さてさて……何が起きてるのかね……)
表情には一切出さなかったが双魔はオーギュストが決闘を提案した時あたりから、何やら胸にざわめきを感じていた。
理由は分からないがとにかく胸中を不安にさせる類の感覚だった。いわゆる虫の知らせというやつだろう。
理由は分からずとも原因が発生している場所はすぐに感じ取れた。
「…………」
その場で右腕を真一文字に振る。すると、空間が歪み長方形の光のドアが出現する。
そのまま、光の中に足を踏み入れる。
双魔の全身が光の中に消えると、再び空間が歪み長方形の光は何事もなかったかのように霧散した。
雑踏から遥か遠く、昼間にもかかわらず光が少ししか差し込まない路地裏の袋小路はすぐに無人の様態を取り戻すのだった。
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