地獄の姫君はお見通し
こんばんは!PVがなかなか伸びませんね…………まあ、ここに書くことでもありませんが……どうにかならないものか…………
愚痴はこれくらいにして、今回もよろしくお願いします!楽しんでいただけると嬉しいです!
双魔とティルフィングが去った後、リビングにはイサベルと鏡華、左文の三人だったのだが、左文がおそらくキッチンと思われるところに下がってしまったので今はイサベルと鏡華の二人きりだった。
「…………」
「…………」
お互い、一言も発さない。イサベルは俯いたまま顔を上げることが出来ずにいるので鏡華がどんな顔をしているのか分からない。が、涙は止まった。
胸の中で荒れ狂っていた悲しみやら落胆やらが混ざりに混ざった激情は涙と共に流れ出てしまったのだろう。
少し、視線を上げた時だった。パタパタと足音がして左文が戻ってきた。
そのまま、テーブルに近づいてきて、イサベルの目の前にガラス製のカップを置いた。
「…………あ……」
カップから上がってくる湯気はいい香りがする。どこか覚えのある香り。
カップの中には白と黄色の小さな花、カモミールが浮かんでいた。
「坊ちゃまから頂いたハーブティーです……少し落ち着かれたようですが…………よろしければどうぞ」
左文の優しい声音に誘われて、カップを手にする。火傷しないように何度か息を吹きかけてから口にする。
「…………美味しい」
蜂蜜が入っているのか爽やかな香りと優しい甘さが心の熱を適温にしてくれるようだった。
「もう、話せる?」
「…………っ!」
顔を上げると、そこには何処か楽しそうな、そして悪戯っぽい笑みを浮かべた鏡華がいた。
相変わらず優雅な様は変わりないが、同年代、というか女性特有の興味津々と言った雰囲気を醸し出している。
「は、はい…………その、失礼しました…………突然、泣いてしまって…………」
「ううん、気にしぃひんでええよ?うちだってもし、好きな人に婚約者なんていたらショックやもん。ねぇ?」
「はい……………………え!?ええ!!?」
鏡華が余りにも自然に訊ねてきたので、イサベルも自然と答えてしまったが、今、自分はとんでもないことを認めてしまったのではないだろうか。
思わず、両手を自分の口に当てた。カップを置いた後で良かった。持ったままだったなら落として火傷していたに違いない。
「ほほほ!」
慌てふためくイサベルを見て鏡華は楽しそうに笑い声を上げた。
「別に隠さなくてもええよ?イサベルはん、双魔のこと好きなんやろ?」
「な、なななな!!?」
イサベルは驚きあまって顔がトマトのように真っ赤に染まりあがり、品が良くないと思いつつ口が半開きになってしまう。
「ほほほ、”どうして分かったの?”と”恥ずかしい”って顔やね…………フフフ、女の勘言いたいところやけど、それだけじゃ確信は出来ひんかったから、すこーし力使わせてもらったわ、ごめんな?」
口元に笑みを浮かべながら、鏡華は一度、両目を閉じて、開いた。すると瞳の色が暗褐色から紫色に変わり、あまり感じたことのない類の魔力を放っていた。
「…………」
「ああ、一応、説明しとくとうちは普通の人間とは少し生まれが違うさかい、人の心の色って言うんかな?どんな気持ちなのか見えたりするんよ。今はさらに詳しく見るために契約遺物の力も借りてるけど」
「そ、そうなんですか…………」
「ほほほ…………それで?双魔のこと好きなんは認める?」
呆然としたイサベルに鏡華は茶目っ気たっぷりの笑顔で身を乗り出して聞いてくる。
その笑顔に、見破られると分かっていながらでもなく、イサベルは本当に嘘をつくことが出来なかった。
「そ……その……………………はい」
「うんうん!こういう時は素直が一番!そっか、そっか!」
蚊が泣くように小さな声だったが肯定の返事を聞いた鏡華は何故か満足げな表情だ。
(ふ、普通、自分の婚約者のことがす、好きな女性が現れたら嫉妬したり、排除しようとするものじゃないのかしら?)
「うん、うん。せやね……普通は嫉妬するわ。イサベルはんの考えることは間違ってへんよ。普通は」
「っ!?」
イサベルの考えたことを読み取って鏡華はそれに対する反応をすぐさま口にする。
種明かしはしてもらったが、それでも考えていることをまた言い当てられドキリとする。
鏡華の瞳は紫色だ。能力の一端を見せているだけだろうが、やはりイサベルの考えていることはすべてお見通しらしい。
そう思うと、羞恥心も観念したのか、緊張の糸が完全に途切れ、ドッと身体に疲れがなだれ込んできて、はしたないと分かっていながらもソファーの背にだらりと背を預けてしまうのだった。
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