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策士梓織の罠

 こんばんは!暑さに変わりはありませんが少しずつ秋の足音も聞こえてきたような、こないような。

 まあ、そんなことはさておき、久々に評価してくださった方がいるようで、とても嬉しかったです!

 その嬉しさをエネルギーに変えまして、今回もよろしくお願いします!

 講義が終わると生徒たちはノートや筆記用具を片付けて立ち上がると、談笑しながら次々と教室を後にする。


 そんな中、緊張のどん底にいて抜け出せない生徒が一人いた。


 今日、明らかに挙動不審だったイサベルだ。教室を出ていく生徒たちに声を掛けられて適当にあしらっている双魔をみながら、まるで石のように固まっている。


 「…………はあー…………まったく、この子は…………」


 隣で帰りの支度を終えた梓織が深いため息をついた。


 「ベル…………ベル!」

 「っ!?な、なに!?」


 肩を軽く揺すってやるとどこかから戻ってきたのかイサベルがこちらを向いた。


 「講義、終わったわよ?」

 「えっ!?いつの間に…………」


 慌てて周りを見回すと確かにさっきまでいたはずのクラスメイトはほとんどいなかった。


 「アメリアさんと愛元は?」

 「あの子たちも用事があるって言って先に帰ったわよ……それより、ほら」

 「?…………え?ど、どうして?」


 梓織が教室の前の方を見るように手を動かす。それに釣られて前に視線を送る。


 「…………」


 そこには講義が終わってオフモードになったのか気怠そうな目つきに戻った双魔が教卓に備え付けられた椅子に腰掛けて、こちらにひらひらと手を振っていた。


 「…………」


 そして、イサベルがこちらに気がついたと分かるや否や、振っていた手でこちらに来るように手招きをして見せた。


 自分は双魔に相談事、実際は梓織に約束だけでいいと言われたのでよく分かってはいないのだが…………兎も角用事があるのだが、双魔も自分に何か用があるのだろうか。


 期待か、不安か、どちらかはよく分からなかったが、イサベルの心音は少し早さを増した。


 どれくらい、ボーっとしていたのか、少なくともクラスメイトが教室からいなくなるほどの時間、双魔が自分を待っていてくれたことは間違いない。


 イサベルは急いで机の上に出していたノートと筆記用具を鞄にしまうと早歩きで双魔の待つ教壇に向かった。


 「ご、ごめんなさい。何か私に用事ですか?」

 「ん、用事と言うか……何というか…………ん?幸徳井(かでい)、お前さんは帰るのか?」


 イサベルを待っていたようだった梓織が鞄を持って教室の出口に足を向けたのが気になった双魔は声を掛けた。


 「ええ、少し用事があるの。講義、お疲れ様でした。ベルはまた後でね!それじゃあ!」

 「え?ちょっと!梓織?」

 「ベル、女は度胸よっ!」


 一瞬、梓織がイサベルの耳元に手を当てて、双魔に聞こえないほどの小さな声で囁いた。


 梓織はイサベルに目配せをすると軽い足取りで教室から出ていった。


 広い階段教室に残されたのはイサベルと双魔の二人だけだ。


 (ど、どういうつもり?…………梓織のバカ!)


 梓織の意図がよく読めないのだが、突然、思い人と二人きりになってしまったイサベルの胸の内は推して量るべし。


 心臓が陣太鼓の如く、激しく鼓動する。何だか顔が熱くなってきた気もする。


 「っ!」


 赤くなってしまった顔を見られるのが嫌で咄嗟に下を向いてしまった。


 「…………」


 双魔は何も言わない。それが更にイサベルを追い詰める。


 (…………もうっ!ダメっ!)


 「…………ガビロール」


 イサベルが思わず逃げだしそうになった瞬間、まるでそれを見透かしたかのように双魔が口を開いた。いつも通り覇気のなく、その上で落ち着きのある優しい声音だ。


 「え?な、何ですか?」

 「いや……今日は何か様子がおかしかったからな…………何かあったのかと思ってな」


 (まあ、相談事があるってのを聞いてるのは言わない方がいいだろ…………)


 この双魔の気遣いは功を奏した。目の前のイサベルが下げていた顔をバッと勢いよく上げたのだ。その顔は少し赤らんでいるが、具合が悪いという訳でもなく、喜色に染まっていた。


 (…………私のことを気遣ってわざわざ声を掛けてくれるなんて…………ど、どど、どうして!こんなにっ…………!双魔君ったら!)


 顔を上げて目の前にあった双魔の顔を思わずジッと見つめてしまう。


 「ん?どうした?」


 優しい声音、口元に浮かべられた穏やかな笑み。イサベルは最早、思考がショートしてしまいそうだった。


 ”好き”と言う気持ちに加えて、双魔が与えてくれる安心感はイサベルの全てをがっちりとつかんで放さない。が、ここで理性で踏ん張れるのがイサベル=イブン=ガビロールという少女であった。 


 (だ、ダメよ!これ以上は変な子だと思われるわ!双魔君に!)


 「すー…………はーーーー」


 自身を落ち着かせるために深呼吸をする。


 突然、深呼吸をはじめたイサベルを双魔は椅子の背もたれに身体を預けて見守っていた。


 (…………どうしたんだか…………変な奴だな)


 心中虚しく、双魔には”変な奴”だと思われてしまっていたイサベルであった。



 いつも読んでくださってありがとうございます!

 最近、サブキャラの面々の評価が意外と高くて驚いています。褒められると中々嬉しいものですね!

 ということで、よろしかったら評価していってください!

 ブックマークやレビューもお待ちしてます!

 本日もお疲れ様でした!それでは、良い夜を!

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