恋は盲目とは限らず
こんばんは!もう8月も終わりが見えてきましたね…………今年は何もしてないな…………。
まあ、そんなことは置いておいて、今回は短めですがご容赦をば。
よろしくお願いします!
双魔が講義を進める一方、朝からソワソワと落ち着かない様子のイサベルは講義に身が入らないでいた。
(…………梓織は双魔君に相談すれば大丈夫って言っていたけれど……一体、どういうことかしら?)
お見合いの話が舞い込み、断り切れずに受けてしまった直後、パニック状態に陥った自分に梓織はそう提案してくれた。
具体的に双魔に何を頼むのかは後で教えると言われて未だに教えてもらっていない。
取り敢えず、この授業が終わったら双魔に”相談があるから週末、家にお邪魔しても構わないか”と約束を取り付けるようにとしか言われていない。
(それにしても………………)
イサベルの耳には先ほどから授業の内容があまり入ってきていない。
ただただ、教壇の上で普段の覇気がない時よりも凛々しく声を発する双魔の姿に見惚れ、双魔の心地いい声に聞き惚れるばかりだ。
(………絶対に言えないけれど………どうしてあんなに素敵なのかしら?)
数年前、初めて双魔に出会った時から彼はイサベルの王子様なのだ。この話については語るべき時が来た際に話すことにしよう。
(………………)
ふと、イサベルの脳裏にある人物の写真がフラッシュバックした。
今朝、父から送られてきた見合い相手だという男性の写真だ。律儀なイサベルは見合いでの結婚は回避する気ではあったが、相手にも悪いと思い、写真と名前は確認した。
高級そうな二つ折りの写真に映っていたお見合い相手の顔は妙に記憶にこびりついている。
名前はオーギュスト=ル=シャトリエと言ったか。ガビロール家傘下の魔術師でフランスの若き精鋭らしい。
タキシードを身に纏いくるくると渦巻く金髪を七三分けにし、銀縁眼鏡を掛けた整った顔の青年。浮かべる笑顔には自分への絶対の自信が見て取れた。
イサベルの目にはその優秀さとノブレス・オブリージュの精神が映った。まさにエリートと言った風体だ。
きっと、悪い人ではないのだろう。それと、なぜか少し胸騒ぎがした。
片や、目の前で教鞭を取っている思い人は写真の人物とは全く違う。
普段は何を考えているのか分からないくたびれた表情を浮かべていることが多いが、今のようにやるときはやるし、本気を出せばきっと誰よりも出来る人であることをイサベルは知っている。
気にしていないようで意外と空気や人の変化にも機敏でさり気なく各方面に的確な気遣いをしている節もある。
梓織たちなどの友人に指摘されると反射的に否定してしまうイサベルだが、本人はしっかりと双魔に恋心を抱いていることを自覚している。
そして、”恋は盲目”という概念を一切排除した上で、伏見双魔と言う人物が好ましかった。
(………………なんて声を掛ければいいのかしら…………っ!!?)
そんなことを考えながら双魔を目で追っていると、一瞬、目が合ってしまった。
イサベルは咄嗟に顔を開くだけ開いて何も書き込めていないノートに落とした。
(………いやだ、変に思われていないかしら………………)
こうして、双魔の講義が終わるまでイサベルはグルグルと出口のない思考の迷路を彷徨うのだった。
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